自動車盗難件数ランキング2021。ワーストはあのクルマ。
警察庁の発表した犯罪統計資料によると、2021年の自動車盗難件数は5182件。4年連続で1万件を下回った。減少傾向にある自動車盗難だが、依然としてゼロにはならない。日本損害保険協会の自動車盗難の統計から、狙われやすいクルマや盗難場所、時間帯の傾向を見てみよう。
自動車盗難件数は減少傾向
警察庁の発表した犯罪統計資料によると、2021年の自動車盗難の認知件数は5182件。昨年の5210件と比較すると28件と微減。自動車盗難件数のピークだった2003年の6万4223件と比較すると、実に90%以上も減少。4年連続で1万件を下回った。
盗難件数1位はランドクルーザー
一方、一般社団法人日本損害保険協会が集計する第23回自動車盗難事故実態調査(保険金が支払われた自動車盗難の件数調査)も同様の傾向となっている。同調査の結果から、どんな種類のクルマがいつ、どこで盗難被害に遭っているのか、自動車盗難の傾向を紹介しよう。
【実態調査の実施概要】
調査期間:2019年1月1日~2021年12月31日
調査対象:損害保険会社21社(損保協会非会員会社を含む)
対象事案:全国で発生した車両本体の盗難事故および車上ねらい(部品盗難含む)で、調査期間内に保険金の支払いを行った事案
※代車等費用保険金のみ支払った事案なども含む。
※同調査は、保険金請求のあった事件・事故データに基づいたもの。あくまで保険金請求実績に基づくため、保険金請求がされていない事件・事故の件数は含まれない。
【2019年調査】
1位:プリウス 526件
2位:ランドクルーザー 426件
3位:ハイエース 194件
その他:2654件
合計:3800件
【2020年調査】
1位:プリウス 383件
2位:ランドクルーザー 275件
3位:レクサスLX 175件
その他:2131件
合計:2964件
【2021年調査】
1位:ランドクルーザー 331件
2位:プリウス 266件
2位:レクサスLX 156件
その他:1672件
合計:2425件
2021年の調査結果によると、盗難件数の合計は2425件。前年の2964件から539件減少した。
車両本体の盗難件数が最も多かったのはトヨタ・ランドクルーザー(プラドを含む)で331件。2019、2020年と連続でワースト1だったトヨタ・プリウスを抜いて、盗難件数ワーストとなった。
2位は、トヨタ・プリウスで266件。前年の383件から117件減少。3位は、レクサスLXで156件。前年の175件から19件減少した。
レクサスLXの盗難件数は減少しているが、レクサスは車種(LX、LS、RX)別に集計されていることに留意したい。LX単体で見ると175件だが、3車種の盗難件数を合計すると250件もある。
なお、2020年度の調査と比較しても、3位までの顔ぶれに変化はなく、特定の車種に盗難被害が集中していることがわかる。一般的に、トヨタ車は海外でも人気が高く、高値で売買されることが狙われる要因だと考えられている。また、ランドクルーザーなどは悪路走破性が高いこと、レクサスLXやアルファード、ハイエースは人や荷物の大量運搬に適していることから、発展途上国で人気が高いともいわれている。
自動車盗難件数1位は愛知県
次に都道府県ごとの自動車盗難件数(車両保険金支払い件数)を見てみよう。
【都道府県別自動車盗難件数(車両保険金支払い件数)】
1位:愛知県 448件
2位:千葉県 287件
3位:大阪府 283件
4位:埼玉県 225件
5位:茨城県 221件
2021年に盗難件数が最も多かったのは愛知県で448件。愛知県は、2019年は3位、2020年は2位と徐々に順位が上がり、ついに1位となってしまった。
2位は千葉県で287件。昨年から26件減少したものの、他府県の減少幅の方が大きかったため、順位は上がっている。
2019、2020年に1位だった大阪府は、昨年から263件と大きく減少させて3位となった。2019年と比較すると半分以下なので、3位といえども減少幅はかなり大きい。
とはいえ、順位こそ変動しているものの、例年ワースト5までの顔ぶれは変わらない。その5府県を合計すると1464件で全体の約6割を占めることもわかる。これらの地域の共通点は、国際的な貿易拠点となる大きな港があること。自動車を狙う犯罪組織は、盗んだ自動車をすぐに船で運びだせる場所を狙い目と考えているのだろう。
盗難発生は深夜~朝に集中!
