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最終更新日:2020.06.02 公開日:2020.06.02

【JNCAP2019】予防安全・前期+後期全16車種によるランキング

JNCAP(自動車アセスメント)の2019年度後期分が、5月27日に発表された。ここでは、2019年度に予防安全性能評価を受けた全16車種を、合計得点の高い順にランキングで紹介する。

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JNCAPでは、後づけの自動運転システムを用いて、全車種が同一条件で試験を実施する。

 JNCAPとは、国土交通省と独立行政法人 自動車事故対策機構(NASVA)が毎年実施している、新車の安全性能評価試験のことだ。車種は、実施年度から1~2年ぐらい前までの間にフルモデルチェンジもしくはマイナーチェンジを受けてより安全性能が向上した車種のうち、特に販売台数の多いものから選定される。また、メーカーが試験を依頼することもあるが、どちらにしてもすべて同一条件下で厳密な試験が実施され、安全性能が評価されている。

 安全性能評価は、大別して予防と衝突の2種類がある。ここで取り上げるのは、衝突被害軽減ブレーキなど、衝突事故を未然に防ぐ(もしくは軽減する)ための機能を評価する予防安全性能評価だ。一方の衝突安全性能評価は、衝突に至った際に、乗員と歩行者の保護性能を評価するものである。

 予防安全性能評価の試験内容は以下の通り。大別して5種類がある。その中でも衝突被害軽減ブレーキについては、まず対車両と対歩行者に大きく分かれ、対歩行者は昼間、夜間の街灯あり・なしと3種類の条件で試験が行われる。合計は141点満点だ。

1.衝突被害軽減ブレーキ
 I.対車両(32点)
 II.対歩行者(全80点)
 ・昼間(25点)
 ・夜間【街灯あり】(40点)
 ・夜間【街灯なし】(15点)
2.車線逸脱抑制装置(16点)
3.後方視界情報装置(6点)
4.高機能前照灯(5点)
5.ペダル踏み間違い時加速抑制(2点)
合計:141点満点

2019年度予防安全性能評価・全16車種によるランキング

 ランキングは以下の通り。各車の得点の内訳や試験車種の詳細な情報などについては後述する。カッコ内の点数は、100点満点に換算したものだ。同点の場合、後期、前期の追加車種、前期の順で紹介した。

第1位・141.0点(100点):アルファード/ヴェルファイア(トヨタ)【後期】
第1位・141.0点(100点):セレナ(日産)
第1位・141.0点(100点):NX(レクサス)
第1位・141.0点(100点):UX(レクサス)
第5位・140.2点(99.4点):ES(レクサス)

第6位・139.8点(99.1点):Cクラス(メルセデス・ベンツ)【後期】
第7位・137.0点(97.2点):RAV4(トヨタ)【後期】
第8位・132.0点(93.6点):デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)およびeKワゴン/eKクロス(三菱)【後期】
第8位・132.0点(93.6点):アコード(ホンダ)
第10位・131.4点(93.2点):フォレスター(スバル)

第11位・129.2点(91.6点):N-BOX/N-BOX カスタム(軽・ホンダ)
第12位・123.7点(87.7点):N-WGN/N-WGN カスタム(軽・ホンダ)【後期】
第13位・110.5点(78.4点):ポロ(フォルクスワーゲン)【後期】
第14位・73.6点(52.2点):ロッキー(ダイハツ)
第15位・72.0点(51.1点):タント/タント カスタム(軽・ダイハツ)
第16位・28.8点(20.4点):ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)【後期】

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各車の得点の内訳を掲載

ASVとしての優秀さなど、得点の見方

 続いては、各車の得点の内訳や、安全運転支援システムの特徴などを紹介する。まず得点の見方だが、以下の4段階に評価が分けられており、「+」が多いほどASV(※1)として優秀であることを示す。さらに満点の場合は、「予防安全性能評価大賞」がその車種に対して贈られる。

※1 ASV:Advanced Safety Vehicleの略。先進安全自動車のこと。

~12点以下:無印
12点超~46点以下:ASV+
46点超~86点以下:ASV++(ダブルプラス)
86点超~:ASV+++(トリプルプラス)

 また、得点の内訳については、減点があった項目のみを記載した。よって、満点の4車種については、各項目の記載はしない。

第1位:アルファード/ヴェルファイア(トヨタ)【後期】

合計:141.0点(100点)

