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クルマ2021.05.14

雨なんて気にしない! “屋根のない”スーパーカーがいま人気のワケ

その車、屋根なしにつき。いまスーパーカー界隈でもっともホットなトレンドが、ルーフレスの限定モデルだ。世界の名だたる自動車ブランドは、なぜ続々とルーフレススパイダーを発表するのか。モータージャーナリストの西川 淳氏が、車の歴史と人気の理由について解説する。

文・西川 淳

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フェラーリ モンツァSP1 & SP2|Ferrari Monza SP1 & SP2

フェラーリ モンツァ SP2|Ferrari Monza SP2

そもそもルーフなどない

 コロナ禍であってもスーパースポーツカーブランドはよく売れているのだそうだ。納車ラッシュが続き、ショールームに飾っておく新車がまるでない。勢い、下取りで入った現行型高年式の中古車を並べている、というディーラーも多い。

 なるほど世界の富裕層の資産はこの一年で増えこそすれ減ってはいないうえに、旅行やファッションにお金を使えなくなった昨今、楽しみのために使うマネー(=欲求不満の解消)が全て高級車に向いたのかもしれない、と想像する。

 そもそも、この手の欲望はどんどんエスカレートするものだ。「人とは違う」ことに価値のあったクルマたちとそれを好んで選ぶ客層に支えられたマーケットである。しょっちゅう街中で行き交うような事態になるともはや耐え難いのだろう。必然、カタログモデルでは飽きたらなくなって、特注品や限定(数百台規模)、フューオフ(十数台規模)やワンオフ(一台きり)へと、その欲は留まるところを知らない。メーカーもまた、そうなるように刺激的なニューモデルを手を替え品を替え発表する。なにもクルマに限った話ではないけれど。

 そんななか、最近目立って増えたのが、ルーフレスの限定モデルだ。ルーフを潔く捨て、どうやって屋根を付けるのだろう? と思っていると、そもそもルーフなどない。すぐに思いつくだけでも、マクラーレン エルバにフェラーリ モンツァSP1 & SP2、ランボルギーニ シアンロードスター、ベントレー マリナーバカラル、アストンマーティン V12スピードスター、という具合にハイエンドブランドがこぞって屋根なしスパイダーをマーケットに投入している(なかにはフェラーリ モンツァのように公式的には日本でナンバーを取得できないモデルもある)。

フェラーリ モンツァSP1 & SP2|Ferrari Monza SP1 & SP2

フェラーリ モンツァSP1 & SP2|Ferrari Monza SP1 & SP2

フェラーリ モンツァSP1 & SP2|Ferrari Monza SP1 & SP2

フェラーリ モンツァ SP1|Ferrari Monza SP1

ランボルギーニ シアンロードスター|Lamborghini Sian Roadster

ランボルギーニ シアンロードスター|Lamborghini Sian Roadster

ベントレー マリナーバカラル|Bentley Mulliner Bacalar

ベントレー マリナーバカラル|Bentley Mulliner Bacalar

アストンマーティン V12スピードスター|Aston Martin V12 Speedster

アストンマーティン V12スピードスター|Aston Martin V12 Speedster

ルーフレススパイダーの歴史と復活の理由

 戦前のスポーツカーといえば全てオープンカーが常識で、ルーフそのものがなかった。30年代から40年代にかけてそれまでの無骨な箱型ではないルーフ構造が登場し始めたのだが、50年代くらいまでのスポーツカーは即レーシングカーであったケースも多く、そもそもルーフなど必要としていなかった。スポーツタイプのGTオープンカーでルーフ有りが当たり前になるのは60年代に入ってからだ。

 つまり、ルーフレススパイダーにはレーシングカーのイメージが色濃く付きまとっている。それゆえ、その歴史においてモータースポーツが重きをなす老舗ブランド、先の例で言えばシアンロードスター以外、は、ルーフレススパイダーのスタイルで活躍した自社製ヴィンテージ&クラシックレーサーに対する思い入れが強くなる。

 結果、自らの歴史に照らし合わせたルーフレスデザインを最新モデルに採り入れて限定販売することで、エスカレートする一方の顧客の欲求に応えようとなったのだろう。エルバやV12スピードスターはそのことを全く隠そうとはしていない。むしろ過去へのオマージュであることを高らかに謳っている。

マクラーレン エルバ|McLaren Elva

マクラーレン エルバ|McLaren Elva(写真右)

 どうしてルーフレススパイダーが復活したのだろうか。おそらくフェラーリあたりがVIPカスタマーからのオーダーを受けてワンオフモデルとして製作したのが始まりではなかったか。一台の美しいクーペモデルがあったとして、それをオープンにして欲しいという要望はいつの時代もあったはずだ。

 今でこそほとんど全てのモデルにオープン仕様の設定があるけれども、それは必ず売れるとわかっているからで、その昔はそうでもなかった。オープン化には多大なエクストラコストが掛かる。ワンオフでも、そう簡単にできるものじゃない。けれどもトップを用意しないとなると話は別で、ルーフを落とし、車体を補強すればなんとかなりそうだ……。

ルーフレスにより魅力を増すカーデザイン

 デザイン的な観点から言っても、トップの存在を念頭に置くと置かないとでは、デザイナーの自由度が大いに変わる。もちろんルーフレスの方がかっこいいスタイルを作りやすい。シアンロードスターやその前のチェンテナリオロードスターなどはその典型だろう。

 ちなみにランボルギーニはまずガヤルドのルーフレススパイダーをコンセプトカーとして世に問い、その後にワンオフのアヴェンタドールJ(イオタ)を製作。そしてフューオフのチェンテナリオやシアンにルーフレススタイルのスパイダーが設定されることになる。

ランボルギーニ ガヤルド コンセプトS|Lamborghini Gallardo Concept S

ランボルギーニ ガヤルド コンセプトS|Lamborghini Gallardo Concept S

ランボルギーニ チェンテナリオ ロードスター|Lamborghini Centenario Roadster

ランボルギーニ チェンテナリオ ロードスター|Lamborghini Centenario Roadster

ランボルギーニ アヴェンタドールJ|Lamborghini Aventador J

ランボルギーニ アヴェンタドールJ|Lamborghini Aventador J

フェラーリ550バルケッタ ピニンファリーナ|Ferrari 550 Barchetta Pininfarina

フェラーリ550バルケッタ ピニンファリーナ|Ferrari 550 Barchetta Pininfarina

 モダンカーにおけるルーフレススパイダーの歴史は、おそらくフェラーリ550バルケッタあたりにはじまるのではないだろうか。バルケッタとは小舟を意味するイタリア語で、オープンタイプの2シータースポーツカーを指す。550バルケッタには緊急用のブサイクな幌=単なる雨凌ぎの傘レベル、こそあったが、基本的にはルーフレススパイダーの範疇にあった。

 そんな高価なクルマを転がしていて急に雨が降ってきたらどうするの、って?雨などほとんど降らないところに住んでいるお金持ちも多いというほかないだろう。もしくは、日なが眺めるコレクションとして。もっとも、降ったところで気にするようなレベルの金持ちでは、最新のバルケッタを買えないかもしれないけれど。

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