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最終更新日:2024.07.26 公開日:2024.07.29

クルマは本当に高くなったのか? 現在・10年・20年前を比較してわかった妥当な価格設定の理由。【クルマの経済学】

最近、クルマの価格が高くなったという話をよく耳にするが、果たして本当なのだろうか。そこで、クルマの価格について、2024年、2014年、2004年を比較して、検証するすることにした。消費税の変化や新技術の導入などの変化もあるが、意外にも妥当な価格設定だということがみえてきた。

文=山崎 明

トヨタのヤリスもホンダのフィットも高くなった……と思いきや?

クルマの価格は高くなっているのは本当か?(画像:(c) shironagasukujira - stock.adobe.com)

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最近、クルマの価格が高くなったと嘆く話を良く耳にするようになった。確かにNDロードスター(4代目)を購入した時、以前NBロードスターを買った時よりかなり多く支払ったし、ちょっと前まではベーシックカーであれば100万円台前半で買えたような記憶がある。

果たして本当にクルマは高くなっているのか、冷静に検証してみた。比較したのは現在(2024年)と10年前の2014年、20年前の2004年である。

この20年の間には消費税の変化がある。現在消費税は10%だが、10年前の2014年は消費税が8%に上がった年だった。20年前の2004年は5%だったのだ。価格は税込みなので、その分が高くなるのは仕方がない。

消費税の推移。この30数年間で10%まで引き上げられた。

まずはベーシックカーから見てみよう。トヨタのベーシックカー、ヤリスを見てみる。ヤリスの前身はヴィッツである。車にはグレードがあるのでどのグレードで比較するのが適当か迷ったが、2004年のヴィッツ1300Uというグレードを基準にしてみた。

2004年当時の価格は132.3万円である。確かに100万円台前半で、私の記憶通りである。それが10年後の2014年には同グレードが155万3143円となった。数字が細かいのは消費税がこの年に上がったためである。約23万円の差だがそのうち消費税分が4.3万円くらいなので実質的な差は18.7万円くらいだ。装備の差はVSCとトラクションコントロールくらいだが、エンジンの出力が87馬力から99馬力と高まっている。まあ妥当な値上げと考えて良いだろう。

それでは現在のヤリスはどうか。ヤリスには1300ccモデルはないので、1.5Xというモデルを選んでみた。価格は165.5万円である。10年前より10万円ほど高くなっているが消費税の増税もあるし排気量1500cc、120馬力のエンジンを搭載しているのでまずまず納得できる価格差だろう。

しかし装備表を見て驚愕することとなる。まず10年前はオプション装備だったサイドエアバッグ・カーテンシールドエアバッグが標準装備となっている。10年前にはオプションでも選べなかったトヨタセーフティセンス(自動ブレーキをはじめとした予防安全装備)の歩行者・自転車の昼夜検知機能付きのものが標準搭載されている。さらにレーダークルーズコントロールやレーントレーシングアシスト(車線の中央を維持するようにステアリングをアシストしてくれる装置)、オートマチックハイビーム、ロードサインアシスト(交通標識を読み取り、制限速度等をインパネに表示してくれるシステム)も標準装備。さらに、マイカーサーチやヘルプネット機能を備えたT-Connectエントリーもついている。

たった10万円の差でエンジン向上分に加えこれだけの装備が加わっているのである。これは値上げどころか大バーゲンといって良いだろう。

ホンダ・フィットでも状況は似たようなものだ。2014年のフィット15Xと現在のフィットBASICを比較すると価格は165万円前後で変わらないにもかかわらず、自動ブレーキやアダプティブクルーズコントロール、車線維持支援システム、パーキングセンサー、サイド&カーテンシールドエアバッグなどが標準装備となっている。圧倒的にお買い得になっていると考えて良いだろう。

もっとも、上位グレードの価格は上方にかなり伸びている。ヤリス・ハイブリッドの最上位グレードにオプションの最新装備を加えると300万円近くになる。性能や装備内容を考えるとそれでも十分安いのだが、10年前のヴィッツは最上位モデルでも200万円以下だったことを考えるベーシックカーで300万というととても高く感じてしまうことが「車が高くなっている」と言われるようになった要因なのだろう。

