クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2024.01.26 公開日:2024.01.26

太陽光だけで走る軽EVを発見!「曲がる太陽電池」はEV普及の架け橋となるか

相模原市に拠点を構えるPXP社は、1月24~26日に東京ビッグサイトで開催されたクルマの先端技術展「第16回 オートモーティブワールド」にて、曲がる太陽電池を搭載し、太陽光だけで走るという軽EVを出展した。

文と写真=岩井リョースケ(KURU KURA)

曲がる太陽電池を搭載した軽EV。ルーフ上に曲がる太陽電池が貼られているが、違和感はない。

記事の画像ギャラリーを見る

PXP社の「曲がる太陽電池」とは

オートモーティブワールドは、カーボンニュートラル、自動運転、電動化、コネクテッドカーなどをテーマとしたBtoB向けの最新技術が集まる、世界最大級のクルマの技術展示会だ。第16回の開催を迎えた今回の開催では1650社が製品や技術を出展し、初日から非常に多くの来場者で溢れかえっていた。

今回は同イベントのEV・HV・FCV技術エリアで、ひと際注目を集めていた、株式会社PXPの「曲がる太陽電池」について紹介しようと思う。

まず、PXP社は次世代太陽電池を生み出して世界に挑戦しているグリーンテック開発のスタートアップ企業だ。従来の分厚い太陽電池よりも圧倒的に薄く、柔軟性に優れた「ペロブスカイト太陽電池」は、折り曲げられる次世代電池として注目を集めているが、同社が開発した曲がる太陽電池も1㎡あたり0.9kgと軽量で、厚さも0.6mmしかなく、強化ガラスを使っていないため割れる心配もない。

フレキシブルソーラーパネルはガラスではなく金属箔基板のため、衝撃や振動にも強い

曲がる太陽電池を軽EVに貼るとどうなる?

このような特性を持つ曲がる太陽電池を装着したのが、太陽光のみで走行が可能な、この軽EVだ。

軽EVのルーフには、極薄の金属箔基板に作製した厚さ0.7mmの曲がる太陽電池が332枚貼り付けられており、2.0㎡という狭い面積でも太陽光の発電のみで1日16kmの走行が可能だという。今回展示されていた車両は、太陽光の変換率18%の曲がる太陽電池を搭載した状態だが、これを同社が開発しているさらに高性能な曲がる太陽電池※に換えて変換効率を28%に増やせば、1日37kmも走行可能になるという。もちろん、より広いルーフ面積を持つクルマなら、航続距離はさらに伸びることになる。

※タンデム太陽電池のこと。紫外光~赤い光で良く発電する「ペロブスカイト太陽電池」と、赤い光~赤外光で良く発電する「カルコパイライト太陽電池」を重ねた太陽電池。一方の太陽電池のみよりも幅広い波長の光を無駄なく電気に変換することが可能。

近くで見ると、セル(マス目)がタイルのように並んで貼られているのが分かる。意識して見なければ、なかなか気が付かなそうだ。

ペロブスカイト/カルコパイライトタンデム太陽電池と 全固体電池を一体化したセル構造の概略図。画像=PXP

この曲がる太陽電池はデザイン性にも優れている。従来の標準セル(マス目や小集団などの意)は、黒い太陽電池の表面に白い縦線状の電極が形成されているため、いかにも太陽電池という見た目だったが、こちらも同社の新技術により電極が見えない漆黒の「高意匠セル」を開発。これにより、クルマのデザインを損なわずに太陽電池を搭載できるようになっている。

写真左から、標準セルと、高意匠セル。

価格的にも高い競争力を持つ曲がる太陽電池は、経済的にも導入メリットが大きく、EV普及を加速させるキーテクノロジーとしても期待されている。

PXPでは今後、カルコパイライト太陽電池を用いて本格的に軽EVでの実発電量データを取得していくとともに、EV、HV、PHVや航空機、災害時の非常用電源やポータブル電源をはじめ、さまざまな応用分野のパートナーと商品化を進めていく予定だ。

■曲がる太陽電池搭載EV 諸元
出力:360W
1日あたりの発電量:16km
※前提条件
東京の平均日射量:4.1kWh/㎡/日
水平設置効率:90%
システム効率:95%
EV電費:12.5km/kWh

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(12月1日まで)
応募はこちら!(12月1日まで)