実は未完成!「環状第4号線」はどこが工事中? 品川駅をまたぐ高架橋や目白台のトンネルなど大変革【いま気になる道路計画】
東京都の都市計画道路のひとつ「環状第4号線」の整備事業がいまも進行中だ。開通によるメリットや、現在の進捗状況について解説していこう。
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東京に8本ある環状道路のひとつ「環状第4号線」

環状第4号線の概要。
東京都23区内には環状道路が8本存在しており、都心から半径16km圏内に環状第1号から第6号。さらに外側に第7号、第8号がある。後者は「環七」「環八」という愛称で広く知られているが、それ以外の番号がついた道路は、知名度があまり高くないのが実情だ。
そのうち、都心部を抜ける「環状第4号線」は、港区港南三丁目を起点とし、江東区新砂三丁目に至る延長約29.9Kmの都市計画道路。終戦直後から整備が進められ、未完成の区間の開通に向けて、いまも建設事業が進行中となっている。どこが事業中となっていて、どこまでが完成しているのだろうか。
まずは環状第4号線の一周全体を開通済み(〇)・未開通(×)で整理すると以下の通りだ。
×高輪・港南工区(工事中)
×白金台工区(未着工)
〇白金台~広尾~靖国通り ※通称「プラチナ通り」「外苑西通り」
×富久町工区(工事中)
〇河田町工区
〇夏目坂(拡幅計画中)
〇西早稲田~早稲田
×目白台工区(工事中)
〇目白台~千駄木~三ノ輪~曳舟~大島~南砂町 ※通称「不忍通り」「明治通り」「丸八通り」
ざっくりまとめると、品川駅付近~白金台および新宿区~文京区にかかる区間が未完成で途切れている状態だ。また、開通済みの区間のうち「本駒込工区」(白山通り~本郷通り)、「荒川工区」(常磐線西側)、「東向島・京島工区」(曳舟駅前)では拡幅工事が進められている。
なお、開通済みの外苑西通り、不忍通り、明治通り、丸八通りはいずれも都心部の交通網に欠かせない重要なネットワークを担っている。
新宿・渋谷~品川が直結!「白金台・高輪・港南工区」とは

高輪・港南工区の概要。
次に未完成区間の現状を、もう少し詳細に見ていこう。
■高輪・港南工区
旧海岸通りの新港南橋交差点から西進し、JR品川駅北側を高架で大またぎし、そのまま高輪の丘陵上へ接続。国道1号の高輪台交差点へ直結する工区。
開通すれば、線路によってで分断されていた品川駅の東西アクセス道路が新誕生し、何かと不便だった港南地区や天王洲アイル方面への都心からの利便性向上が期待される。
工事は順調に進んでおり、JRをまたぐ部分は橋脚がすべて完成し、橋げたを架設する作業の真っ最中。東側の旧海岸通りとの接続図でも橋脚工事が進んでいる。
いっぽう駅西側の高輪地区はまだ測量設計の段階で、用地取得率は2024年4月時点で50%、本格着工までは遠い状況だ。まずは国道15号(第一京浜)にかかる支障物件「高輪歩道橋」の撤去が計画され、代わりの横断歩道を設置する工事が今年夏から始まることになっている。
■白金台工区
高輪台から北西へ向かい、白金台で開通済みのプラチナ通りにつなぐ約800mの工区。開通すれば、新宿・渋谷エリアから品川駅へ直結する大動脈となることが期待される。
2020年に事業認可を受け、測量設計を開始。2025年2月のオープンハウスにおいて詳細な設計図面が公開された。それによると、起伏の多い現地を反映した最大6.5%の勾配で住宅地を抜けていく計画となっている。白金台側は上下線で高低差のズレがある変則構造となっているのが特徴だ。
事業期間は2032年度までとされているが、まずは用地取得が完了しないことには着工もできない。これからが正念場となるだろう。
都心北側の貴重な東西軸「不忍通り」がさらに便利に

目白台工区の概要。
■富久町工区
靖国通りから若松・早稲田方面へ抜けるルートとしての未開通区間は延長330mの4車線道路。北側の河田町工区は2022年に開通を迎えているのに対し、こちらは用地取得率が88%で着工には至っていない。現場では確保済みの用地にフェンスが林立する風景が広がっている。
■夏目坂
白金台から外苑西通りとして北上してきた環状第4号線は、若松河田からまっすぐ北上して新ルートで街をつらぬくのではなく、現道を活用して東側の夏目坂・早稲田大学正門・早稲田通りを経由し、右左折で迂回する、やや中途半端な計画となっている。その夏目坂を拡幅する工区だここだ。
夏目坂はこのエリアの貴重な南北軸として交通量が多いが、昔ながらの狭い2車線である。拡幅後の完成形も2車線の計画だが、自歩道を含め十分な余裕幅を持った道路となる。
気になる進捗だが、用地取得率は2023年度末でまだ24%。着工には時間がかかりそうだ。
■目白台工区
西早稲田(早稲田通り)から早稲田(新目白通り)までつながる道路を、そのまま北上させ、目白台の急斜面にトンネルを通して、不忍通りへ直通させる延長775mの工区。
開通すれば、新宿から日暮里、国道4号方面へつなぐ貴重な環状軸となる。特にこのエリアは武蔵野台地の急峻な崖が立ちはだかり、まともな南北道路は西側の明治通りか、東側は後楽園方面までほぼないため、大きな期待が集まる道路だ。
ここでは事業認可から四半世紀が経過し、ついに用地取得率は99%に達した。現在はトンネル設計の段階となっている。
以上のように、各地で「都心をまるごと一周」するために、欠けたピースを埋めるための事業が進行中だ。
完成が近い工区はまだ少ないが、富久町・目白台の本格着工は時間の問題だろう。あるいは高輪地区の用地取得が先に終わるかもしれない。ひとまずは、JR品川駅をまたぐ高架橋の構造物完成を楽しみに、今後の進捗に注目していきたい。
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