ストロングハイブリッドになってもスバルらしさは健在! なぜ新型「クロストレック S:HEV」は人気なのか?【試乗レビュー】
スバル初のストロングハイブリッドを搭載した新型「クロストレック S:HEV」が話題だ。人気の秘密は燃費の良さだけじゃない! WRXを愛車とするスバリストでありモータージャーナリストの大音安弘が、雪国青森でその走りを試した。
この記事をシェア
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2025/02/250206-subaru-crosstrek-shev-thumb.jpg)
高出力モーター主体の力強く静かな走りが特徴となるクロストレック S:HEV。その走りは、想像以上にスポーティだった。
記事の画像ギャラリーを見る「S:HEV」の実力を雪国で試す!
スバル最新のコンパクトSUV「クロストレック」と、ミッドサイズクロスオーバー「レヴォーグ レイバック」の2車種による雪上試乗会が、1月下旬、青森で開催された。長年培った独自の4WD技術で、降雪地のユーザーからも高い信頼を得てきた自慢の走りを、本場の雪国で試そうというわけだ。
今回の目玉は、2024年12月に発売されたスバル初のストロングハイブリッド「S:HEV」を搭載したクロストレックだ。
これまでスバルは、低出力のモーターと小型のバッテリーを搭載したマイルドハイブリッド(以下、MHEV)のみを展開。現行型クロストレックでは、全車がMHEV化していたが、駆動のメインはエンジンが担っており、発進時や低速域などでアシストすることが前提のシステムだった。
一方、スバルのストロングハイブリッド(以下、SHEV)は、トヨタのハイブリッドシステム「THS II」をベースに開発されており、エンジンと高出力のモーターが走行状況に応じて切り替わるのが特徴だ。発進時や低速域はモーター、中速〜高速巡航ではエンジン、そして急加速時には両方を使用することで、燃費効率を高めている。また大容量バッテリーを搭載しているのもマイルドハイブリッドとの違いだ。
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2024/11/241107-subaru-strong-hybrid-02.jpg)
スバル独自の水平対向エンジンとプロペラシャフトを組み合わせた4WDシステムはそのままに、ストロングハイブリッドシステムを組み込んている。また、ストロングハイブリッドの燃費性能と大容量の燃料タンクを組み合わせることで、1回の給油で航続距離が1000km以上にまで伸長したという。画像=スバル
ただ誤解してほしくないのは、そのままTHS IIを搭載したのではなく、4WD構造に加え、制御ユニットやロジックはスバル独自のものという点だ。具体的には、トヨタのハイブリッドシステムでは後輪はモーター駆動のみの電動4WDが基本。
しかし、スバルは独自に磨いてきた水平対向エンジンとプロペラシャフトで前後輪を接続したメカニカルな4WDシステムはそのままに、SHEVのシステムを組み込んだ。このため、電動化以外の部分は、エンジン車のスバル車と変わらないということだ。
SHEVをイチオシしたくなる理由
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2025/02/250206-subaru-crosstrek-shev-03.jpg)
クロストレック SHEVモデルとMHEVモデルとの外観上の違いは、アルミホイールデザインやエンブレムなど限定的。
クロストレックはSHEVとMHEVとでは、外観上の違いはほとんどない。それは室内空間も同様で、唯一ラゲッジスペースがバッテリーと燃料タンクの拡大などの影響で5%ほど削減されているが、使い勝手に影響するほどではない。コクピットまわりの違いも、メーターパネル内のタコメーターが、モーターとエンジンの動きを示すパワーメーターに変更されているくらいだ。
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2025/02/250206-subaru-crosstrek-shev-07.jpg)
コクピットのデザインや操作性にも違いはない。装備の目玉は、クロストレック初のアイサイトX装着グレードの設定だ。
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2025/02/250206-subaru-crosstrek-shev-08.jpg)
スバル クロストレック Premium S:HEV EX|Subaru Crosstrek S:HEV EX
ただし、走りの質感には大きな差がある。その理由は次の3点だ。
1点目が静粛性の高さだ。モーターの駆動領域が拡大したことで、走行中のエンジン始動時間を大幅に短縮。特に下り坂が多いシーンでは、システム的に多くの回生エネルギーを得られるようになったことから、EV走行が積極的に行えるのだ。また、車内へのエンジン音の侵入を抑えるために、遮音や吸音対策も強化されている点も大きい。
2点目が乗り心地の良さだ。スバルはSHEVの車両重量がMHEVより110㎏増加したことに対応するべく、足回りにも専用チューニングを施した。これにより、路面変化による車体への揺れが抑えられただけでなく、ステアリングの操舵感も良くなった。そのため、MHEV車と比べても1クラス上のクルマに乗り換えたような上質な走りを感じることができるのだ。
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2025/02/250206-subaru-crosstrek-shev-10.jpg)
クロストレック S:HEVはEX高効率化のために、敢えてエンジンは排気量アップの2.5リッター水平対向4気筒に。静粛性にも効果的だ。
