還暦を過ぎた「関門トンネル」の未来は? 老朽化に加え、増え続ける修繕費・人件費にどう立ち向かうか。【道路のニュース】
NEXCO西日本は2024年(令和6年)12月27日、「第1回 関門トンネルにおける今後の維持管理・修繕に関する検討委員会」の開催結果を発表した。1958年(昭和33年)の開通から67年を迎える関門トンネル。その未来はいかに?
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関門トンネルは重要な生活道路として活躍
「関門トンネル」は山口県下関市と福岡県北九州市をつなぐ全長3925mの海底トンネルだ。二重構造となっており、上部は有料の車道(国道2号)、下部は無料の人道となっている。
関門海峡を横断する海底トンネルの計画は戦前に立ち上がり、1939年(昭和14年)に着工。一時は戦争で工事を中断したものの1952年(昭和27年)に再開し、1958年(昭和33年)に開通した。
1973年(昭和48年)には関門橋(高速道路)も開通。関門海峡を横断する道路は二本立てに強化された。以降、関門トンネルは通勤や通学などの近距離交通、関門橋は山口県と福岡県以外を発着地とする長距離交通を担うとともに、交通事故や災害時などにはそれぞれ代替路として機能してきた。
開通からもうすぐ67年を迎える関門トンネル。NEXCO西日本は2024年(令和6年)12月25日、老朽化、そして増え続ける修繕費や人件費を踏まえ、「第1回 関門トンネルにおける今後の維持管理・修繕に関する検討委員会」を開催。具体的な検討の前段階として、関門トンネルの利用状況や施設・設備の現況を確認した。
まずは現在の関門海峡の利用状況をみてみよう。
【関門トンネルの交通量】
関門トンネルの交通量は2023年度(令和5年)で約2万5200台/日。2003年度(平成15年度)の3万5600台/日をピークに少しずつ減少した。一方、関門橋の交通量は1996年度(平成8年度)頃からコロナ禍を除いて高い水準を維持。なお、関門海峡の交通量そのものに大きな変化はない。
【関門トンネルの交通渋滞】
続けて関門トンネルの渋滞をみてみる。主な発生原因は、料金所がそのボトルネックとなっているようだ。理由のひとつとして、ETCに対応していないため、料金収受に時間を要する傾向にあることがあげられる。また、門司料金所の周辺には信号交差点が複数あることも、原因のひとつとして考えられる。
【関門トンネルの交通事故】
関門トンネルでの事故発生も少なくない。トンネル内の道路は2車線の対面通行であることから、対向車と衝突する飛び出し事故の発生率が非常に高く、その割合はおよそ85%(2019~2023年度)におよぶ。
【関門トンネルの通行止め】
また、関門トンネルで落下物や故障車に対応する際は、片側1車線のため通行止めにせざるを得ない。2023年度(令和5年度)の通行止めは130回。そのうち、落下物・故障車による通行止めは約95%にものぼる。
続いて、関門トンネルの施設や設備の現況についてみていこう。
関門トンネルの老朽化対策はどうする?
開通からもうすぐ67年を迎える関門トンネルは、これまでにも老朽化対策として大規模なリフレッシュ工事を度々実施してきた。2009(平成21年)度~2010年(平成22年)度には床板取換工事(通行止めは2009年度に109日間、2010年度に108日間)を、2014年度(平成26年度)には天井版更新工事(通行止めは60日間)を行っている。
12月に開催された検討委員会では、必要な維持・修繕などを実施しているものの、老朽化は進行しており、さらなる修繕や更新も必要であるという指摘があった。また、換気塔や料金所など、開通時に建てられた築年数の古い施設の耐久化工事も必要、という声も上がった。
現在の損傷状況や今後必要な事業内容の詳細は次回委員会で確認するとしている。建設資材費の高騰や労務費の上昇で修繕費・人件費も増えていることを踏まえながら、走行機能の維持だけではなく、地域への貢献や渋滞解消などについても検討していくべきだと話をまとめた。
関門トンネルを改修する一方で、関門海峡第三の横断道路となる「下関北九州道路」計画の動向にも注目したい。これは、下関市の彦島と北九州市の小倉を橋梁で結び、下関市の中心部と北九州市の中心部を往来できるようにするというもの。現在、都市計画決定の最中だ。
本州と九州の交通を支える関門トンネル。現在は関門トンネルの老朽化対策を迫られているが、近い将来、関門橋も同じ問題に直面することは想像するに難くない。関門橋の老朽化対策と下関北九州道路の計画を同時に進めることで、より盤石な関門海峡の交通を維持していけるのではないだろうか。
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