はじめよう、クルマのある暮らし。

Traffic

公開日:2025.10.16

八景島で突然途切れる「国道357号」のナゾ! 実は「横須賀市延伸」事業が進行中。将来どこまでつながる?【いま気になる道路計画】

未完成のままになっている、横浜市金沢区の国道357号。

首都高湾岸線の側道「国道357号」は、4車線道路が八景島で突然途切れている。これを延伸して横須賀市内へつなぐ事業が進行中だ。開通によるメリットや、現在の進捗状況について解説していこう。

未完成のままになっている、横浜市金沢区の国道357号。

文=鳥羽しめじ

資料=国土交通省、横須賀市

この記事をシェア

八景島で突然途切れた「国道357号」のナゾ

八景島で途切れている国道357号(Google Earthより)。

八景島で途切れている国道357号(Google Earthより)。

首都高湾岸線の側道として、千葉県から東京都、神奈川県まで並行するのが「国道357号」だ。

現在は、羽田空港~大黒ふ頭の区間などの断続的に途切れている部分があるが、将来的には「東京湾岸道路」として一本につながる計画となっている。信号待ちや混雑を気にしなければ、臨海部を無料で通行できる便利な4車線道路となる。

そんな国道357号 東京湾岸道路は、横浜市内を南下していくと、根岸・磯子を過ぎて「八景島」に到達したところで、突然「ブツ切れ」のように終わっている。これは一体どういうことなのだろうか?

国道357号「東京湾岸道路」の概要。

国道357号「東京湾岸道路」の概要。

都心から横須賀方面に向かう道路の現状を見てみよう。

首都高湾岸線は南下すると「幸浦出入口」で終点となっており、そのまま西へ進路を変えて「横浜横須賀道路」経由で横須賀ICを通り、衣笠・浦賀方面へ直通していく。

いっぽう国道357号は、幸浦出入口付近からそのまま南下を続けて金沢区の埋め立て地の南北軸となり、立派な「柴航路橋」を渡って八景島へ着地する。しかし、八景島内のトンネルを抜けると、すぐにUターンするロータリーが設けられて行き止まりとなっている。このまま横須賀方面につながると思いきや、4車線道路の終点としてはかなり不自然な構造で終わっているのだ。

そもそも、国道357号の八景島区間は「一般車通行禁止」で、橋の約600m手前にある金沢栄町交差点から先へ進むことができない。八景島への分岐入口には国土交通省の「通行制限のお知らせ」という看板が掲げられ、道路脇の詰所に警備員が常駐。道路上にはカラーコーンが置かれて、一般車が誤って進入することを防いでいる。

この八景島ロータリーを通行しているのは、シーパラダイスへ直行する路線バスだけだ。京浜急行バスが横浜駅から毎日2往復、関東バスが西武柳沢駅から吉祥寺駅を経由して土休日1往復。団体観光バスのツアー客も、このロータリーから乗り降りする。島外の駐車場やシーサイドラインの駅から延々と歩く必要がないため、バスでこのロータリーまで来れるのはかなり便利なのだ。

ちなみに、バス通行時は毎回、詰所の警備員がカラーコーンをどかしている。

八景島から追浜へ道路が直結。工事の進捗は?

国道357号「東京湾岸道路」夏島工区の概要。

国道357号「東京湾岸道路」夏島工区の概要。

このように、国道357号の末端部は実質的に「シーパラダイス専用アクセスレーン」と化している状況だ。しかし、この先は「横須賀市直結」の延伸計画があり、現在進行形で事業の一部が動いている。

横須賀市に向かって延伸する事業が進むのは「八景島~夏島工区」だ。ここは、八景島から海を越えて500m先の夏島地区へ降り立ち、日産自動車追浜工場の敷地西端を抜ける形で、野島を横目に南下。「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA(ドック・オブ・ベイスターズ・ヨコスカ)」からは横須賀スタジアム東側の道路を改良する形で、追浜駅から伸びる「夏島貝塚通り」に夏島交差点で接続する区間だ。

この区間によって、追浜地区住民、そして臨海工業地帯のトラックにとっては、移動のあり方が大きく変化することになる。というのも、金沢方面から内陸部を抜ける「国道16号」はパンク状態で、信号交差点の間隔も短く、朝夕は大渋滞で機能不全に陥っているからだ。

そもそも追浜地区は国道16号からのアクセスも遠くさまざまな問題がある。追浜駅前からは商店街の中を大型トラックが頻繁に通行し、生活交通と混在するため危険。また、国道16号は土砂崩れによる寸断リスクが高く、トンネルが老朽化している。広大な工業地帯を抱える地区としては、道路網が貧弱すぎたのだ。

八景島~夏島工区が完成すれば、これらの問題も解消され、さらに横須賀スタジアムにとっても、アクアライン方面からの最短ルートが形成されて、スタジアムの目の前まで高規格道路で到達可能になるというメリットがある。

気になる進捗だが、2018年に最初の工事となる夏島交差点の改良工事が開始。2021年に左折レーン新設が完了した。さらに橋梁本体も構造検討が進められているほか、工事範囲での水路移設など準備工事も進められている。

橋梁構造の正式決定が今後の焦点となりそうだ。

さらに横須賀中心街へ直結する構想も

国道357号「東京湾岸道路」横須賀市延伸の概要。

国道357号「東京湾岸道路」横須賀市延伸の概要。

夏島から南は「夏島以南工区」として、将来的に横須賀中心街まで臨海部を直結する構想がある。田浦の市街地まで迂回することなく、吾妻島を経て横須賀中央まで一直線に結ぶ計画だ。

夏島以南工区は、国土交通省が2021年に策定した「新広域道路交通計画」でも構想路線としてリストアップされ、横須賀市の都市計画マスタープランにも掲げられている。これが実現すれば、横須賀市中心部まで国道16号に一極集中していた交通流が分散されるほか、八景島方面へ「ほぼ信号ゼロ」でワープできる夢のルートが誕生することとなる。

しかし、こちらは今のところ目立った動きはない。横須賀市議会では毎回のように議題に上がっていて、最近でも2025年6月の定例会において市長が「国道357号の南下延伸も早期に求めていくべきものであると考えていて、これまでも繰り返し繰り返し国には訴えてきました」と答弁。

さらに「なかなか簡単にはできないような問題をいっぱい抱えている。まずは今、現実として何ができるかということを考え、防災の意味でもさまざまなことを提案していきたい」と、一筋縄ではいかない状況も吐露した。

夏島以南工区における最大の難関といえるのが、途中にある「吾妻島」が米軍専用施設であり、さらに港湾部も米海軍基地や自衛隊施設が集中している点だ。大型艦船も寄港することから、現実的には海底トンネルが採用される可能性が高いが、国家間の調整が必要な大プロジェクトになりそうだ。

もっとも、前述した八景島~夏島工区も、30年近く放置されていたところ、現在の横須賀市長が国への働きかけを強めたことで、2018年にやっと着工を果たしたというのが、地元での認識のようだ。今後、夏島以南についても何らかの前進を期待できるかもしれない。

しかし、国としては、新東名高速の全線開通や圏央道の横浜延伸、国道357号「多摩川トンネル」事業など、神奈川県内の主要事業がまず一段落してから次へ進む、というスタンスになるだろう。国道357号の今後の進展に引き続き注目していきたい。

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(10月31日まで)
応募はこちら!(10月31日まで)