内掛けハンドルの危険! 正しいハンドル操作とは
握り手を逆手に持ち替えてハンドルを回す「内掛けハンドル」。ハンドルを回す際の力の入れ具合が楽になる反面、エアバッグを装備したクルマでは思わぬ危険も考えられる。安全かつ正確な回し方となるハンドル操作とは。
内掛けハンドルはとっさの操作に弱いだけでなく、エアバッグ作動時の危険も
ハンドル操作は、クルマを進行方向へと滑らかに曲げつつ、とっさの出来事にも対処できる安全性を備え、無駄な動きが少ない効率的な動作が理想だ。そのためには、正しいハンドルの握り方や回し方を実践する必要がある。しかし実情は危険な自己流がクセとなっているドライバーが多い。またクルマの安全装備などが進化することによって、大きな問題が生じている回し方がある。そんなハンドル操作の1つが「内掛けハンドル」だ。
内掛けハンドルは、逆手で握りなおして、上から下へと引っ張るようにハンドルを回すため、大きな力が入れやすい。クルマが停車している時や極低速時などのハンドルが重い状態でも一気に回せることもあり、パワーステアリング装備車が少なかった時代に浸透したといわれている。
メリットは「大きな力を入れやすい」「一気に回せる」であったが、現在ではパワーステアリングが主流となっているため、ハンドル操作にそれほど大きな力を必要としなくなっている。内掛けハンドルはメリットはもはや存在しないと言える。一方で、急な飛び出しなどの「とっさ」の反応時に、逆方向へハンドルを切りづらいことや、微妙な調整に不向きであること、逆手に持ち替えるので操作がワンテンポ遅れること、というデメリットがクロースアップされるようになった。
さらにハンドルにエアバッグが装備されるようになったことで、内掛けハンドルには別の危険性が生じている。内掛けハンドル中にエアバッグが作動すると、肘関節に可動範囲と逆の方向から力が加わることになるためだ。
過去の調査では「94%」が自己流だった!
人は正しい動作を繰り返しているつもりでも、慣れなどによって自己流へと置き換えていることがある。いわゆる「クセがついている」状態だ。じつはハンドル操作でも同様のことが起きている。JAF Mate編集部が2013年に実施した街頭調査にて、一般道の交差点を左折するドライバー300人のハンドル操作を目視でチェックしたところ、約94%にあたる289人が自己流のハンドル操作であったことが判明している。
その調査では内掛けハンドル以外にも、さまざまな自己流ハンドル操作が見受けられた。代表的なものを紹介しよう。
送りハンドル
右手と左手の位置を大きく変えず、曲がりたい方向へ少しずつ送り出すようにして、ハンドルを回転させる。ハンドルを大きく回す必要があるときには、動作の回数が増えて素早い操作ができない。
小刻みハンドル
小刻みに回して調整しながら曲がっていくハンドル操作。滑らかにクルマの向きが変わらないので、安定しない曲がり方になる。
手のひらハンドル
パワーステアリングが普及したことでよく見られるようになった、片方の手のひらをハンドルに押し付けて動かす回し方。細かな操作ができず、不正確な走行になりがち。
反力戻しハンドル
クルマが曲がり切った後にハンドルから両手を離し、タイヤが直進状態に戻ろうとする反力でハンドルを自動的に戻す操作。手を離すので、正確性やとっさの対応が遅れてしまう可能性がある。
各ハンドル操作の動画は、写真右側の緑の文字をクリック
正しいハンドルの握り方、回し方
街中で見た自己流のハンドル操作は、正確性や安全面などにデメリットが生じている。では正しいハンドル操作とは?
まずはハンドル握り方から。手の平の親指の付け根の部分を左手は9時、右手は3時におく。親指はハンドルの内側にあてる。ほかの指は軽い力でハンドルを握る。
ハンドルを回す動作は、曲がる方向と逆の手でハンドルを12時まで回す動きから始まる。左折ならば、右手を3時から12時のところまで動かす。左手はハンドルを握ったままで、9時から6時の位置に移動している。これ以上ハンドルを回す場合は、右手を12時から9時へと回している間に、左手を3時の位置へと持ち替える。そして左手でハンドルを回し続け、右手は7時から5時の間に持ち替える。これを連続してハンドルを回していく。ハンドルを戻すときは逆の動作となる。
この回し方のメリットは、滑らかに大きく回せる、正方向でも逆方向でも回しやすい、ハンドルを回している量をドライバーが把握しやすい、両手を離している時間がないなどが挙げられる。
一度、運転中に自分のハンドル操作を客観視してみてほしい。前述の調査でも判明しているように多くのドライバーが自己流だ。今回を機に正しいハンドル操作を意識するようにしよう。
2020年6月12日 一部修正