外環道の「湾岸道路直結」はどうなった? 羽田空港やアクアラインも便利に! 東名から先のルートの現状【いま気になる道路計画】
東京外かく環状道路(外環道)は現在、関越道の大泉JCTから南下して東名高速に接続する区間が工事中だ。いっぽう、その先の区間「東名高速~湾岸道路」の計画はまだ具体化していない。開通によるメリットや、現在の進捗状況について解説していこう。
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外環道「全線開通」の最後の区間

外環道の全体計画図。左下側のエリアが未完成となっている。
外環道は都心から半径約15kmのエリアをつなぐ環状の高速道路だ。現在、東関東道(高谷JCT)から反時計回りに、常磐道(三郷JCT)、東北道(川口JCT)、関越道(大泉JCT)を相互につないでいる。
外環道と、さらに外側を走る圏央道のおかげで、周辺に位置する各方面から他エリアへ高速道路を乗り継ぐ際に首都高まで出向く必要が無くなり、都心の混雑が大きく緩和されることとなった。
そんな外環道だが、まだぐるりと一周つながる完成にはほど遠い。西側では関越道~中央道~東名高速の約16kmにおいて工事が進行中。ここが開通すれば、23区西部や多摩地域にとって、信号ゼロの重要南北軸が誕生することとなり、期待が高まっている。
しかし、外環道は東名高速からさらに反時計回りに延伸し、東京臨海部で湾岸道路へ接続して終点を迎えるのが最終計画だ。このいわゆる「外環道 東名高速~湾岸道路」整備計画はどんなものなのだろうか。
外環道で東名高速~湾岸道がつながる?

外環道(東名高速~湾岸道路)の所要時間短縮効果(試算)。
東名高速~湾岸道路をつなぐ23区南部の高速ネットワークは、現状では完全に未成熟な状況だ。
関越道・中央道方面から羽田空港や東京湾アクアライン、首都高 湾岸線の横浜方面へ行くには、結局のところ都心まで一旦出て、首都高 中央環状線で大井JCTに向かう必要がある。当然、都心の交通と混在してしまうため、混雑が大きな課題となっている。
外環道 東名高速~湾岸道路の区間が実現することで、都心をスルーして臨海部へ直結。羽田空港はもちろん、川崎・横浜・木更津方面へもスムーズに到達できるようになるのだ。国交省による試算では、関越道 大泉JCTから本牧ふ頭(横浜市)までの所要時間は60分となるという。現状の120分から「最大60分」もの時間短縮が見込まれているのだ。
また、23区南部は文字通り「高速空白地帯」となっている。首都高 目黒線は戸越・荏原でブツ切れ状態。放射方向には環七通りや環八通りがあるものの、信号が連続するため朝夕を中心に大混雑となるなど、あくまで生活道路であって中長距離ネットワークの役割は果たせていない。
外環道は、その環八通りにあたるネットワークを高規格化し、信号ゼロで世田谷区・大田区エリアを東西に通過する存在となる。
なかなか決まらないルート、なぜ?

外環道 東名高速~湾岸道路は、東京側ルートと川崎側ルートの2パターンが検討されている。
そんな外環道の「最終区間」といえる東名高速~湾岸道路の整備事業は、いつ事業化され、着工となるのだろうか。
実は現状では、まだルートが決定しておらず、「どのあたりを通るか」すらはっきりしていない状況にある。これが決まらなければ、概略ルートや構造を決める「計画段階評価」にも到達できないため、地元自治体からも、国に対して何度も要望書が出され、早期の進展が呼びかけられている。
具体的には、多摩川を境にして「東京側ルート(環八通り沿線)」「川崎側ルート(国道409号沿線)」の2つの構想があり、どちらかに一本化するための調整が行われている。
東京側ルートになった場合、蒲田付近を経て羽田空港へ直結する形となる。いっぽう川崎側ルートになった場合、幸区付近を経て東京湾アクアラインへ直結する形となる。
なお、この川崎側ルートは、「川崎縦貫道路」という別の計画としても扱われている。平成初期から続く古い整備計画で、東京湾アクアラインの西側内陸部への延長区間として、大師JCTから国道15号(第一京浜)までが事業進行中だ。
まずは、この川崎縦貫道路と外環道 東名高速~湾岸道路が競合しているため、整合性をとる必要があるというわけだ。
調整の場となっているのは、2016年に設立された「東京外かく環状道路(東名高速~湾岸道路間)計画検討協議会」だ。国土交通省と東京都、川崎市がメンバーとなっている。
2024年11月に開催された第7回の資料では、東京港・羽田空港・川崎港・横浜港のアクセス強化の重要性を事業戦略にしたうえで、「川崎縦貫道路の計画と一本化する場合について、整備効果や起終点、費用負担の考え方等についての検討を進めることを確認した」とされている。まだまだ最終結論への道のりは遠そうだ。
ちなみに、次回からは協議会名が「羽田空港・京浜三港アクセス強化等に資する東京外かく環状道路(湾岸道路~東名高速間)計画検討協議会」に変更され、この調整は一からのスタートとなる。2025年7月末時点で、同協議会の最初の会議はまだ行われていない。
外環道 東名高速~湾岸道路の事業化に向けての最初のトピックは、この新しい議会が開催され、最大の懸念事項である「2つのルート構想の一本化問題」に終止符が打たれる時だろう。引き続き動向を注視していきたい。
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