彼氏のオープンカーでドライブデートはアリですか?━━教えて吉田由美センセイ! 恋とクルマの相談室 Vol.3
酸いも甘いも知り尽くしたカーライフ・エッセイストの吉田由美さんが、恋愛に仕事に全力で頑張るイマドキ女子のお悩みをズバッと解決! 連載3回目のお悩みは「オープンカーでのドライブデート」について。由美さん的にはアリですか? ナシですか?
この記事をシェア
目次
前回までのおさらい
年下の友人、A子ちゃんが今ドキな婚活、マッチングアプリで知り合った彼と恋愛中。でもなにかとクルマに疎いA子ちゃん、あれこれ悩みがあるらしく、ワタクシ、カーライフエッセイストの吉田由美になにかと相談してくるのです。今回のお悩みは……。
彼氏とオープンカーでドライブ。何が嫌なの?
A子 由美さ~ん、聞いてくださ~い!
由美 あら、A子ちゃん久しぶり~。その後、例の彼とはうまくいってる?
A子 まあ、一応(笑)その彼が最近、クルマを買い替えると言い出してて……。
由美 あ、「N-BOX」だったっけ?
A子 はい。私も最近、可愛いな~と思っていましたが、今度はオープンカーに買い替えるっていうんです(涙)
由美 いいじゃない! オープンカーでドライブ。え? 何が嫌なの?
A子 だって、だってですよ? オープンカーって、髪の毛はグシャグシャになりそうだし、日焼けしそうだし、冬は寒そうだし、それに信号待ちの時とか、結構、人に見られませんか?
由美 まあ、そんな時は屋根を閉めればいいし、だいたいシートヒーターもあるし、そして自意識過剰。あんまり人は気にしていないと思うけど……(笑)ちなみに車種は何?
A子 マツダのロードスターって言ってました!
由美 え~っ! いいじゃない! マツダ ロードスターって、「世界一売れてる2人乗り小型オープンスポーツカー」として、ギネスブックに認定されているぐらい、人気のモデルよ。今度ちょうどお仕事で、ロードスター開発主査の斎藤茂樹さんに会う機会があるから、オープンカーの魅力について一緒に聞いてみない?
A子 私も行くんですかぁー?
由美 当たり前じゃない!
A子 はーい(しぶしぶ)
ロードスターの魅力って何ですか?

最新のロードスターと吉田由美センセイ
由美 斎藤さん、お忙しいところすみません! 私の友人のA子ちゃんです。実は彼がロードスターを検討中らしいのですが、A子ちゃんはオープンカーに抵抗があるようで……。今日はマツダ ロードスターの魅力をたっぷり教えてあげてください!
A子 よ、よろしくお願いします!(ペコリ)
斎藤主査 よろしくお願いします(笑)
A子 単刀直入にお伺いしますが、どうしてみんなオープンカーが好きなんですか?
斎藤主査 いい質問ですね。「このクルマを手に入れるほんの少しの勇気があれば、きっと、だれもが、しあわせになる」。これは1989年に初代ロードスターを発表した時のメッセージなんですが、実際クルマに乗ってみると分かります。A子ちゃんにとっては嘘みたいに聞こえるかもしれませんが、オープンカーが持つ幸福感って想像以上に高いんです。
なぜロードスターがこれだけ長く生きてこられたかというと、これはあくまで僕の持論ですが、家のまわりを走ってるだけで楽しいから。ほかのスポーツカーだったら峠を攻めたり、高速道路を走ってパフォーマンスを試しますよね。でもロードスターは日常の道が楽しい!
由美 開放感と疾走感。自分が空とつながるような感覚は特別で気持ちいですよね。“いつでも屋根を開けられる”っていうことが重要。私も、心の余裕が普通のクルマとは違う感じがします。特にロードスターはその味付けが数あるオープンカーの中でも別格な気がします。
A子 えっ、同じオープンカーでもそんなに違うんですか? ロードスターの魅力ってどこにあるんですか?
斎藤主査 またまたいい質問ですね! ロードスターの魅力、それは100人いたら100通りの答えがあると思います。3代目ロードスターのNCのころから「Lots of Fun(多層的な楽しみ)」というコンセプトを立てて、クルマを運転する楽しさだけ、というのはやめようと。きっとクルマには無限大の楽しみ方があると思いますので。
ただし、「運転は楽しい」という基本のスタイルは作り手として持ち続けていますし、そこだけは絶対に外しません! 実際にロードスターを購入される方も、運転を楽しむだけでなく、クルマを中心としたさまざまなライフスタイルを楽しんでらっしゃるようです。

