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最終更新日:2023.01.20 公開日:2023.01.20

オートサロン2023で夢を見つけた

341社が参加し789台のカスタムカーが集結した東京オートサロン2023で、くるくら編集部が出会い「夢」を感じた車両を紹介。

文・写真=くるくら編集部

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カスタムカーの祭典で夢を見つけた!

 11215日の3日間にかけて幕張メッセで開催された「東京オートサロン2023」では、昨年より5万人以上も参加者が増えて、ようやく活気が戻ってきた印象だ。

 今年は341社から789台もの車両が集結し、大手車メーカー、カスタム・パーツメーカー、自動車学校を問わず、とても尖ったコンセプトを持つカスタムカーが多数出展されていた。その中でも、ひと際異彩を放ち、出展者の「夢」を感じた車両をいくつか紹介しよう。

実物大ミニ四駆は少年の夢

 横浜ゴムのブースでは、ヨコハマタイヤのオリジナルブランド「ADVAN」とコラボしたミニ四駆モデル「エアロアバンテ」の、ミニ四駆と実車がそれぞれ出展されていた。

 エアロアバンテは、2015年にタミヤがミニ四駆誕生30周年を記念して、「1/1ミニ四駆実車化プロジェクト」で実働車両として過去に制作されている。元は青と白を組み合わせたカラーリングだが、赤と黒をイメージカラーとしているADVANとコラボしたことで、このような姿になった。

 まるでフォーミュラーカーのようなボディと、バンパー・ベアリングローラーの組み合わせがいかにもミニ四駆らしくてたまらない。実車にはADVANのフラッグシップタイヤ「ADVAN Sport V107」が装着されている。

 また、会場では実際にミニ四駆の「ADVAN エアロアバンテ リミテッド」が2,500円で販売されており、多くの来場者が購入していた。公式サイトでも既に完売しているようだ。

子育てを終える夫婦が夢見る一台

 日産が提案するROOX(ルークス)のカスタムモデルは、左ドアがガルウイングで、車両の後部にはミニトレーラーを接続した斬新な姿をしていた。そして、このミニトレーラーに積まれていたのはなんと、電子ピアノ。これはどのようなシーンを想定しているのだろうか?

 ブースの背景パネルにはワイナリーがある高原と教会が写っている。パンフレットから引用すると、「たとえば、父から娘へのサプライズ。日ごろ弾き慣れたピアノを搭載しウェディング会場へ。特別な想いを込めた演奏は、家族の新たな門出を祝福する何よりの贈り物。そんな至高の時間を演出する一台です。」とある。

 担当者に確認してみたところ、子育てを終えた夫婦は、家族用として乗っていた大きな車からダウンサイジングをしてルークスを選択。さらに、本来は4人乗りのルークスを2人乗りにカスタマイズして、白で統一したラグジュアリーな空間で、ふたりだけの贅沢な時間を過ごす、ということらしい。強いこだわりを感じるコンセプトだが、1~2人用の小型モビリティへの注目が高まりつつある中、優雅な2人乗りという考え方も、ひとつの答えなのかもしれない。

プロ用の秘密基地に憧れる!

 同じく日産より、様々な現場でプロの活躍をサポートし、基地の機能を備えたコンセプトカーとして、CARAVAN(キャラバン)をカスタムした「Powered Base for PRO」が展示されていた。具体的な機能として、ポータブル電源を4つ搭載することで、エンジンが停止していても電動工具やPC、空調などの電子機器の稼働電力を賄えることや、収納面では可動式の道具棚と床が備わっている。ポータブル電源は、電気自動車用として使うには劣化したものでも、電子機器用としてなら再利用できるというエコな考えから、日産リーフに使用されていたバッテリーを採用。

 そして、このモデルに乗るプロとは「個人事業を営む電気工事士」という、非常にマニアックな設定となっている。

 テールゲートを開けると、左右にある可動式の道具棚を手前に引き出すことができる。左側には電動工具のバッテリーが並べられており、これらの充電もポータブルバッテリーから行うことが想定されている。中央の床もスライド式で手前に引き出すことができ、床下は脚立が収納されていた。

 工具棚の右側には作業着やヘルメット、電動工具などの装備品が並べられている。機能的にも見た目にも美しい収納だ。

 後部座席には秘密基地のようなデスクスペースが設けられている。スポット冷却と除菌効果を持つ空調システムや、PC、電子レンジ、給湯機などが置かれ、これらはポータブル電源で稼働させることができる。仕事は自宅に持ち帰らずに、現場で終わらせたい人に向いていそうだ。

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全長6.6mのアルファードを紹介!