マツダ・ロードスターも高くなっているが……納得の価格という説

若者にも人気の高いマツダのロードスター。価格自体は値上げされている。(写真:マツダ)

次にスポーツカー、私も愛用するマツダ・ロードスターを見てみよう。私が最初に購入したのはNB型の後期のRSグレード、現在愛用しているのはND型のRSグレードなので、RSグレードで比較してみたい。2004年のRSグレード(NB型)は246.75万円、2014年のRSグレード(NC型)は270万円、現在(ND型)のRSグレードはなんと367.95万円である。なんと10年前より約100万円高くなっている。

エンジンを見ると2004年は1800ccで160馬力、2014年は2000ccで170馬力なのに対し現在のモデルは1500ccで136馬力なのだ。これだけ見ると性能が大幅ダウンしているにもかかわらず高くなっていることになる。しかしND型ロードスターはNC型より圧倒的に売れているのだ。装備を見てみると、先進の安全装備やインフォテイメントシステムが標準となっており、それだけでかなりの価格差が説明できる。

しかし一番重要なのは、ND型はライトウェイトスポーツとしての理想を追求し、これだけ装備を満載しながら車重を1040kg(RSグレードの場合)に抑えていることだ。NC型は1120kg、NB型でも1080kgもあったのだ。そのためにアルミ製のパーツをたくさん使ったりしてコストをかけている。また内装の質感も圧倒的に異なり、ND型の上位グレードであればやや大げさに言えばポルシェから乗り換えてもそれほど違和感はない(私がまさにそうだったのだ)。つまりND型ロードスターは価格に見合う価値を持ったモデルに成長しているのである。だから高くても皆納得して買っているのだ。

アルファードもロードスターと同じようなことが言えるだろう。10年前、アルファードは308.6万円から買えたのだが、最新のアルファードはもっとも安いモデルが540万円なのだ。しかし最も安いモデルでもその装備や質感は10年前の500万円超のモデルを凌駕するもので、廉価グレードを思い切って廃した結果なのである。それゆえ確かに下限価格は大幅に高くなっているが、売れ行きは絶好調、中古車市場ではプレミアム価格がつくほどの人気なのである。

輸入車の値上がりは為替が影響か

輸入車は為替の影響が大きい。最近のBMWも例外ではない。(写真:BMW)

それでは輸入車はどうだろう。BMW 320i M Sportというグレードで比較してみよう。2004年の価格は491万円、2014年は522万円、現在は686万円である。ずいぶん高くなっている感じがするが、輸入車の場合為替の影響も考慮する必要がある。1ユーロは2004年の平均で約134.5円、2014年は約142.3円、現在(2024年7月10日現在)は約174.7円である。

この為替の変動だけを考慮し、2004年の491万円を基準とした価格を計算すると2014年で約520万円、2024年は638万円になる。2004年(E46型最終年)と2014年(F30型)を比べるとボディサイズ、パフォーマンス、装備とも大きく向上しているので、為替を差し引いて考えるとコストパフォーマンスは大きく向上していると言えるだろう。2024年(G20型)は為替の影響以上に高価になっているが、F30型よりさらに向上した装備やボディサイズを考えると納得できる範囲ではある。

しかし為替の影響は大きく、輸入車は手を出しにくくなったと言わざるを得ない。なにしろ為替だけで30%ほどアップしているのだから。車両本体だけでなくパーツも高くなっているので、維持費にも影響があるはずだ。

この30数年間、為替(ユーロ)は上がり続けており、輸入車の価格にも影響を及ぼしている。(画像:三菱UFJ銀行 外国為替相場チャート表を元に作成)

日本車に限っていえば、クルマが高くなったように見えるのは今までなかったような技術が次々と登場し、それらを多く装備する上位グレードの価格が上方に伸びて、同じモデルであっても価格レンジが広まっているという見かけ上の印象からくるものだといえる。安全装備など、重要な装備まで省いて見かけだけ安くしたグレードもほとんどなくなって下限価格が上がっていることもその印象を強めているかもしれない。

総合的に見ると、確かに表面的には価格は上がっているものの、装備や質感、車としての仕上がりを考えれば10年前、20年前に比べかなりリーズナブルになっていると言えるだろう。

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