2019年より4代目ロードスター(ND)の開発主査を務める齋藤茂樹さん。奥には、初代NAロードスターのカタログに記されていた「だれもが、しあわせになる。」というメッセージが掲げられている
由美 気軽に乗れるスポーツカーとしてドライブを楽しんだり、オーナーズミーティングに参加したり、ちょっと本気でサーキットを走ってみたりと、運転初心者からエキスパートまでクルマ好きの濃度に合わせられるところが魅力なのかもしれませんね。でもロードスターだけなぜこんなに愛されているのでしょうか?
斎藤主査 それはやっぱり原点を貫いているからではないでしょうか。コンセプトを変えずに愚直にライトウェイトスポーツというスタイルを守り続けています。もちろん価格がリーズナブルということもあると思います。安いというか、気軽にどうぞ、誰でもどうぞ、という意味でのライト。敷居が低いというか、それを大切に守ってきたからだと思います。
それができずに消えていった世界の名車はたくさんありますので。そしてもうひとつは、2人乗りのオープンカーであること。いまの世の中、合理的な生き方をしようとすると、なかなかオープンカーに乗る機会って無いじゃないですか? でも憧れってありますよね。
由美 あ、それわかります。私がA子ちゃんぐらいの年齢のころ、オープンカーに一度は愛車として乗りたいと思っていました! でもいざ乗ってみると、オープンカーでツーシーターだと荷物は載らないし、2人以上乗れないし……。でも、でもね、ここが大事だからA子ちゃんよく聞いて! オープンカーを体験したことがあるのと、ないのとでは人生の経験として大きく違うのよ!
A子 なんだか、ちょっとバブリーな香りがしますね。世代間ギャップってやつでしょうか?
由美 えっ、なんですって?
A子 いえ。何でもないでーす(笑)
ロードスター、若いユーザーが増えてるって本当?
由美 そういえば何年か前に私、毎年、軽井沢で開催される「ロードスターミーティング」に行きましたが、結構、若い方が多いな~という印象を受けました。ユーザーの年齢層はいまどのような感じなんですか?
斎藤主査 ロードスターオーナーの年齢の分析をすると、人口構成の比率にだいたい準じているんですが、不思議と高齢化せずに若い方も毎年増えています。イベントにもたくさん参加されていますね! 特に4代目の「ND」が出てからは毎年4割が新規オーナーさんという状況です。マツダのオーナーイベントは全国でいくつか開催されているんですが、実はマツダ社が主催しているものは1つもありません。全部マツダのファンの方が運営しているんです。
由美 え? そうなんですね! 知らなかった~!
A子 あのー由美さん、NDって何ですか? 素人の私にはさっぱりわからず!
由美 ごめんごめん! マツダ ロードスターは現在発売されているモデルが4代目なんだけど、初代を「NA」、2代目が「NB」で、現行型は4代目だから「ND」って言うの。
A子 ほほーん、なるほどー。その呼び方はちょっとカッコいいですね。専門家っていう感じがします!

