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最終更新日:2025.08.19 公開日:2025.08.19

都内に新たな「海底トンネル」の計画も? 都心を一周つなぐ「環状第3号線」の現状。4車線化も進行中 【いま気になる道路計画】

隅田川を渡る言問橋も環状第3号線の一部。 (c)moonrise – stock.adobe.com

東京都の都市計画道路のひとつ「環状第3号線」の整備事業がいまも進行中だ。開通によるメリットや、現在の進捗状況について解説していこう。

隅田川を渡る言問橋も環状第3号線の一部。 (c)moonrise – stock.adobe.com

文=鳥羽しめじ

資料=東京都

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東京に8本ある環状道路のひとつ「環状第3号線」

都市計画道路「環状第3号線」の概略図。青が開通済み、赤が未開通。

都市計画道路「環状第3号線」の概略図。青が開通済み、赤が未開通。

東京都23区内には環状道路が8本存在しており、都心から半径16km圏内に環状第1号から第6号。さらに外側に第7号、第8号がある。後者は「環七」「環八」という愛称で広く知られているが、それ以外の番号がついた道路は、知名度があまり高くないのが実情だ。

そのうち、都心部を抜ける「環状第3号線」は、中央区勝どき二丁目を起点、江東区辰巳二丁目を終点とした延長約26.7kmの都市道路計画。終戦直後から整備が進められ、未完成の区間の開通に向けて、いまも建設事業が進行中となっている。どこが事業中となっていて、どこまでが完成しているのだろうか。

まずは環状第3号線の一周全体を開通済み(〇)・未開通(×)で整理すると以下の通りだ。

×勝どき~芝公園(未事業化)
〇芝公園~早稲田 ※通称「外苑東通り」
×江戸川橋~茗荷谷~小石川植物園~鶯谷(一部暫定開通・未事業化)
〇鶯谷~浅草~菊川・木場・辰巳 ※通称「言問通り」「三ツ目通り」

ざっくりまとめると、北側の新宿区~台東区の部分が丸ごと進んでおらず、その両側はどちらも都内を南北に縦断し開通済みという状況だ。そして開通済みの外苑東通り・言問通り・三ツ目通りは、都心部の交通網に欠かせない重要なネットワークを担っている。

念願の「都心~臨海部」新ルートは海底トンネル?

勝どき~芝公園の整備計画。オレンジの部分が海を通っているのがわかる。

勝どき~芝公園の整備計画。オレンジの部分が海を通っているのがわかる。

次に、まだ開通していない区間の現状を見ていこう。

■勝どき~芝公園(未事業化)

浅草・スカイツリー方面から隅田川東岸を南下する「清澄通り」は、門前仲町・月島・勝どきを経て、月島ふ頭の手前で途切れている。その延長区間に位置するのが、環状第3号線の勝どき~芝公園の工区だ。

この工区は月島ふ頭から海を越え、約600m西側の竹芝地区へ到達。さらに首都高都心環状線に並行する形で、芝公園グランド前交差点へつなぐという計画になっている。構造はまだ検討中だが、竹芝ふ頭を発着する大型船の支障とならないよう、海底トンネル道路となる可能性が高いといわれている。

開通すれば、いまだ貧弱な都心部~臨海部のアクセスルートが新たに誕生することとなる。

霞が関の官庁街方面からは2023年に地下トンネル「築地虎ノ門トンネル」が全通し、晴海・豊洲方面への利便性が向上した。いっぽうで港区エリアからはレインボーブリッジを渡るルートしかなく、ここがボトルネックとなっている。勝どき~芝公園は、この2ルートのちょうど中間に位置する新バイパスとなる。

都が優先して事業化すべき路線・工区を定めた「第四次事業化計画」(2016~2025年度)にもリストアップされ、さらに2022年の「TOKYO強靭化プロジェクト」や2024年改定の「未来の東京戦略」でも、緊急災害対策や広域医療輸送の役割のため「早期に整備」することとされている。

すでに「第四次事業化計画」の最終年度を迎えており、計画を完遂するのであれば来年3月末までに勝どき~芝公園も事業化しなければならないが、具体的な話は全く見えてきていない。

ちなみに、中央区議会の2025年2月定例会の答弁では、環状第3号線について「2030年代の事業着手に向け、現在、都において、道路の規格や構造等の検討が進められております」という説明がなされた。

先述の「強靭化プロジェクト」や「未来の東京戦略」では、核となる「首都高晴海線延伸部」について、2030年代の事業着手が打ち出されている。もしかしたら、勝どき~芝公園の工区もこれと同じスケジュールで進めていく方針に変更されたのかもしれない。

果たして次の「第五次事業化計画」へ持ち越しとなるのか。あるいは土壇場で2025年度内に大きな決定が下されるのか。引き続き注目したい工区だ。

新たな「東西ネットワーク」となる北側未開通区間は?

文京区の播磨坂。わずか500mだけ完成し、桜の名所となっている。

文京区の播磨坂。わずか500mだけ完成し、桜の名所となっている。

■江戸川橋~茗荷谷~小石川植物園~鶯谷(一部暫定開通・未事業化)

環状第3号線の北側の部分を担い、新宿区と台東区をつなぐように江戸川橋~茗荷谷~小石川植物園~鶯谷に計画されている工区。こちらは「第四次事業化計画」への記載すら無く、実現はまだまだ先になると思われる。しかし、先述した「第四次事業化計画」が2025年度までの計画であるため、「第五次事業化計画」の策定が間近に迫っている。この新しい計画にリストアップされれば状況は変わるかもしれない。

なお、一部だけ「暫定開通済み」な部分がある。小石川植物園の南西側にある「播磨坂」工区だ。ここでは文京区の閑静な住宅街に、中央分離帯のある立派な都市計画幅の街路が500mだけ突然出現するという異質な風景が広がっている。これは、戦後すぐに環状第3号線が都市計画決定されたのと同時に、復興を兼ねた区画整理事業が実施されたのが理由だ。

住宅が密集する現在とは違い、終戦直後は「何もないところに新たに街を作る」という状況だった。そんななか、都市計画に合わせて区画整理する必要があったため、いち早く新道路の完成形が出来上がるに至ったというわけだ。

残された未事業化の工区がもし開通すれば、広大な「東西道路空白地帯」に悲願のスムーズルートが誕生することとなる。練馬の目白通り(新目白通り)から浅草方面へ直結し、都心東西エリア間の移動が劇的に変化することとなるだろう。

そもそもなぜ東西軸がまともに無いのかというと、武蔵野台地が複雑に刻まれた谷が密集し、ほぼ平地がないため、既存の道路も地形に沿って入り組んでいるからだ。バイパス建設にあたっても、道路構造はトンネルや高架を多用したものになる可能性が高いとみられる。

「弁天町工区」では、4車線化が進行中!

環状第3号線(弁天町区間)の概要。ここで4車線化整備が進行中。

環状第3号線(弁天町区間)の概要。ここで4車線化整備が進行中。

そのほか、開通済みである外苑東通りでも、最後まで残った暫定2車線区間「弁天町工区」(地下鉄東西線~大江戸線)の4車線化が進行中だ。現場では車線切回しを経て、工事が粛々と進められている。

このように、都心部のネットワークの重要な役割を担っている環状第3号線。未開通部はまだまだ実現へ五里霧中の状況だが、間近に迫っている「第五次事業化計画」の策定によって、具体化にこぎつけることができるのかどうかが、重要なトピックとなるだろう。

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