そして、3点目が動力性能の向上だ。モーター性能を比べると、MHEVが最高出力10kW(13.6PS)、最大トルク65Nmに対して、SHEVは88kW(119.6PS)、270Nmもある。つまり、モーターだけで小型EV並みの性能を備えており、発進時からモーターによる強力なトルクが使えるため、より俊敏で力強い加速が得られるということだ。
さらに、雪上走行ではエンジン車と共通のメカニカル4WDの強みが生きており、前後の駆動力がバランス良く働くため、安心して走れる感覚を得られた。クロストレックはMHEVでも十分に元気な走りを披露するが、SHEVではよりパワフルになり、操る楽しみも増した。個人的にもしラインナップから1台を選ぶなら、トータル性能でSHEVがイチオシである。
ちなみに、搭載エンジンもMHEVの2.0リッターに対して、SHEVでは2.5リッターと大きくしている。エコカーなのに、より大きなエンジン? と不思議に思うかもしれないが、エンジン回転数を抑えることで、高効率化と高い静粛性へと繋げたという。
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2025/02/250206-subaru-crosstrek-shev-11.jpg)
クロストレックは全車オールシーズンタイヤを装着するが、降雪地での走行のため、スタッドレスタイヤを装着していた。
抜群の安定性能を誇るレヴォーグ レイバック
次は、もう一台試乗してみた「レヴォーグ レイバック」だ。
レイバックは、レヴォーグの車高を高め、SUVの要素を与えたクロスオーバーモデル。1.8リッター水平対向4気筒ターボエンジンと、4WDとの組み合わせはレヴォーグと同じ性能を持つが、足回りに専用チューニングを施すことで、コンフォート志向の強い上級ワゴンに仕上がっている。
そのため、歴代レヴォーグに受け継がれているスポーツセダンのような刺激的な走りではなく、かつての大ヒットモデル「レガシィ ツーリングワゴン」で磨き上げてきた、長距離を安全かつ快適に移動するというグランツーリスモ思想を強く感じることができた。
エンジン性能は最高出力177PS、最大トルク300Nmを発揮するので、力強い走りを体感できる。雪上走行での安定性は抜群で、安心してドライブを楽しめた。また、車内がゆったりしていることにも魅力を感じた。
好スタートを切ったクロストレック S:HEV
![](https://kurukura.jp/assets/uploads/2025/02/250206-subaru-crosstrek-shev-19.jpg)
ステーションワゴンとSUVの強みを融合したクロスオーバーモデル「レヴォーグ レイバック」は、走りの良さと高い快適性のバランスが魅力。
最新モデルのクロストレックS:HEVとレイバックを比べてみると、スポーティな走りという面では、レイバックに分がある。しかし、MHEVのクロストレックでは届かなかった、レイバックの高い静粛性や力強い走りに対し、SHEVではシーンによってはレイバックを超える部分もあったと思う。まさに小さなスバル上級車の誕生だろう。
スバルファンには、すでにSHEVは歓迎されているようで、2024年12月のクロストレックの受注台数は、全体の64%をSHEVが占めたという。
装備が近いMHEVの「リミテッド」と「プレミアムS:HEV」の価格差は38万5000円、より高度な安全運転支援機能「アイサイトX」を追加した「プレミアムS:HEV EX」では60万5000円差になるが、注文されたe:HEV全体では、92%がEX仕様だ。今回のSHEV仕様では、燃費が約2割増しの18.9㎞/L(WLTC)とした上に、燃料タンクの容量も約3割増やすことで、MHEVと比べ、満タン時の航続距離が約5割増しとなった。
スバルでは、SHEVをパワートレインの柱のひとつと据えており、今後の車種拡大が期待される。世間では、ミッドサイズSUV「フォレスター」への搭載を期待するだろうが、個人的には、大人の味付けのレイバックにSHEVが組み合わされると嬉しいと思った。もちろん、将来の商品展開は明かされていないので、今は朗報を待つのみだ。
SPECIFICATIONS
スバル クロストレック Premium S:HEV EX|Subaru Crosstrek S:HEV EX
ボディサイズ:全長4480×全幅1800×全高1575mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1660kg
駆動方式:AWD
エンジン:2.5リッター水平対向4気筒
エンジン最高出力:118kW(160PS)/5600rpm
エンジン最大トルク:209Nm(21.3kgm)/4000-4400rpm
モーター最高出力:88kW(119.6PS)
モーター最大トルク:270Nm(27.5kgm)
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
燃費:18.9km/L(WLTCモード)
価格:405万3500円(税込)
スバル レヴォーグ レイバック Limited EX|Subaru Levorg Layback Limited EX
ボディサイズ:全長4770×全幅1820×全高1570mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1600kg
駆動方式:AWD
エンジン:1.8リッター水平対向4気筒
最高出力:130kW(177PS)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm(30.6kgm)/1600-3600rpm
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
燃費:13.6km/L(WLTCモード)
価格:399万3000円(税込)