ポイ捨てNG! ドライバーにモラルを問う「東扇島クリーン大作戦」
川崎市にある東扇島では、車からのポイ捨てにより道路上に大量のゴミが散乱しており、清掃を行っても状況の改善があまり見られないという。今年で10回目となる「東扇島クリーン大作戦」を例に、ポイ捨ての現実を再認識しよう。
不名誉な第10回目の開催
スポーツ観戦後にゴミを率先して拾い集める日本人の姿は、世界から称賛を浴びた。そして、それに倣うように美化活動を行う人たちが次々と現れている。そんなトピックスを目にするたび、日本人として誇らしい気持ちになる。
しかし、そんな日本で令和4年となる現在でも、ゴミのポイ捨てに悩まされている地域が数多く存在するのが現実だ。
神奈川県川崎市の臨海部に位置する、東扇島地区で行われている「東扇島クリーン大作戦」を紹介したい。この活動は、東扇島の一部地域でのあまりにも酷い道路へのポイ捨てを防止すべく、毎年300~400名もの有志で美化啓発活動を行っているものだ。第1回目が平成23年から始まり、今年の10月5日の実施で、ついに第10回目の清掃活動を迎えた。
東扇島クリーン大作戦は、行政や関連団体が協力して川崎マリエン、東扇島東公園周辺、国道357号などを中心に、ゴミ拾いと「東扇島からゴミ0(ゼロ)の臨海部へ!!」と書かれた横断幕の掲示を実施するものだ。
誰がゴミを捨てている…?
東扇島は島全体が川崎港の一部で、貨物船の積み荷の運搬や、物流・食品関係の倉庫が多いことから、トラックなどの運搬車両が多く行き交っている。また、千葉・東京・神奈川を跨ぐ湾岸道路や、羽田空港を利用する一般乗用車も走行している。徒歩や自転車はほとんど見かけないことから、ゴミを捨てている人の多くはドライバーということになる。その証拠は監視カメラや目撃情報だけでなく、特殊なゴミの捨て方にもあるようだ。
湾岸線に合流する片側一車線の側道などでは、運転席側からゴミが捨てられているため、進行方向右側にある植栽の中や、ガードレール裏などに隠すように投棄されている場合が多い。さらに、トイレに行けずに用を足した尿が入ったままのペットボトルも投棄物の中には含まれている。これは、一部の長距離ドライバーによるものだ。
車両を停められる場所が少ないことや、コンビニなどの施設からゴミ箱が撤去されたことも、ポイ捨てしてしまう一因であるかも知れないが、「だから捨てる」という選択は間違っている。
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ポイ捨て対策を紹介
対策効果はあるが、根本的改善には至らず
この問題に対し、川崎市や国交省は清掃活動以外にもポイ捨て対策をしており、実際に効果は出ている。例えば、ゴミを捨てられやすい歩道の街路樹や中央分離帯の植樹帯などを撤去して、土系舗装(砂や土を固めた、弾力性や保水性がある舗装)を施したり、植栽をさらに短くすることで、ゴミを隠せる場所を無くすというものだ。そうすることで、その場所に捨てられる確率はかなり下がったようだ。さらに、現在は島内にも監視カメラを多数設置し、不法投棄情報を市が集め、情報を公開、悪質なケースでは通報するよう警告もしている。
しかし、それでも環境改善には至っていない。それは、目立つ場所で捨てられなかったゴミは、別の目立ちにくい場所に捨てられ、既にたくさんのゴミが溜まっている場所では、カメラがあろうがお構いなしにゴミを捨てられてしまうからだ。やはり、最後はドライバー個人のモラルを問い続けるしかない状況だ。
清掃活動を続ける人たち
川崎市や国土交通省が主催し、東扇島や千鳥町地区の監視パトロール隊や、民間企業、ボランティアなど、毎年300名前後の参加者が集まり、ゴミ拾いを行っている。また、地元の小学校と協力して児童が作成した啓発絵画も掲示することで、道路利用者のマナー意識改善を呼びかけている。
クリーン活動を広めよう
同じく川崎市にある殿町夜光線歩道(殿町3丁目~池上町交差点までの約3km)では、民間が主体となって「殿町夜光クリーン大作戦」が毎年12月ころに実施されており、こちらも過去8回もの実績がある。産業道路、大師ジャンクション、浮島、羽田空港に挟まれた地域と言えば、ここでもポイ捨て防止や違法駐車の追放など、長い闘いが続いていることは容易に想像できるだろう。
全国で同じような問題を抱えている地域は、どれほどあるのだろうか? バイパス、臨海部はどこも似たような状況かもしれない。それでも、情報を集め、何度でも啓発し、より有効な対策事例はみんなで広める。直接清掃活動に参加できない人でも、協力できることはたくさんあるハズだ。