自由な発想が魅力の学生作品

 「アメリカのビルダーが日本のファミリーカーをカスタムするとどうなるか」をコンセプトに、日本自動車大学校(NATS)の生徒がトヨタのアルファードを改造。その結果、全長が6.6mにも及ぶピックアップトラックが完成し、来場者から注目を集めていた。アルファードをベース車両に選んだ理由は、日本で馴染みのある車であることと、意外性を狙ったとのことだ。

 トヨタ ハイラックスのパーツなどで組んだというピックアップ部。この荷台にはバイクの搭載を想定しているそうだ。

 本来はスライドドアのアルファードだが、車両の後部を大胆にカット。観音開きのドアにカスタムする際に、かなり苦労したという。この車両は公認取得のために申請をし、公道を走行させる予定だ。この車を見たアメリカ人ビルダーがどう反応するのか、ぜひ感想を聞いてみたい。

かつての夢が甦る!?

 レトロ車を愛する人にとって悩ましい問題は、パーツが損傷した際に、同じパーツの入手が困難であることだ。もし幸運にもパーツを入手できたとしても、廃版であればパーツの経年劣化は覚悟しなければならず、かと言って、一点モノでゼロからパーツを作ろうとすれば、途轍もない費用が発生するだろう。そのパーツが複雑な造形をしているエンジンまわりだったとしたら、なおさらだ。

 通信事業のNTTグループが2020年に新しく設立した会社「NTTデータ ザムテクノロジーズ(XAM)」からは、金属3Dプリンタで造形したパーツを使って希少車を次世代に繋ぐという提案で、ホンダの「CR110カブレーシング」が展示されていた。この展示モデルではエンジンのシリンダー部分を金属3Dプリンターで出力して組み込んでおり、なんと、強度や耐久性は純正品と同等以上になるそうだ。

 XAMでの製作例として、柴田自動車のドリフトカーに使用される集合管の設計・造形などが展示されていた。また、JAXAのH3ロケットの開発においても、この3Dプリンター技術はキーテクノロジーとして利用されているそうだ。

 こちらがホンダ CR110カブレーシング用エンジンのシリンダー部分で、金属の粉末をレーザーで一層ずつ溶融して積層造形している。小さな孔がある部分は出力時のサポート材で、本来は成型後に落とすもの。

 廃版パーツもデジタルデータ化すれば、動態保存できる品質でパーツ製造が可能というのは夢がある話だ。

自由度の高さに夢が膨らむ!

 東京に本拠地を構えるHWエレクトロ(HWE)は、2019年に設立し、自社工場は持たず、ファブレス(製造委託)によって車両を生産する商用EVメーカーだ。そんなHWEからは、ELEMO(エレモ)シリーズより、新型となるエレモL(写真)が出展。

 エレモLのサイズはおよそ全長5.4m×全幅1.8m×高さ2.0mもあり、シリーズ最大の容量を持っている。このクラスの商用EV車は日本でもまだまだ希少な存在だ。シンプルで圧力を感じない外観は洗練されている印象で、カスタマイズも自由自在とのこと。

 テールゲートは両開き式。エンジンまわりがなく、シンプルな内装は自由度が高い。右奥に配置してあるドアは上下に開閉する。

 全幅約1.3m、全高約1.9mという縦長フォルムで、狭い路地裏でもスイスイ進めるデザインの「エレモ」。バリエーションには積載部が長いタイプのエレモと、短いタイプのエレモKが存在する。このモデルもエレモLと同様に、北米のCENNTRO社の車両が元になっている。

 写真では移動販売を意識したボックスカーゴを荷台に積んでいるが、他にも軽トラックのようなピックアップや、カスタム用にシンプルな平台を装備するなど、アイデア次第で様々な仕様に変更することが可能。積載量も400~650kgと軽トラック(最大積載量350kg)を凌いでおり、頼もしい限りだ。

 日本が誇る世界最大のカスタムカーイベントは盛況の内に幕を閉じた。来年もまた無事に開催されることを、ファンの一人として願っている。

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