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最終更新日:2020.09.15 公開日:2020.09.15

「チーター」|第11回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課チーター担当の松田さんに、「チーター」を解説してもらいました。

くるくら編集部 上條 謙二

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体脂肪率5%、速く走るために特化した無駄のない体!

チーターの最高速度は時速110㎞。体は速く走るために特化したつくりになっている。

 陸上で最速の動物であるチーターが生息するのは、熱帯雨林地方を除くアフリカ大陸や中近東の一部などのサバンナ地帯。「園内にはチーターの走る様子を見せる際に使用する、『ターゲット(動く標的)』という仕掛けがあります。その仕掛けのスピードを最高速度(時速70~80㎞)にしてもチーターはあっという間に追いついてしまうんです」(※松田さん以下同)。チーターの最高速度は時速110㎞ともいわれています。最速のスピードを持続できる距離は数百mと限られていますが、停止している状態からわずか3~4秒ほどでトップスピードにもって行ける瞬発力が持ち味です。瞬間的なスピードを生かして草原で狩りをする動物、それがチーターです。

 そのためチーターの体には速く走るための仕組みが備わっています。

「体全体をじっくり観察してください。頭が小さく、胸郭(胸を取り巻く骨格)が大きく、四肢は細くて長い。しかも後ろ足の筋肉はよく発達しています」。

 頭の形はネコやライオンなどの他のネコ科の動物とあまり変わりはないのですが、大きさはネコより大きい程度で、体全体のバランスからみるととても小さい。それが「走る際の空気抵抗を小さくして、スピードを上げるのに役立っています。」

 また速く走るために不可欠な心肺能力に必要な大きな心臓や肺を収めるために、胸部はゆったりと大きくなっています。

 細くて長い足は、速く走るのに有利です。しかも足の爪ですが、他のネコ科の動物と違った特徴があります。それは「瞬時に獲物に向かって飛び出せるように、常に爪を出したままで走ること」です。ネコやライオンは走るときに爪を引っ込めますが、チーターの場合は、出しっぱなしになっていることで爪はスパイクの役割を果たし、土にしっかり食い込むことで速く走ることができます。

 長い尻尾にも速く走るための役割があります。「先端まで自由に動かすことができ、全速力で走るときには尻尾を振って方向転換やバランスをとる」のだそうです。

 しかも速く走るためにチーターは体に余分なものを蓄えていません。チーターの体脂肪率はなんと5%ほど。とてもスマートです。「チーターは水が苦手です。水の音を聞いただけで嫌がる個体もいるほどです。雨の日は室内から出ようとしません」。体が雨で濡れて冷えてしまうのを嫌うのは、体脂肪の少なさゆえなんですね。

獲物をしっかり見定めるのに役立つ「ティアーズ・マーク」

チーターに特有な「ティアーズ・マーク」(写真:両目頭から口の両端にかけての黒い線)は、反射による太陽光の眩しさを減少させる役目があって、狩りをする際に有用。

 速く走るための身体的な特徴以外にも、チーターにはいくつか特徴があります。その一つが「ティアーズ・マーク」です。「涙状線」とも呼ばれ、両目の目頭から、鼻の横を通り、口の両端にかけて、黒い線があります(両側1本ずつ、合計2本)。「その存在理由は、一説には、黒い線は光を吸収する働きがあり、太陽光の眩しさを軽減し、獲物を狙う際見やすくなるから」といわれています。野球のメジャーリーガーが、デーゲームの屋外球場で目の下を黒くペイント(ステッカーの場合もあり)してプレイすることがありますが、あれと同じような役割があるんでしょうね。

 体毛は、成獣は長さが短めで細いのですが、幼獣は頭の毛が長くフワフワしていて、頭から背中にかけては、馬のような長いタテガミが生えています。そのタテガミは成獣になるにつれてなくなってしまいます。

 チーターの鳴き声はいくつか種類があって特徴的だそうです。

「『キャンキャン』と犬そっくりの鳴き声を出すことがあります」。何か気になることがあってちょっと不安なとき。仲間を呼ぶとき(たとえば仲のいい者同士の兄弟がはぐれてしまって相手の姿がみえないときなど)は、この犬のような鳴き声を出すことが多いそうです。また「幼獣の場合は声が高く、鳥の鳴き声のよう」だとも。嬉しいときにはネコと同じようにのどを「ゴロゴロ」と鳴らし、威嚇するときには、のどに痰がからんだみたいな、「カッ」という短い声を出して地面を両前足で強く叩く行動をとります。

時には空の1点を見つめていることも

チーターの体幹の斑点は、丸いドット柄。腹部にかけてだんだんと薄い斑点になっていく。

「飼育を担当するようになった当初は尻尾の形とか体幹の模様や目の上の黒い点で個体を識別していましたが、今では仕草や顔の大まかな雰囲気だけで識別できるようになりました」と松田さん。

 そんなチーターの気性ですが、特徴は他の大型のネコ科の動物と比べると攻撃的でないことです。「ライオンやトラなどは、同じ種の個体同士で激しくケンカをするのでたまにケガを負ったりするのですが、チーターはそういうことが少ないです」。争いごとになったとしても相手を傷つけるようなことにまで至らないことが多いのだそうです。「もちろん個体によって違いがありますが、おっかなびっくりしていて、性格は臆病」とのこと。ちょっと意外ですね。

 最後に「チーターあるある」について伺ってみました。

 その1、「1頭が鳴き出すと、つられて他のチーターも鳴き出すこと」。 「大きな獣舎で、オスとメスに分けて飼育しているときですが、一頭が鳴き出すとそれに呼応するように交互に鳴くんです。鳴き声でコミュニケーションをとっているというか、会話している感じなんです」。

 その2、「空の1点を見つめて、動かなくなること」。 「ヘリコプターがどこか空高く飛んでいるとき。すべてのチーターがじっと空を見上げていたことがありました。きっとヘリコプターを空に舞う猛禽類に見立てて、サバンナのことでも思い描いているのでしょうね」。

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