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公開日:2025.11.11

中国道~山陽道をつなぐ!「東広島高田道路」計画とは? 広島空港のアクセスにも期待。どこまでできた?【いま気になる道路計画】

東広島高田道路のうち、2025年5月に完成した「安芸高田大橋」。

中国道~山陽道を直結する地域高規格道路「東広島高田道路」の計画が進行中だ。開通済みの区間や工事中の区間もある。この道路について、開通のメリットや進捗状況を見ていこう。

東広島高田道路のうち、2025年5月に完成した「安芸高田大橋」。

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省、広島県、東広島市

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「東広島高田道路」はバイパス空白地帯にできるアクセス道路

東広島高田道路の概要。

東広島高田道路の概要。

中国地方の大動脈には「中国自動車道」がある。しかし、中国地方のど真ん中を通過する道路のため、「中国道~山陽方面」「中国道~山陰方面」をつなぐためのアクセス道路が必要となっている。

その中でも、高規格道路の空白地帯となっているのが、広島県広島市と三原・尾道・福山エリアの中間地点にあたる東広島市だ。

東広島市は広島市の東側約30km、福山市の西側約60kmに位置する。中心地に直結する山陽道「西条IC」などがある一方で、中国道から直接アクセスする高規格道路がない。さらに東隣にある広島空港へのアクセスも課題となっている。

東広島市の南西に位置する呉市も、長らく高規格道路から取り残されている不便な場所だ。こちらは国道375号の高規格バイパスである「東広島呉自動車道」が2015年に全線開通し、山陽道からダイレクトにアクセス可能となった。しかし、中国道とのアクセスは課題が残る。

現状、高規格道路を使用して広島空港方面に移動する場合、「中国やまなみ街道」の三次東JCTから尾道JCTへ南東方向に迂回する必要がある。ちなみに、途中の世羅町から広島空港へ直結する南西方向のルート「広島中央フライトロード」も計画されているが、今はまだ南半分(大和~河内)の開通にとどまっている。

東広島高田道路の概要。

東広島高田道路の概要。

そんな中国道から山陽道・広島空港方面へのアクセス性を改善するのが地域高規格道路「東広島高田道路」だ。総延長は約40kmで、安芸高田市の「中国道 高田IC」周辺から南下し、東広島市の「山陽道 高屋JCT」につながるルートで計画されている。なお、行政資料上も「県中央部地域と広島空港を連絡するフライト軸」という位置づけになっている。

これまで、安芸高田市から東広島市へつながる道路ができなかったのには理由がある。この地域の山地や谷筋は、北東から南西へ伸びるものばかりで、峠を何度も越えなければならない地形だからだ。

東広島高田道路の北半分は県道29号(吉田豊栄線)、南半分は国道375号を改良するものだ。その中でも県道29号は「吉田~向原」「向原~豊栄」と2回の峠越えがあり、どちらも大型車の通行には負担が大きく、冬季は路面凍結にも悩まされている。中国道~山陽道・広島空港のアクセス道路としては、特にこの峠越えの克服が必要なのだ。

2025年に悲願のトンネルが開通

東広島高田道路の概要。

東広島高田道路の概要。

峠越えを含む壮大なネットワークとなる東広島高田道路だが、まだ整備の道のりは始まったばかりだ。開通しているのは以下の2工区、計5km足らずとなっている。

・東広島道路(一部開通済み、残りは未事業化)
2010年に山陽道から南側に延びる「東広島呉道路」と同時に約1kmが開通。これは、山陽道からの取り付け部であり、ICランプ程度の短い距離にとどまる。もう少し北へ延ばせば、JR山陽本線「西高屋駅」に近い「県道59号」(東広島本郷忠海線)へつながるが、まだ事業化の準備段階にも至っていない。

・向原吉田道路(一期区間が開通済み、残りも工事進行中)
2025年5月に、最大の難所である「向原吉田トンネル」(長さ2094m)を含む3.2kmが開通したばかりだ。先述した県道29号の峠越えのうち「吉田~向原」が克服されたことになる。

ここでは、国道54号の谷筋(旧吉田町)と、JR芸備線の谷筋(旧向原町)で生活空間が二分されている。互いを直結する向原吉田トンネルの開通によって安芸高田市内のアクセス性が大きく解消された。

残る区間では、JR芸備線に並行する「県道37号」(広島三次線)につながる1.3kmが工事中だ。現道を拡幅する計画で、完成予定は「2020年代後半」とされているため、全線開通は時間の問題だ。

「東広島高田道路」の全線開通はいつ頃?

広島県の2025年の国あて要望資料より。東広島高田道路については名指しされていない。

広島県の2025年の国あて要望資料より。東広島高田道路については名指しされていない。

起点側の中国道 高田IC~吉田と、終点側の向原~豊栄~高屋の進捗はどうなっているのだろうか。

実は上記2区間で事業化されている工区はなく、高屋から北側の約7kmが「調査区間」に指定されているだけだ。

いずれも国ではなく広島県が事業主体となるが、国の補助事業に採択されなければ、大々的な調査設計もできない。そのため、まずは地元から国あてに要望を行っている段階だ。

たとえば東広島市は2025年7月、2026年度予算のための要望を行い「東広島高田道路について、調査区間の追加指定、および調査区間の整備区間指定が必要」としている。

一方、広島県から国あての要望には、東広島高田道路について具体的に触れておらず、代わりに県事業として「福山西環状線」「国道486号(新市府中拡幅)」「福山沼隈線」などが明記されており、県としてはそれらを優先したい意向もうかがえる。

広島県の道路整備は5か年計画「広島県道路整備計画2021」に基づいて進められるが、東広島高田道路の他の工区はリスト外だ。まもなく次の5か年計画(2026~2030)が策定されるが、ここに東広島高田道路の新工区がリストアップされるためには、国側の意向が明確に示される必要がある。果たしてこの先の進捗はどうなるのか、引き続き注目していきたい。

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