1989年に登場した初代ロードスター(NA)のフロントマスク。リトラクタブルヘッドライトは愛嬌たっぷり

4代目ロードスター(ND)は2015年に登場し、いまも進化し続けている。人馬一体を体現するオープンスポーツの決定版
斎藤主査 カッコいいといえば、昨年、深みのあるアーティザンレッドボディカラーに、インテリアをタン(ベージュ)組み合わせたロードスター発売35周年記念モデルを発売したんです。発表直後は賛否両論? という雰囲気でしたが、それがその後、なんと若い方に好評で……。
今、青山にある「マツダトランス青山」にも展示しているのですが、多くの若い方が見学に来たり、試乗していただいているようです。実は35周年記念のロードスターは、“ある程度年配の人が落ち着いてゆったり優雅に乗ること”をコンセプトに作ったのですが。いい意味でハズれました(笑)
由美 斎藤さんは、ロードスターが昨今、若い方や女性オーナーが増えているのはなぜだと思いますか? 今、ネオクラシックや昭和が流行っているので、クルマでもそういうトレンドに敏感な若い人たちにウケているのでしょうか?
斎藤主査 昔より今の若い子たちはライフスタイルとクルマがリンクしているような気がします。昔だったらクルマに‘全振り’だったから、自分に合っていなかったり背伸びして車に乗っていたような気がしますが、今の子たちはファッションに合わせているんです。
というのは以前イベントで、ボディカラーにいかに自分のファッションを合わせるかを楽しみにクルマに乗っている女性が、結構多いということがわかったんです。行く場所によっていろいろなファッションをコーディネートして、それを含めてカーライフを楽しんでます、と。
たとえば青山に行ったときに、クルマから降りてくる自分を想像してボディカラーを選ぶという話をしていました。山のほうにドライブするときはアウトドア風、街中のカフェなら真逆のコーディネートで、それも含めてカーライフを楽しんでます、と。なるほどなと思いました。
テンション上がるーっ! マツダのクルマづくりはDJだ

屋根がないって、さいこーっ!
由美 あ、A子ちゃん、ごめんなさい。私ばかり夢中になって話してたわ! 他に何か質問はある?
A子 そういえば広島の友達が、子供のころ、マツダの工場見学に行ったことがあると言ってました。ロードスターってどうやって作られているのですか? 私も見てみたい!
由美 あ〜れ〜A子ちゃん、クルマにちょっと興味出てきたんじゃない?(笑)
斎藤主査 広島で働くマツダのスタッフたちは、めちゃめちゃ面白いですよ。本社と工場が同じ敷地内にあるせいもあるかもしれませんが、工場の現場から次々に新しいアイデアが出てくるんです。改善提案の塊みたいになっていて、一生懸命知恵を出すんです。
ここからここまで9秒かかるラインの工程を、ここをこうしたら7秒になるんじゃないか? みたいな感じで秒単位の創意工夫をするんです。それは省エネや労働の時短にもなります。工場もSKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジーが始まったころに大きく変わりました。工場の人たちも自分たちの理想って何かを考えだしたらガラッと変わりましたね。とにかくみんなで理想を描こう、それに向けて突き進もうと。
これもほんの一例ですが、かつてはデザイナーが新しいデザイン提案してもプレスの現場で無理だと断られることも度々ありましたが、いまでは、どうやったらそのデザインが実現できるのか逆に知恵を出してくれたたりするようになりました。今、工場の人たちが着ているアウターには「人馬一体」というマツダの思想が書かれています。
A子 クルマづくりにみんなが高いプライドを持って仕事されているということですね! デザインやものづくりの話はワクワクしますね!
斎藤主査 通常、生産部門と開発部門は敵対していることが多いんです。ここまで融合している会社、見た事がないとよく言われます(笑)マツダは、従業員2万人の町工場なんです。もともと社長がそういうポリシーでやっていたので、家族みたいな感じです。
由美 なんか愛情が深いメーカーですよね。その中でもロードスターは特別な気がします。愛情といえば以前、発表会を浦安のイクスピアリで行いましたよね? あれ、印象に残っています。

