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最終更新日:2023.10.31 公開日:2023.10.30

月面探査車用タイヤはすべて金属製? その理由がスゴかった!【ジャパンモビリティショー2023】

ブリヂストンはジャパンモビリティショー2023で、「月面探査車用タイヤ」を展示。地上とはまるで条件が異なる月面を走るためのタイヤは、既存のタイヤとは何が違うのだろうか?

文・写真=岩井リョースケ(KURU KURA)

ブリヂストンの月面探査車用タイヤ・プロトタイプ

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月面探査車用タイヤとは?

ブリヂストンは、2019年4月にJAXA、トヨタと共に国際宇宙調査ミッションに挑戦することを発表。このミッションのひとつに、「月面での有人探査活動」があり、JAXAとトヨタが開発を進める有人与圧ローバー(通称:ルナクルーザー)での調査を予定している。そして、このルナクルーザーが履くタイヤが、ブリヂストンが開発中の「月面探査車用タイヤ」である。

月面は地球の6分の1の重力、マイナス170~120℃の温度、さらに真空や放射線、地表は月の砂(レゴリス)に覆われた非常に厳しい環境であるため、地上に適したタイヤでは長期での運用は困難だと考えられている。そこで、ブリヂストンは月面での接地に適したタイヤ開発を進めた結果、まったく新しいタイヤが誕生した。

ゴム製じゃない! オール金属製タイヤが誕生!

気温の高低差が激しく、宇宙線(高エネルギーの放射線)が降り注ぐ環境下では、ゴムは長期使用には耐えられず、壊れてしまう可能性が高い。それに加え、宇宙空間では空気を使用することも難しい。

素材の問題以外にも、月では重力の影響で縦方向は軽くなるが、慣性力は変わらないため、もしも月面の凹凸にぶつかってしまうと、衝撃がそのままタイヤに伝わり、車両が転倒したり、あらぬ方向に飛び出す可能性もある。

また、いくら月の重力が小さいと言っても、ルナクルーザーは車内に空気を満たすために重たい生命維持装置を搭載しているため、マイクロバス1台分ほどの重量になってしまう。月面でこれほどの重量を支えながら長期間移動するという前例はなかったそうだ。

そして、これらの条件をクリアするためにブリヂストンが考えた結論が「すべて金属でできたタイヤにする」である。

■ふわふわした金属製タイヤ
このオール金属製の月面探査車用タイヤの特徴は、金属でありながら軽量、それでいて、月面に適したクッション性を持っていることだ。

タイヤの表面をよく見ると、金属なのに柔らかそうな印象を受けるが、実際にふわふわしているそうだ。これは砂漠で荷物を運ぶラクダのふっくらとした足裏(肉球)からヒントを得たもので、スチールウールのような柔軟な性質を再現したものだ。

■ダブルタイヤとタイヤの溝の秘密
月面は細かな砂地で覆われており、接地面圧が高いとタイヤが砂に埋まり、動けなくなってしまう。そこで、大型トラックのように2本のタイヤを1つのホイールにまとめた「ダブルタイヤ構造」を採用し、接地面積を大きくした。これにより、一般乗用車の約6倍もの接地面積を確保して圧力を分散。タイヤ表面の溝は、舞い上がる砂埃を抑える効果や、砂地に対するグリップ力に配慮した結果だという。

車両本体の開発は2024年から。タイヤの走行テストも進行中!

月面での有人探査活動においては、2機のローバーを2029年に打ち上げ、2030年以降に宇宙飛行士による月面5か所の探査を実施予定となっている。現在、ブリヂストンはこのタイヤをテスト車両に装着し、鳥取砂丘などの砂地や、不整備地、斜面での走行テストを行っている最中だ。

今回のモビリティショーではルナクルーザーのデザインが刷新され、ますます注目を集めているが、それを支える月面探査車用タイヤという存在にも、ぜひ注目してもらいたい。

有人与圧ローバー開発・発表時の姿。ルナクルーザーは燃料電池と自動運転技術を用いた月面探査用モビリティという位置づけで、“月面から必ず生きて帰る”というコンセプトを持つ。画像=トヨタ

今回のモビリティショー2023会場で展示された、新デザインとなったルナクルーザーの模型。

ルナクルーザー模型の後姿。

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