新高円寺から練馬へ一直線! 南北道路「補助第227号線」どこまで完成した? 青梅街道~目白通りをつなぐ壮大な計画【いま気になる道路計画】
新高円寺駅から練馬駅を南北につらぬく「補助第227号線」の整備計画が進行中だ。環七通りの西側400~600mあたりを並行して走る新たな「生活軸」について、開通のメリットや、現在の進捗状況を見ていこう。
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狭い路地が密集するエリアを抜ける「補助第227号線」

補助第227号線の概要
東京都23区西側の道路網は、基本的には生活道路が密集し、幹線道路と言える基本骨格の広い大動脈が少ない。特に南北軸は貧弱で、「環八通り」「環七通り」などが重要な縦貫ルートとなり、他の選択肢がない状況だ。
都はそういった「中央分離帯つき4車線道路」を増やすよりも、そこそこの余裕幅と自転車歩行者道を確保した2車線道路をエリアごと適切に配置して、地域の安全性や防災性向上、移動性確保を図ろうとしている。
そのなかで、杉並区から練馬区にかけて計画され、一部事業中なのが「補助第227号線」だ。
補助第227号線は、いわゆる「高南通り」「大和町中央通り」「南蔵院(なんぞういん)通り」に該当する。環七通りの西側400~600mあたりを南北に抜ける約4.5kmの都市計画道路だ。具体的には、南端は杉並区の青梅街道で、北端は練馬区の目白通り。鉄道駅で言えば、地下鉄丸ノ内線「新高円寺駅」と西武池袋線「練馬駅」をつなぐ位置関係にある。
青梅街道「五日市街道入口交差点」を始点に北上して「JR高円寺駅」を抜け、「西武新宿線 都立家政駅」の東側を経て、目白通り「中村北一丁目交差点」を終点とするルートで計画されている。
補助第227号線が全線開通すれば、青梅街道と目白通りを南北にまっすぐつなぐ、新たな「生活軸」が誕生することとなる。例えば、大和町中央通り(中野区大和町)のように、センターラインすらなく車両のすれ違いも困難な狭隘道路(※)が、整備後は自転車・歩行者と車両を完全に分離した広い2車線が確保され、安心して運転できる道路になる予定だ。
※狭隘道路(きょうあいどうろ):幅員4m未満で、都市部や住宅地などで生活環境に支障をきたしたり、緊急車両の通行が困難になったりする問題のある道路のこと。
工事が進む「大和町工区」

補助第227号線「大和町工区」の完成イメージ
さて補助第227号線の進捗はどうなっているのだろうか。
現在、整備中の区間は、大和町中央通りの南側「大和町工区」だ。早稲田通りの「大和町郵便局前交差点」から「妙正寺川」までの延長710mに、幅3mの車道2車線を設け、その両側に自転車レーン・植樹帯・歩道を整備して、道路幅員は16mを確保する。
この路線は「木密地域の防災性向上に資する特定整備路線」と位置づけられ、火災時の延焼防止の目的もあるため、十分な道路幅員が設けられているという。
大和町工区が事業認可されたのは2013年。そこから測量設計、用地取得が進められ、現在は早稲田通り側で道路工事が行われているところだ。
用地取得率は2024年3月時点で90%。まだ未取得の箇所があるものの、用地取得済みのところから、最初の施工段階である排水施設(道路端の側溝など)設置工事が進められている。なお、完成目処は発表されていない。
高円寺~練馬直結のゆくえは?

補助第227号線「大和町工区」の北側、目白通りまでの区間も事業化をめざしている
大和町工区以外の事業はどうなっているのだろうか。
大和町工区の北隣、妙正寺川~新青梅街道の約960mについては、東京都の「第四次事業化計画」で「優先整備路線」にリストアップされ、2025年度までに事業着手をめざすとされている。ここでは、2017年から現況測量がはじまっているが、いまだ事業化されていない。
この背景には、横断する西武新宿線(井荻~西武柳沢)で進む連続立体交差事業がある。こちらは2024年に念願の事業化を果たしたばかりで、まだ準備段階だ。同事業に伴う都立家政駅周辺の大規模再開発にあたって、新しい街の形をどのようにするかという「まちづくり整備方針」が2020年に策定(2025年改定)。補助第227号との交差部周辺でも、こうした基本計画を待ってから道路設計を行う必要があった。
さらに現在でも、沿道にある「旧洗心寮跡地」の処理をめぐって複雑な調整が進められており、事業化のネックになっている。ここは、道路拡幅にあたって日本銀行から2021年に取得したが、発掘調査によって埋蔵文化財の存在が明らかになった。その文化財の保存・活用を含め、跡地活用計画を策定する必要に迫られている。
いっぽう、同じく「優先整備路線」にリストアップされているのが、早稲田通りから南側、高円寺駅北口までの約420mだ。こちらも全く事業化する様子が見えない。
事業主体である杉並区は、2026年度以降の新たな計画も見据え、2025年5月に「区が独自に定めた指標に基づく効果検証」の結果を公表。そこでこの早稲田通り~高円寺駅北口の工区は優先順位「3位」とした。
これについては、2025年6月の区議会で「これは(今後の事業化へ)どう影響するのか」と質問があった。区側は「南北方向の道路基盤が脆弱な杉並区」だからこそ整備効果が高い結果となったとしたうえで、「直ちに事業着手するということではなく、まずは道路を含めた地域のまちづくりを地域住民と共に考え、合意形成を図ることが重要であると考えております」との答弁をした。実現すれば青梅街道~高円寺駅~早稲田通りをつなぐ便利な南北軸となるが、まだまだ道のりは長そうだ。
最後に、新青梅街道から練馬駅までの「南蔵院通り」を拡幅する区間だが、こちらは優先整備路線にリストアップされておらず、近年の区議会でも議論された形跡がない。策定中の2026年以降の「第五次事業化計画(仮)」でどのように位置づけられるのか、気になるところだ。
このように補助第227号線の事業は、整備が進んでいる箇所と事業化への道筋も見えていない箇所があり、全線開通まではまだまだ遠いようだ。地域の安全性や防災性、移動性の向上に大きな効果をもたらす道路だけに、今後の進捗にも注目が集まる。
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