外環道・中央JCTの工事現場を取材! 圧巻のシールドマシンの掘削工程
首都圏三環状のひとつ、外環道の中央JCTでは、本工事が進められない間もHランプシールドの掘削工事が完了していた旨を知り、取材に向かった。広大な敷地を進み、深さ35mの立坑を降りた先には、滅多に見られないシールドマシンの姿を間近で確認することができた。約410mの掘削に半年の工程を要する、Hランプの途方もない工事内容を紹介したい。
外環道中央JCT取材の背景
今、首都圏では都心を中心として、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東京外かく環状道路(外環道)、首都高速中央環状線(中央環状線)の3つの環状線の整備が進められている。これを”首都圏三環状”と呼ぶ。
この路線の整備目的は、都心から放射状に延びた各高速道路を横断的に相互接続することで、都心部への不要な交通量を減らすことにある。すでに中央環状線は全線が、圏央道も9割の約270kmが開通して、その効果を私自身も実感しているところだ。
残る外環道は、都心から約15kmの東京23区の外側を周回する高規格道路で、周回しても距離がそれほど長くないことから使い勝手の良い環状線と言えるだろう。しかし、この外環道の工事が思うように進んでいない。その理由は工事を進めるに当たって想定外のアクシデントが発生してしまったからだ。
詳しくは別レポート(https://kurukura.jp/car-life/20221101-30.html)でも報告しているが、要は東京都調布市内で進めていたシールドマシンによる工事の最中に、地表面に陥没箇所を発生させてしまったことに起因する。現在、この区間の本工事再開は見込めない状態となっているのだ。
そんな矢先、事業用地内にある中央JCTの工事で、2022年10月13日、Hランプシールドの掘削が完了したとの話が伝わってきた。「え、外環道の工事って進んでいるの?」この話を聞いたとき、私もにわかに信じられなかったが、国道事務所に訊ねてみるとそれは事実だった。しかも、その当該場所の取材も許され、この日を迎えたというわけだ。
掘削完了後のHランプが見たい!
では、東京外環の工事はどこまで進んでいるのだろうか。外環道と中央道が接続する中央JCTの場所は世田谷区と三鷹市の境界付近で、東名高速からは北へ7kmほどの地点にある。ここでは甲州街道(国道20号)と、その北側に並行している東八道路への出入り口が同時に建設される。これにより、外環道と中央道の相互接続が可能となり、一般道からの出入りも実現することになる。
今回、取材が許されたのは、この中央JCT北側にあるHランプシールド工事の現場で、ここは清水・竹中土木特定建設工事共同企業体の手によって工事が進められている。国道事務所の建設監督官の須釜 弘さんは、「すでに用地買収は大半が済んでおり、工事が実現できたのもここを用地として提供してくれた地域住民がいたからこそ」と話し、工事は地元の人たちの理解抜きには成り立たないのだと理解した。
そういった説明を聞きながら、まず訪れたのは工事現場が一望できる見晴台だった。そこに上がって見た光景はとにかく「広い!」の一言。サッカースタジアムでも入るのではないかと思われる広さだ。どのぐらい広いのかを地図上で確認すると、中央道に向かって北から”T字形”に接しており、その範囲は南北に1km、東西に1.2kmほどの敷地となっていた。
この見晴台で工事の概要を説明された後、いよいよHランプの工事現場へと向かう。工事現場というと何となく雑然とした印象を持っていたが、敷地内は想像以上に整理整頓されていて、歩くにもまったく困らない。取材途中でトイレをお借りしたら、シャワートイレとなっていたことにも驚いた。もう昔の工事現場のイメージは完全に払拭されてしまった。ただ、作業は続けられているため、うかつな行動は危険を伴う。国道事務所の担当者からは、指定枠からは絶対にはみ出さないで行動することが呼びかけられた。
地下の工事現場へと続く階段を下り、地下35mのレベルに降り立ち、そこで目にしたのは緩やかにカーブを描き本線へと延びる巨大なトンネルだった。ここは外環道から中央道へ向かうHランプの一部で、計画図を見るとトンネルはそのまま中央道の下をくぐり抜けたところで右カーブとなり、その後は地上に出て中央道下り線に接続する。トンネルの直径は本線の16mよりも細い12mほどで、下から1/3ぐらいのところに路面が作られる。路面下には避難通路となるスペースも設けられる計画だ。
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Hランプで採用されたシールド工法を紹介
1.6mの掘削でトラック40台分!?
ところでトンネルはどうやって作られるのだろうか。工事の基本となるのは、シールドマシンを使う「シールド工法」と呼ばれるものだ。この工法は掘り進めながら同時にトンネルの壁を作っていくことができるのが最大の特徴で、後から土を被せる必要もない便利な方法として多くのトンネル工事で使われており、その高い信頼性がポイントとなる。とはいえ、外環道での工事を進めるに当たっては、陥没事故を発生した轍を踏まないためにも、そのデータに異常がないか慎重に見極めながら進められたという。
工事の手順としては、まずシールドマシンを入れるための穴を垂直に掘り、掘り終わった段階で工事現場に合わせた専用のシールドマシンが投入される。この時、シールドマシンは分割された状態で搬入され、地下で一つひとつ丁寧に組み立てられていく。完成するとシールドマシンは、そのまま横にトンネルを掘り、「セグメント」と呼ばれるリング状のコンクリートの壁を投入しながら、「土を削る」、「土を運び出す」、「前進」、「セグメント組み立て」の4つの作業を繰り返して掘削していくことになる。
国道事務所の説明によれば、シールドマシンの掘削速度は2cm/分ほど。外環道で使われるセグメントは1リングあたり幅1.6mあることから、一つのセグメントを掘削するのにおよそ80分を要する計算となる。Hランプの場合はこのリングを251個組み込んで完成されており、その工期は約半年を要したという。
シールドマシンの巨躯を間近で体感
一方、掘削によって掻き出された土砂は、そのままスクリュー式コンベアに載せられて搬出。一つのセグメントを掘って出土する土砂はトラック約40台分に相当し、専用のコンベアを通って効率よく地上へと搬出される仕組みだ。ちなみに外環道全体で生み出される土砂の量は1000万立方メートル(東京ドーム8個分)にもなるそうだ。
今回の取材では、裏側からではあるが、実際に使われたシールドマシンのすぐそばにまで近づくことができた。そこにはシールドマシンが前進するために使われた複数のジャッキを見ることもできたが、それを支えにシールドマシンのカッターが地中を掘り進む様子を想像すると、そのダイナミックさに鳥肌が立つ思いだった。
外環道の全面開通は、多くのドライバーにとって”悲願”とも言える重要な事業だ。現時点では、そのためにまずHランプの掘進作業が終了したわけだが、それに続いて反対側の中央道から外環道に至るAランプの工事も順調に行われている。さらに一時的にシールドマシンの損傷で中断していた、関越道と接続する大泉JCT側からの工事(南行)も11月1日に再開した。全面開通に至るまでの道のりはまだまだ遠いが、それでも一歩ずつ着実に進展を見せていたことは今回の取材ではっきりした。ドライバーの一人として、外環道の全面開通が早期に実現することを期待したい。