「シタツンガ」|第38回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当金井さんに、「シタツンガ」を解説してもらいました。
体や顔に入る白い縞模様
「シタツンガ」は、アフリカ中部から南部(ウガンダ、カメルーン、ギニアなど)の沼地や湿地帯、湖沼の多い森林などに生息する偶蹄目ウシ科の動物です。体長は約1.4~1.7m、体重は約50~125kgで、オスの方が体は大きくなります。
身体的特徴としては、螺旋状にねじれて伸びる角が挙げられます。「角が生えるのはオスだけなので、メスとの区別がつきやすい動物です。園内にいる個体の場合ですが、角の長さは40~50㎝ほどで、大人の手首よりやや細いくらいの太さです」(※金井さん以下同)。野生下では、個体によって角は70~90㎝ほどにまで発達します。
体毛にもオスとメスで違った特徴があります。メスの体毛は明るい茶色ですが、オスの体毛はやや黒っぽく、褐色をしています(オスは年をとってくると体毛が黒っぽく変化します)。しかもオス・メス共に、背面に6~10本ほど白い縞模様が入っており、オスはそれに加え、顔面の目の下や目の周りに白い斑紋があります。
また元来、沼地や湿地帯に暮らすシタツンガの蹄は、水辺で移動するのに適応したつくりが備わっています。蹄は長く幅広な形をしており、接地面の表面積が大きく、体重を分散してかけられるので、湿地帯でも体が沈むことなく移動できます。しかも水辺を歩くときはほとんど音を立てずに歩くことができます。捕食動物などの危険を感じると水の中に飛び込み、目と鼻先だけを水面から出して隠れ、敵の獣が立ち去るまでやり過ごします。「園内では、外気温が高いとき、体を冷やすために水に入ることが多い」そうです。
水辺以外の地上でも「大股でゆったりとした歩き方で、足音はほとんどさせない」そうです。
夫婦単位か単独で暮らす
シタツンガは、オス・メス1頭ずつ(メス2頭の場合もある)とその子供たちという構成の小さい群れで暮らす動物です(単独で暮らすこともあり)。
シタツンガの赤ちゃんは、生後3~6か月ほどで草を食べ始め、1年ほどで離乳します。赤ちゃんのときは、体毛の色がオス・メス共にメスの成獣と同じ明るい茶色です。
また成獣のシタツンガは、鳴き声を出すことがほとんどありません。お互いの体の匂いを嗅ぎ合うことでコミュニケーションをとっています。
繁殖の季節には、メスを巡ってオスは角合わせによって争うようになります。ただシカ科の動物などに比べると角合わせは激しくなく、「角を使って押し合いをする感じで行われる」そうです。
母シタツンガだけは気性が荒くなる
そんなシタツンガは、どんな性質の動物なのでしょうか?
「温厚で臆病」だそうです。
最後に「シタツンガあるある」についても伺いました。
その1は、「小さな子供のいるメスは、子供を守るように前に立ちはだかって、前足で地面を強く踏み鳴らし、相手を威嚇すること」です。ふだんはおとなしい気性のシタツンガですが、出産後のメスだけは全く別で子供を守ろうとして気性が荒くなります。
その2は、「『展示場から動物舎に戻すとき、シタツンガを探してもなかなか見つからないこと』です。展示場にいないと思うと池の中に隠れていたり、園内の草が伸びているところに入り込み、しゃがみこんでじっとしています。気配を消して草木に同化したように隠れるのがとても上手です。1mくらいの近くにいたのに気付かなかったこともあったくらい」だそうです。