東京~千葉つなぐ「第3の高速道路」ついに「3つのルート案」が公開! 新湾岸道路は一体どんな道路になるのか【道路のニュース】
東京と千葉をつなぐ新たな幹線道路「新湾岸道路」の計画が、事業化に向けて大きく前進中だ。いよいよ3つの概略ルート案も明らかになったこの道路計画は、現時点でどこまで進んでいるのだろうか。
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東京~千葉の夢の「第3高速ルート」

新湾岸道路の検討区間概要。外環道 高谷JCT付近を起点としたルートが想定されている。
新湾岸道路は、千葉県市川市の高谷JCT(首都高湾岸線・外環道・東関東道)から臨海部を千葉市方面へ抜けていき、千葉市中心街を超えて蘇我地区・市原地区へつながる高規格道路。
これまで東京~千葉間の幹線移動は、高谷JCTから浦安、船橋、幕張といった臨海部を抜ける「東関東道」とその側道の「国道357号」、首都高7号小松川線から直通し東関東道の内陸側を並行する「京葉道路」が担ってきた。
しかし両都市部間の移動需要に対して交通容量が不足しており、朝夕を中心に激しい渋滞が発生している。特に2018年に外環道の千葉区間(三郷南IC~高谷JCT)が開通してからは、首都圏各方面からの交通流が一気に東関東道と京葉道路へ流れ込むようになった。
京葉道路は全線にわたって年間101回以上の慢性的な渋滞区間となり、特に千葉市郊外の穴川ICや貝塚トンネル周辺の渋滞が深刻的だ。
この渋滞状況は、千葉県臨海部の工業地帯にとっても、円滑な物流を阻害するマイナス要因となっている。さらに首都圏から成田空港へ向かう道路交通にとっても、到着時刻が読めないことは大きな課題なのだ。
これらの課題を解決するために、新湾岸道路は「第3の高速ルート」として期待されている。
新湾岸道路が既存の東関東道・京葉道路と異なる大きな点は、千葉市南部へ臨海部をまっすぐつなぐ点だ。特に京葉道路・館山道はいったん千葉市北部をぐるりと迂回するため、市原方面にとっては遠回りの状況。そこへ臨海部をまっすぐ通って千葉市内をスルーする新湾岸道路は、まさにバイパス的役割を発揮する存在となる。
ついに「計画具体化」プロセスが進行中

「計画段階評価」のプロセス。右側のオレンジ色の矢印が、住民アンケートなどの意見聴取。基本的に2回行われ、2回目で概略ルート構造の最終案が絞り込まれる。
そうした新湾岸道路だが、長らく構想段階で終わっていたのが、2023年6月に国や沿線自治体、高速道路事業者などにより「新湾岸道路検討会準備会」が設立。具体化への機運が高まり、2024年8月には「第1回 新湾岸道路有識者委員会」が設立。そして12月には悲願となる、「計画段階評価」の主要プロセスである「意見聴取」(住民アンケートなど)が開始されたのだ。
道路計画が事業化に至るまでには、「計画段階評価」によって概略ルートや構造を決定し、それを元に都市計画決定や環境アセスメントを実施。完了すればいよいよ事業化を待つ段階となる。
新湾岸道路は、その最初の主要ステップである「計画段階評価」のうち、1回目の意見聴取が終わった段階。
そして2025年5月30日には「第2回 新湾岸道路有識者委員会」が開催され、そこで初めて、概略ルート構造案の具体的なイメージが明らかになったのだ。

5月30日に行われた「第2回 新湾岸道路有識者委員会」にて提示された、新湾岸道路の概略ルート・構造案。
そこでは「バイパス整備案」「現道対策+一部バイパス整備案」の2パターンが提示された。バイパス整備案はさらに「高架」「地下トンネル」の2タイプがあり、概略ルート構造案は「合計3種類」ということになる。
まず「バイパス整備案」は、高谷JCTから二俣新町や日の出を経由し、幕張・稲毛の臨海工業地帯を通過。川崎町の人工島付近で分岐し、1本は京葉道路・館山道の「蘇我IC」付近へ直結し、もう1本は五井海岸で国道16号と交差し、館山道の「市原IC」付近へ直結するというルートになっている。
臨海部を走るルートだが、完全に東京湾の海上を抜けるわけではなく、基本的に埋立地をつないでいくことになる。東関東道とは1km程度の距離を空けて並行する形だ。
最大の特徴は、市川市~船橋市内にまたがる干潟「三番瀬」、習志野市内の「谷津干潟」を避けたルートになっていること。検討段階でも特に配慮すべき課題に挙げられていたこれらの自然環境に対し、最小限の影響となる計画案に落ち着いたといえるだろう。
高架案は4~6車線の高架道路を建設し、地上には側道として片側2車線ずつの無料道路が整備予定。あわせて日常利用にも使える新道路が誕生することとなる。いっぽうトンネル主体案は、「陸上部は地下トンネル、海上部は高架橋で海面上を抜けていく」というもの(海底トンネルは作らない)。こちらも高架案と同様、側道が整備される計画だ(トンネル上部の地表面に整備)。
そして「現道対策+一部バイパス整備案」は、国道357号と国道16号をさらに拡幅し、交通容量増加を図るという案になっている。現地状況によって一部新設区間も整備する可能性があるが、今のところ具体的な区間は規定されていない。
これからどうなる? 新湾岸道路の「ルートと構造」の課題とは

新湾岸道路整備による環境悪化が課題となっていた三番瀬の様子。今回発表された3つの案では、干潟を避けていることがわかる。
こうして「高架バイパス」「トンネルバイパス」「現道対策+一部バイパス整備案」の3案に絞られた、新湾岸道路の概略ルート構造案。
次は計画段階評価の主要プロセスとして「2回目の意見聴取」が始まることとなる。ここで地域アンケートなどにより、上述の3案から「最終案」が絞り込まれるのだ。そして先述のとおり、都市計画決定と環境アセスメントが進められ、それが終わればいよいよ事業化の一歩手前になる。
3案のうち「現道対策」はアクセス性や速達性などで「バイパス整備案と比較して効果は小さい」という評価で、まるで「かませ犬」のような存在といえなくもない。他の多くの計画段階評価でも、最終的には新ルートによるバイパス整備案に決定されている。
あとは高架案なのか地下トンネル案なのか。事業費は、あくまで精査前のざっくりした数字とはいえ、高架案は「1兆円」、トンネル案は「2兆円」と大きな開きがある。速達性はどちらも同程度。景観面では、トンネル案のほうが「影響が少ない」と評価されている。
しかし、「地下トンネル」には大きな課題がある。それは、道路法第46条3項に基づく「危険物積載車両の通行禁止」となる可能性があるという点だ。この法律には海や川の底をくぐる「水底トンネル」にも適用されるため、せっかくの工業地帯アクセス道路にもかかわらず、物流関係のトラックなどが通行できないことになってしまう。
もちろんそれを前提に「海上部は高架橋にする」という案にはなっているものの、そうした制約も設計上のキーになってきそうだ。
3つのルート案それぞれの課題もふまえ、最終的に一体どの案に決定されるのか、見守っていきたい。
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