『イタリア発 大矢アキオの今日もクルマでアンディアーモ!』第33回 旅の相棒はイモムシ! イタリアのキャンピングカー・ショー<後編>
キャンピングカーがいまヨーロッパでも大人気!? 人気コラムニスト、大矢アキオがヨーロッパのクルマ事情についてアレコレ語る人気連載。第33回は、イタリアのキャンピングカー・ショーの会場から最新トレンドをお届けする。今回はその後編。
生ハムから巨大テントまで
前回に続き、ヨーロッパ屈指のキャンピングカー専門ショーであるイタリア「第13回イル・サローネ・デル・キャンパー」の模様を動画付きでお伝えする。
イベントには毎回、キャンピングカー専用駐車場が設けられる。そのため多くのファンが自分のクルマでやってきて、泊りがけでイベントを楽しんでいる。駐車場は24時間開放される。
開催都市であるパルマは、生ハム「プロシュート・ディ・パルマ」や、イタリアを代表するチーズのひとつ「パルミジャーノ・レッジャーノ」の産地として有名である。実際、それらの販売コーナーが会場内の一角に毎年設けられて賑わう。
前回はバンコン/キャブコン型キャンピングカーを中心に紹介したが、今回はそれ以外のさまざまな出展者を紹介してゆこう。
今や明らかに少数派となったトレーラー式キャンピングカーも、目的の明確性と小型化によって市場を開拓しようとしている。好例がフランスのチャレンジャー社による「ミニ・レーシング300」である。主な用途を二輪車ファンのベース機能に絞りつつ、シンク、トイレ、2人分のベッドを備えている。
にもかかわらず牽引装置も含む全長は4.42メートルと短く、全高も1.92メートル(テント式ルーフ拡張時2.33メートル)と低い。これなら普段の置き場所にも困らない。価格も25,560ユーロ(約376万円)からと、小型車ほぼ1台分の設定だ。「いきなりキャブコンはちょっと」というユーザーに、もってこいの入門用プロダクトだろう。
用品の部にも興味深いものが少なくない。たとえば後付けのエア・サスペンションである。トリノに本拠を置く「ESIイタリア」のルカ氏によれば、市販キャンピングカーのサスペンションは「スタビリティの面で、安全性が確保できるぎりぎりのスペックで販売されている場合が多い」という。
そこで、エアサスの出番となる。価格の目安は後2輪で500ユーロ(7万4千円)だ。面白いことに、同社は、救急車にも多数の納入実績があると胸を張る。たしかにキャンピングカー以上に、高速度でコーナーに突っ込む頻度が高いのだから、説得力がある。
イタリア式ルームテントのコーナーも壮観だ。主なユーザーは、4月から9月といったようにキャンプ場の一区画を季節契約するキャンパーたちである。筆者の知人もそのひとりで、夏の間は自宅から100キロメートル離れたキャンプ場に毎週通い、ルームテントで過ごしている。限りなく別荘感覚である。建造物との線引きはどうするのか? という疑問がわく。
そこであるメーカーのスタッフに聞いたところ、固定資産税の対象にされない条件として、「キャンピングカーに隣接する形で設置する」必要があるのだという。
自然派ジャーナリストの挑戦
ドイツのキャンピングカー専門ブランド「マリブ」のブースでのことである。車両の説明スタッフかと思って声をかけた人物は、実はまったく違う分野のプロフェッショナルだった。ローマ在住のジャーナリスト、サルヴァトーレ・マリオッツィ氏である。長年旅やアウトドアを専門とし、テレビでも活躍する彼のプロフィールには、ライオンや象と並んで歩く写真が並ぶ。
今回彼は、マリブ社およびアドヴェンチャー系を得意とする旅行会社「トト・トラベル」の協力を取り付けたという。何をするのかといえば、「20日間で極地を、たった20日間でめぐる旅に出るんです」と説明する。極地とは、ヨーロッパの最東端、最西端、最南端、最北端、最高標高地点、欧州連合(EU)の地理的中央、人工の最低海抜地点、自然による最低海抜地点の8ヵ所だ。
筆者が「同伴者は?」と聞くと、サルヴァトーレ氏は「これですよ」と言って、手のひらの上のプラスチック容器を差し出した。なんと、チョウの幼虫を入れて旅立ち、旅程中に羽化を進め、旅の終わりに自然へと放つ計画だという。その結果は、動画をご覧いただこう。
かくも、ニューモデルやハイテクだけがショーではないことを、このキャンピングカー専門イベントは私たちに教えてくれるのである。