紀伊半島ぐるっと一周「信号ゼロ」に!? 夢の高規格道路「紀勢自動車道」計画が進行中! 最南端も間近に【いま気になる道路計画】
関西エリア南部に位置する広大な紀伊半島。その沿岸を一周まるごと「信号ゼロ」でつなぐ、壮大な高規格道路が整備の真っ最中だ。太平洋岸に点在する都市を結んで災害に強くし、観光地の周遊性を高めるという「紀勢自動車道」は、現在どこまで完成していて、どこが工事中なのだろうか。
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紀伊半島の沿岸部を丸ごと結ぶ、壮大な計画

紀伊半島沿岸部を一周つなぐ「紀勢自動車道」
紀伊半島をぐるっと高速道路で結ぶ計画は、正式名称「近畿自動車道紀勢線」として1996年に都市計画決定された。
全線開通すれば、紀伊半島沿岸部のアクセス性が向上し、白浜から串本、勝浦や熊野三山などの市街や観光地をつなぎ、周遊性が高まる。さらに津波をはじめ、災害時に緊急輸送道路としても機能して「命の道」の役割を果たすほか、信号ゼロでつなぐことで速達性・定時性を確保し、中長距離交通と生活交通を分離できるという利点もある。
そんな壮大な計画も、大阪府・和歌山県側からは「阪和自動車道」、三重県側からは「伊勢自動車道」の延伸区間として、「紀勢自動車道(以下、紀勢道)」として次々と開通。今や紀伊半島の奥深くまで到達している。
とはいえ、まだ途中でブツ切れになっている区間も複数存在する。どこが開通していて、どこが未開通なのか、整理していこう(以下、未開通部の名称はすべて仮称)。
和歌山側は「最南端到達」まであとわずか!

紀伊半島の最南端、串本へ向けて工事中の紀勢自動車道「すさみ串本道路」工区。
まず大阪府・和歌山県側から見ると、2007年に南紀田辺ICまでが開通。高速道路上の案内表記では、ここまでが「阪和道」、この先が「紀勢道」となっている。
2015年には、南紀田辺IC~すさみ南ICまでの38kmが開通。現時点でここまでが開通済みだ。
その先の紀勢道は「すさみ串本道路」という工区名で工事が続けられている。延長19.2kmで、紀伊半島最南端の串本ICに到達する区間だ。
すさみ串本道路は、もともと「2025年春開通」と発表されていたが、すさみ南ICに近い「小河瀬谷川橋(長さ183m)」の現場で、地盤のひび割れが見つかるなどの問題が発生。設計見直しを迫られることとなり、今年4月に入って開通予定が「2027年度夏」に延期された。
三重側は未開通区間が残る

紀勢自動車道の未開通部分は3か所ある。前述の通り「すさみ串本道路」の開通は、2027年度夏へと変更されている。
三重県側は、伊勢道の勢和多紀JCTから南が紀勢道とされている。現在、勢和多紀JCTから熊野市の熊野大泊ICまでの79.3kmが開通済み。尾鷲市内に位置する尾鷲北IC~尾鷲南ICの5.4kmだけ長らく未完成だったが、2021年に念願の開通を果たした。
そこから先は「熊野道路」(熊野大泊IC~熊野IC:6.7km)、「紀宝熊野道路」(熊野IC~紀宝IC:15.6km)が工事中。
熊野道路完成の重要なカギを握るのが2本のトンネルだが、長さ約860mの「第1トンネル」は今年5月23日に掘削完了。長さ1,307mの「第2トンネル」は、2025年5月末時点でちょうど半分が掘削完了したところだ。
いっぽうの紀宝熊野道路は、2025年3月末時点でまだ設計と用地取得の段階となっており、用地取得率は約15%にとどまっている。
その先の工区は、三重・和歌山県境をまたぐ「新宮紀宝道路」(紀宝IC~新宮北IC:2.4km)が2024年12月に開通したばかりだ。熊野川河口を長さ821mの橋で一気に越えていき、渋滞に悩まされていた両岸アクセスの利便性が向上した。
南隣の「新宮道路」(新宮北IC~新宮南IC:4.8km)は未開通。2025年3月末時点で、用地取得率は約7%となっている。
さらに南側の新宮南IC~太地ICの15.2kmは「那智勝浦新宮道路」として開通済み。そして、その先の未開通部「串本太地道路」(太地IC~串本IC:18.4km)で最南端部へ到達し、すさみ串本道路とつながる予定となっている。串本太地道路の用地取得率は約83%だ(2025年3月末時点)。
このように、三重県ではモザイク状に開通区間と未開通区間が入り乱れている。未開通部を改めて時計回りに整理すると以下の3区間、全5工区で計64.7kmとなる。
・熊野道路(工事中)、紀宝熊野道路(用地取得中):計22.3km
・新宮道路(用地取得中):4.8km
・串本太地道路(用地取得中)、すさみ串本道路(2027年夏開通予定):計37.6km
とはいえ、すでに全線が「事業化済み」という事実が重大なのは確かだ。あとは全線開通に向け、今後は用地取得の進捗がカギを握る。また、いざ着工しても、すさみ串本道路のように想定外の地盤対策などで完成予定が延期になる可能性もある。夢の「紀伊半島一周高速道路」の成就を願い、引き続き動向を注視していきたい。
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