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最終更新日:2025.04.15 公開日:2025.04.15

なぜ外国人は日本の運転免許が簡単に取れるのか? 訪日中国人向けの違法「白タク」がなくならない理由【国沢光宏がクルマ業界にモノ申す!】第3回

(c) beeboys - stock.adobe.com

外国人が母国で取得した運転免許を、日本の免許に切り替える「外国免許切替(外免切替)」制度。この手続きが2023年11月に緩和されてからというもの、中国人が日本の運転免許試験場に殺到し、白タクなどの違法営業行為がはびこるなど、さまざまな問題が噴出している。政府はいつまでこの状態を放っておくのか? 自動車評論家の国沢光宏氏がモノ申す!

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文=国沢光宏

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訪日中国人向けの「白タク」がやり放題

インバウンドの急増により、我が国の移動手段は“ほぼ”パンク状態になってしまっている。なかでも深刻なのがタクシー。他の国は「Uber(ウーバー)」や「Grab(グラブ)」に代表されるライドシェアでタクシー不足をカバーしているのに対し、日本の場合、タクシー業界を守るため国交省が認可していない。つまり「ニーズ」があるのに供給できない状況。それを放置しているから、隙間産業などが続々出てきた。

ここにきて顕著なのが中国からの観光客を相手にした白タクや(違法営業行為)、中国の富裕層を狙ったレンタカーである。中国は日本よりネット文化が浸透しており、たいていの情報を入手出来る。日本で中国人が白タクをやろうとしたら、中国のネットでお客を募集すれば簡単に企業可能。実際、観光地に行くと中国からの観光客を乗せたアルファードに山ほど出くわす。

中国の知り合いに聞いたら「日本旅行に行ったら中国人ドライバーのライドシェアを使うのは普通に行われています。料金は日本のタクシーと同じくらいですけど、中国語が通じるから便利だと評判です」。中国でもライドシェア(滴滴出行など)は普及しているため、中国人からすれば違法行為だと考えていないそうな。日本政府も観光客に対する啓蒙活動をしていないため、悪意無し。

中国発のタクシー配車アプリ「滴滴出行(ディディチューシン)」は、5億5000万人以上のユーザーがいるという。(c) Selman - stock.adobe.com

中国発のタクシー配車アプリ「滴滴出行(ディディチューシン)」は、5億5000万人以上のユーザーがいるという。(c) Selman - stock.adobe.com

名義貸し緑ナンバーがヤバい!

中国人はどうやって日本の免許を取得してるのか? 本来ならジュネーブ条約の加盟国ではない中国国籍の人が日本でクルマを運転しようとしたら、日本で免許を取得しなければならない。これまで日本の免許を取得するには、1)海外に現住所を持たないこと。2)日本での定住場所が必要。という当たり前と思える条件をクリアしなければ資格無かった。日本に引っ越してきた人に限られていたワケ。

しかし岸田前首相時代の2023年11月に、突如中国取得の免許を簡単な手続きで日本の免許へ切り替えらえるようにした。この時の強引な緩和策により、観光ビザの中国人がホテルの住所で日本の免許証を取れるようになったのである。日本の免許取得の条件は、常識的な道路交通のルール10問中、7問合格で学科はOK。実技試験は普通に運転できればパス出来る。

ちなみにネット文化で何でも揃う中国だからして、学科試験問題(中国語)は全て事前に学習出来る。実技試験も日本で合格出来るような運転を教える人などいるため、しっかり準備していれば学科も実技も合格する。最大のハードルは外免切替申請が予約制になり、希望者殺到のため待たなければならないことくらい。今や運転免許試験場行くと、外免切替の外国人が溢れている。

日本の免許を取れたら白タクの運転手になれる。中国からのインバウンドのためのライドシェアシステムも日本国内に構築されており、いくらでも仕事があるという。国交省も取り締まりを始めているが、“名義貸し緑ナンバー”なるものまで出てきた。これまた中国人が日本で起業している。運転手不足で使われなくなった緑ナンバー(営業車)をシェアしてもらってるようだ。

成田空港で増えてきた緑ナンバーのアルファードなど、けっこうな割合でインバウンド向けの名義貸し営業車だと思っていいんじゃなかろうか。ノンビリ構えている国交省は次から次へと出てくる中国人の新しいビジネスをキャッチアップ出来ておらず、完全に出し抜かれている恰好。このあたりで、インバウンドの利便性まで考えた、抜本的な対策をしなければならない。

緑ナンバーのアルファード(イメージ)(c) xiaosan - stock.adobe.com

緑ナンバーのアルファード(イメージ)(c) xiaosan - stock.adobe.com

事故を起こしたらすぐ出国?

もう一つの懸念は中国の富裕層である。都市部のタワーマンションを購入する中国人が急増している。中国は中国人であっても不動産を購入出来ない。本来なら2国間協定により、中国人は日本の不動産を買えないような規制を行うべきけれど、買えてしまう。しかも中国は相続税がないため、不動産を購入されたらそのまんま。タワーマンションを別荘代わりにする中国人も増えてきた。

当然ながらクルマに乗りたいだろうから外免切替で日本に免許を取得する。そういった別荘族相手にクルマを貸す業者も出てきた。問題は事故。外免切替だと住所はホテルなどだから、当事者に辿り着くまで時間が掛かる。事故を起こした直後に出国されたら追いかけられない。悲惨な事故が起きる前に、外免切替のシステムを改良すべきだと思う。

外国人が運転するレンタカーの事故件数の推移(2024年集計)。資料=交通事故総合分析センター(ITARDA)

外国人が運転するレンタカーの事故件数の推移(2024年集計)。資料=交通事故総合分析センター(ITARDA)

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