運転に自信ががなくても大丈夫! ロードスターはだれもが笑顔になるクルマ
斎藤主査 懐かしいですね。ファンとかオーナーの方々をご招待して、たしか2014年にイベントを開催しました。マツダは本当にファンの方々に支えられていますね。
由美 特に、若いマツダファンがちゃんと育っているのがスゴイなーと!
斎藤主査 そこなんですけど、実はロードスターは若い人を狙うなんて一切考えていないんですよ。いつの時代も、ロードスターのファンのど真ん中に刺さるクルマを企画したいと思っているので。誰かがロードスターに乗って楽しんでいたら、それを見た周りの人が、自分も乗ろう! 乗りたい!と自然発生的に増えているのではないでしょうか。こちらからは“若者をターゲットに”という営業活動はしていなんです。
A子 それ、有名なDJも全く同じこと言ってました! フロアで一番楽しんでいる人に向かって曲をかけて、その人たちが盛り上がってくれれば、その波動が周りも派生していくって。
斎藤主査 それはいい話ですね。ホント僕らはDJみたいなものです(笑) マツダでクルマづくりをしていて、本当にありがたいのはお客さんの顔が見えることです。こんなに開発とお客様の距離が近いメーカーはないと思います。
ロードスターが“しあわせ”を生み出す理由
A子 マツダもロードスターも、バイブスめっちゃ高いんだ!
由美 お、テンション上がってきた?
A子 ハーイ!(笑)
斎藤主査 そう、その高揚感こそが、最初に僕が話していた“しあわせ”を生み出す源泉のひとつなのかもしれませんね。
由美 つまりロードスターはドイライバーのための快楽装置、ということでしょうか?
斎藤主査 これはバイク乗りから聞いた話だけど、バイクって、ヘルメットかぶっているから意外と風を感じない。逆にオープンカーはノーヘルだから(笑)、常に外とつながっている感じがする。寒いというけど、ヒーターをガンガンかければ上は涼しいから露天風呂ですよ。渋谷のスクランブル交差点で露天風呂感覚(笑)。たしかに快楽ですね。
由美 でもちゃんと自分だけの空間は確保されているし、移動する秘密基地みたいなところもありますよね(笑)
A子 私、ロングヘアーなんですが、ロードスターに乗っても大丈夫ですか?
斎藤主査 女性にとって、風の巻き込みは重要なポイントだと思いますが、まったく入れないようにしようと思ったらできるんです。でも高さをちょっと上げただけで全然変わります。でも風がソヨソヨっと入ってくるのがオープン走行しているって言うのが欲しいので、あえてこだわってやっています。

ロードスターは新旧問わず、どの世代のクルマに乗っても運転が楽しい!
A子 へぇ〜っ! 無くすこともできるんですね。
斎藤主査 はい。もっと入れることもできます。でも、ソヨソヨぐらいが一番気持ちがいい、楽しいのがマツダの答えです。でもどうしても女性で髪型が崩れるのが嫌だという人もいますが、そういう方は帽子をかぶっていますね。もちろん日焼け防止でもありますが、でもロードスター乗りの女性といろいろ話をすると、やっぱりアウトドア的な人じゃないとやっぱり厳しいです。日傘が手放せないとか。
実はウチの奥さんも無理なんです(笑)でも別に強引に乗せることも無いですし。そういうのはディーラーオプションで作ってもいいかもしれませんね。アフターパーツがいっぱいあるのもロードスターならではなので。
由美 A子ちゃん、斎藤主査の話聞いてどう?
A子 なんか物凄く思いが詰まっているのと、ロードスターってドライバーの幸福感を生み出すために、計算されつくしているんですね。ロングヘアーはキャップをかぶれば解決。彼とのドライブデートは助手席だけじゃなくて、私も運転してみようと思います!
由美、A子 斎藤主査、今日はありがとうございました!
<恋やクルマに関するお悩み・相談受け付け中です>
吉田由美センセイがズバッと解決!?
読者の皆さんの“恋やクルマ”に関するお悩み・相談を随時受け付け中です。
受付は下記応募フォームから。
https://forms.gle/agKzHYjhAgcZtrjz6