なぜBYD? 立山黒部アルペンルートでトロリーバス廃止後に走るのは中国製の電気バス「K8」
BYDの大型電気バス「K8」が、日本を代表する観光地のひとつである立山黒部アルペンルートに投入され、4月15日から「立山トンネル電気バス」として運行を開始した。
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立山黒部アルペンルートとは?
立山黒部アルペンルートとは、標高3,000m級の峰々が連なる北アルプスを貫通する、世界有数の山岳観光ルートだ。総距離は37.2km、最大高低差は1,975mもあり、その多くの区間が中部山岳国立公園の中にある。
同ルートは、富山県側の立山駅と長野県側の扇沢駅を玄関口として、電気バスやケーブルカー、ロープウェイなど、さまざまな乗り物を乗り継ぎ、いくつもの景勝地を巡りながら、立山黒部の雲上の大自然を満喫することができるというもの。2024年には国内外から82万人超の観光客が同地を訪れている。
BYDの大型電気バス「K8」が走るのは「室堂駅(標高:2,450m)」から「大観峰駅(同:2,316m)」までの3.7kmで、「立山トンネル」と呼ばれる区間。ここは立山黒部アルペンルートでも、立山断層破砕帯と呼ばれる軟弱地盤の掘削など難工事を強いられた場所として有名だ。
同ルートの歴史は長く、1971年(昭和46年)4月、立山黒部アルペンルートの全線開業時に先駆け、立山トンネルでディーゼルバスが運行を開始。その後、観光客の増加にともなうバスの増便をきっかけに、1996年(平成8年)には、クリーンな電気で走るトロリーバス(無軌条電車)に切り替えられた。
立山黒部の豊かな自然環境を守りながら、自然由来のエネルギーで走る理想的なエコ・モビリティとして人気を博したトロリーバスは、運行開始から29年もの間無事故で運行され、これまでに約2,000万人が利用してきた。多くのファンに惜しまれながら、2024年11月30日15時発の最終便をもって、日本で最後のトロリーバスとしての役目を終えている。

立山黒部アルペンルート 雪の大谷 (c) sada - stock.adobe.com
BYDの大型電気バス「K8」とは
長年活躍したトロリーバスの後継として導入されたのが、BYDの大型電気バス「K8」で、2024年秋に同ルートを運営する立山黒部貫光に、計8台を納入された。
K8のボディサイズは大都市圏での交通インフラに適した全長10.5m、全幅2.495m、全高3.27m、ホイールベース5.3mというもの。乗降性や車内移動のしやすさに有利なフルフラットフロアや、効率の良い車室レイアウトを実現するインホイールモーターを採用(出力100kWを2基)している。乗車定員は都市型が80人で、郊外型が76人だ。
充電はCHAdeMO方式で、航続距離は240km。駆動用バッテリーには、発火の恐れが無い安心・安全なBYD独自のリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを用いた、容量314kWhのブレードバッテリーを搭載している。
K8には先進技術が惜しみなく採用され、多くの観光客の快適な移動手段としての役割と、立山黒部の雄大な自然保護の双方を実現しているという。

BYDの大型電気バス「K8」
この「K8」が活躍する舞台となる室堂駅には富山県側の出発地である立山駅から、立山ケーブルカーで美女平駅まで登り、そこから先は立山高原バスで向かうことになる。
全線開通日から初夏までの期間には、車窓から、切り立った雪の壁「雪の大谷」を眺めることができ、この観光名所を歩くイベントも実施されている。
K8を就航させた立山黒部貫光協会では6月1日〜30日の期間中、「立山トンネル電気バス・デビュー記念イベント」として、立山トンネル電気バス(室堂〜大観峰)に乗車した人全員に、電気バスの紹介を記した記念カードが贈呈される。
また6月27日〜7月1日には、「のりものデイズ・夏篇」として、2024 年に運行を終了したトロリーバスと電気バスを室堂ターミナル駐車場に並べて展示する予定だ。
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