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公開日:2025.11.14

奈良~三重の重要ルートに進化中!「奈良中部熊野道路」計画とは。紀伊半島の「新たな南北幹線」になる?【いま気になる道路計画】

奈良中部熊野道路の一部を構成する「御所高取バイパス」の完成イメージ。

奈良県と三重県をつなぐ新たな物流ルートを確保するため「奈良中部熊野道路」というプロジェクトが進行中だ。開通済みの区間や工事中の区間もある。この道路について、開通のメリットや進捗状況を見ていこう。

奈良中部熊野道路の一部を構成する「御所高取バイパス」の完成イメージ。

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省、奈良県

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重要物流道路の「奈良中部熊野道路」とは

奈良中部熊野道路の概要。

奈良中部熊野道路の概要。

国道169号「奈良中部熊野道路」は、2022年に国が指定する「重要物流道路」に新たに追加された路線だ。主に国道169号を高規格化するプロジェクトで、紀伊半島を貫く緊急輸送道路となり、内陸部である京都・奈良方面から東沿岸部へのアクセスを大幅に短絡するルートとして期待されている。

国道169号は奈良市中心部から南下して天理市・桜井市・橿原(かしはら)市などを経由したあと、山岳部に入って吉野町・川上村・上北山村・下北山村をつなぎ、和歌山県新宮市へ至る道路。奈良中部熊野道路はこの中で、京奈和自動車道「御所IC」から分岐して山岳区間を南下し、そのまま国道309号を通じて三重県熊野市へ直結するネットワークとして整備対象になっている。

奈良中部熊野道路の概要。

奈良中部熊野道路の概要。

そもそも重要物流道路の目的は、高さ4.1m、長さ16.5m、重量最大44tの「国際海上コンテナ車」が自由に通行可能となる道路規格を確保するものだ。現状の国道169号では、国際海上コンテナ車は規格を超えているため、通行のたびに「特殊車両通行許可」が必要となる。しかし、奈良中部熊野道路がこの道路規格を満たすルートになれば、輸送が大幅にスムーズとなり、国内外の物流を包括的に促進する存在となる。

将来的には、京奈和自動車道と合わせて「京都~奈良~熊野」をつなぐ、国際海上コンテナ車の通行できる高規格道路として整備される見込みだ。

「奈良中部熊野道路」の進捗は?

御所高取バイパス・高取バイパスの概要。

御所高取バイパス・高取バイパスの概要。

奈良中部熊野道路は、総延長100kmに達する壮大な構想だが、もちろん一度に整備が行われるわけではない。実際には優先順位をつけて整備が行われ、現在はその中の一部が「事業区間」「計画区間」として設定され、計画・着工している。具体的に見ていこう。

・御所高取バイパス(4車線:設計段階)
京奈和道 御所ICから南東へ進み、高取町内へつながる3.4kmの区間。4車線の地上もしくは盛土構造で、御所ICからいったん京奈和道の下を走り、次の交差点で分岐する形となる。

2017年に事業化され、2025年度は道路の詳細設計が進んでいる。道路の形状が固まれば、いよいよ用地取得が本格化する。

・高取バイパス(4車線:暫定2車線で一部開通済み)
御所高取バイパスから国道169号本線へ合流するまでの3.4kmの区間。奈良県大淀町へ抜ける「芦原・新芦原トンネル」のすぐ手前へ接続する計画で、全面完成すれば京奈和道~大淀町がすべて4車線になる。

2012年に近鉄吉野線をまたぐ「薩摩跨線橋」が暫定2車線で先行開通。残る東半分も「2025年度中に開通予定」とされている。開通日の発表も時間の問題だろう。長さ635mの「高取トンネル」を含むこの短絡ルートによって、吉野方面から御所方面への移動は現在よりも大幅に快適になる。

狭すぎるトンネルに土砂崩れ箇所……改良事業が進行中!

1966年に完成した現在の「新伯母峯トンネル」。

1966年に完成した現在の「新伯母峯トンネル」。

・伯母峯峠(おばみねとうげ)道路(2車線:事業中)
川上村から上北山村へ抜ける峠周辺の2.9kmの区間。大台ケ原山への玄関口でもあり、峠手前ではループ橋で標高を稼ぐほどの難所となっている。この峠は「新伯母峯峠トンネル(1964m)」が貫いているが、1966年の完成からすでに60年が経過。前時代的な設計であるため、大型車のすれ違いも困難な狭あいトンネルとなっている。入口には「事故多発」「対向注意。減速せよ!」といった看板が並び、救急車の通行にも支障をきたすほどだ。

「伯母峯峠道路」事業では、トンネルを新たに作り替えるとともに、国際海上コンテナ車の物流ルートとなるべく、車道全幅7mの新設計がなされる(2車線)。

2016年に事業化し、設計等を経て2018年に着工。先行して前後の取り付け部の橋梁工事が進んでいる。2025年8月にトンネル工事の発注が始まり、来年度には工事契約が締結されることになりそうだ。

・国道169号 上池原トンネル(2車線:2025年6月着工)
国道169号現道は、池原ダム貯水池に隣接する斜面に張り付くような狭い山道だったが、2023年12月に大規模な土砂崩れが発生して寸断。約半年後に仮桟橋を設置して暫定復旧したのち、最終的な復旧ルートとして、地すべり区間を丸ごと避けた「上池原トンネル」を新設することが決定した。

上池原トンネルは長さ約2.8km、幅員7.5mの2車線道路。先だって重要物流道路の「計画区間」にも指定されており、完成は早くて2029年度頃と見込まれる。

このように、各地で少しずつ改良事業が進む「奈良中部熊野道路」。重要物流道路の方針に基づき、今後も新たな事業区間が設定されると期待できる。着実に進展を見せる事業の進捗に引き続き注目していきたい。

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