次に自動車盗難の発生時間帯を見てみよう。
【自動車盗難の発生時間帯】
- 深夜~朝(22時~翌9時)55.2%
- 日中(9~17時)29.0%
- 夜間(17~22時)8.7%
- 不明 7.1%
2021年の自動車盗難は、約5割が22時~翌9時までの深夜から朝にかけて起こっていることがわかる。どんな犯罪でも言えることだが、暗がりで見つかりにくいことが、犯行には好都合なようだ。また、多くの人が寝ている時間帯なので、長時間の駐車が多いことも盗難が増える理由だろう。
次に自動車盗難被害車両の年式を見てみよう。
【自動車盗難被害車両の年式】
- 2011年以前 46.3%
- 2019年式 8.6%
- 2018年式 7.8%
- 2020年式 7.6%
- 2016年式 7.1%
- その他 10.4%
2021年に自動車盗難被害に遭った車両の年式は、最多が2011年以前で46.3%。次いで2019年式が8.6%。2018年式が7.8%だった。
2011年以前の年式は、複数の年式を合計しているとはいえ、被害車両の約半数となっている。近年の車両は、車両自体にさまざまな盗難対策が施されているため、犯罪組織からすると年式が古い車両ほど盗みやすいと考えられているのだろう。
一方、2016~2020年式と比較的新しい車両の盗難件数もそれぞれ約8%と高い。新型車両は海外などでも人気があるため、高値で転売できると考えられる。そのため、犯行の難易度が高いとしても狙われやすいのだろう。また、新型車両では、リレーアタックやCANインベーダーといった新しい手口によって、電子制御されたドアロックが解除されて盗まれるケースも多発している。
自動車盗難を防ぐためにプラスワンの対策を!
自動車盗難に遭わないために、どのように対策をすれば良いのだろう。愛知県警は、単に車の施錠をするだけでなく、以下のようなプラスワンの対策をとるように呼びかけている。
- ハンドルロック、ブレーキペダルロック、タイヤロックをする
ハンドルやブレーキペダル、タイヤを物理的にロックすることで盗難防止になる。また、視覚的なアピールにもなり、犯人が嫌がるので抑止効果があるという。 - 車載GPS装置を取り付ける
車両純正でGPSが搭載されている車種もあるが、犯人は純正GPSを無効にすることもある。犯人に見つかりにくい場所に別途GPSを取り付けることで、車両の位置情報を確認し、発見することができる。 - ナンバープレート盗難防止ネジを設置する
犯人は、窃盗後にナンバーを付け替えて移動するという。ネジ頭が特殊な形状をしたネジに変更することで、ナンバーの取り外しが難しくなり盗難防止となる。 - カギの管理をする。後付けのイモビライザーなどを装着する。
玄関先や事務所のキーボックスに入れたカギが盗まれ、自動車も盗まれる被害も多く発生しているという。また、スマートキーシステムの電波を悪用した「リレーアタック」という手口で、カギが開けられることもある。電波を減衰する効果のある専用ケース、ブリキやアルミホイルなどの容器に入れて、分かりにくい場所で保管する。また、後付けのイモビライザーなどエンジンが始動できない電子機器を装着することも有効だ。 - 車のセキュリティ状態をチェック
盗難被害に遭っている車種の多くは、ドアのこじ開けなどでクラクションが鳴るようなメーカー標準のセキュリティシステムが装備されている。しかし、システムの設定がオフになっている場合もあるという。ディーラーなどでシステムの状態を確認しておきたい。 - 外から見えないガレージへ格納
自宅敷地内の駐車場であっても盗難被害に遭うケースが多い。可能であれば、外から見えないガレージに格納することで、犯行グループに見つかり難く、さらに盗み難くなる。
犯人はあらかじめ狙いを定めて下調べをし、犯行の機会を窺っている。車両盗難に遭わないために、普段から防犯対策をしておきたい。特に、大きな港に近い都道府県に住み、屋外に駐車している盗難に遭いやすい車種のオーナーの方々は、より注意が必要だろう。
なお、同調査結果は保険金請求のあった自動車盗難件数に基づいた発表である。これらは、あくまで保険金請求実績に基づくため、保険金の請求されていない盗難は含まれないことには注意しておきたい。例えば、車両保険に入っていない車種の盗難などは含まれない。その意味では、今回発表された盗難件数は、全盗難件数の一部でしかない。