ASV+++・予防安全性能評価大賞

試験に用いられた車種・グレード(車両型式):アルファード 2.5L S”Cパッケージ”(DAA-AYH30W)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波
安全運転システム名:Toyota Safety Sense

 2015年1月26日に3代目が登場した、トヨタの大型ミニバンの兄弟車「アルファード/ヴェルファイア」。2018年度の予防安全性能評価で126点満点を獲得し、2019年度も141点満点を獲得し、2年連続の予防安全性能評価大賞受賞となった。

 2018年1月にマイナーチェンジが実施され、トヨタの安全運転支援システムの第2世代「Toyota Safety Sense」が標準装備となった(一部のグレードにおいて、一部の機能はオプション)。さらに同年10月にはアクセルの踏み間違いなどを防止するためのインテリジェントクリアランスソナーも標準装備とした。

第1位:セレナ(日産)

合計:141.0点(100点)

ASV+++・予防安全性能評価大賞

試験に用いられた車種・グレード(車両型式):セレナ e-POWER ハイウェイスターV(DAA-HFC27)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波
安全運転支援システム名:全方位運転支援システム
同一性能のOEM供給車:スズキ「ランディ」

 2016年8月に登場した、日産のミニバン「セレナ」の5代目は、2016年度の予防安全性能評価において、JNCAP史上初となる71点満点(当時は4種類の試験内容)と予防安全性能評価大賞を獲得した。

 2019年8月にはマイナーチェンジが実施され、日産の安全運転支援システム「全方位運転支援システム」が全車標準装備に。このとき同時に、自動車専用道路・同一車線運転支援技術「プロパイロット」も搭載され、センサーとしてミリ波レーダーも追加搭載された。ミリ波レーダーは、かつては衣服のような非金属の物体や人体はあまり反射しないため、歩行者検知には用いられていなかったが、近年は技術が進み、センサーの感度や解析精度が向上。カメラとミリ波レーダーで補完し合うことで夜間の歩行者検知精度を上げられるようになった。「セレナ」でも夜間の歩行者検知に利用されており、通算2度目となる2019年度の予防安全性能評価を受けた際に、衝突被害軽減ブレーキの夜間における対歩行者の試験でも減点ゼロを記録。141点満点を獲得したことが2020年3月に発表された。予防安全性能評価大賞を受けるのも2度目となる。

第1位:NX(レクサス)

合計:141.0点(100点)

ASV+++・予防安全性能評価大賞

試験に用いられたグレード(車両型式):300h F SPORT(DAA-AYZ10)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波
安全運転支援システム名:Lexus Safety System +

 レクサス初のコンパクト・クロスオーバーSUVとして2014年に発売された「NX」。発売初年度に「NX」は、スタートして1年目となる予防安全性能評価を受けた。当時は2種目・40点満点で、「NX」は26.9点を獲得した。

 その後、2017年9月にビッグマイナーチェンジを受け、レクサスブランドの安全運転支援システム「Lexus Safety System +」が標準装備に。さらに、2019年4月には同システムの改良が行われて予防安全性能が強化され、同年度に2度目の予防安全性能評価を受けた。141点満点を獲得し、予防安全性能評価大賞を初めて受けた。

第1位:UX(レクサス)

合計:141.0点(100点)

ASV+++・予防安全性能評価大賞

試験に用いられたグレード:250h F SPORT(6AA-MZAH10)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波
安全運転支援システム名:Lexus Safety System +

 「UX」は、レクサスのコンパクト・クロスオーバーSUVの1車種で、都会派のコンセプトで開発され、2018年11月に発売された。一部の機能を除いて、レクサスの安全運転支援システム「Lexus Safety System +」の最新版が全車標準装備となっており、2019年の評価で141点満点を獲得、予防安全性能評価大賞を受けた。

 「Lexus Safety System +」の最新版は、衝突被害軽減ブレーキ「プリクラッシュセーフティ」が、昼間の自転車にも対応している点が特徴だ。なお、現在のJNCAPでは衝突被害軽減ブレーキにおける対自転車の評価試験は実施されていないが、2021年度から導入される予定だ。

第5位:ES(レクサス)

合計:140.2点(99.4点)

ASV+++
●対歩行者:79.2点(昼間:24.2点)

試験に用いられたグレード(車両型式):300h(6AA-AXZH10)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波
安全運転支援システム名:Lexus Safety System +

 2018年10月に登場した、レクサスのフラッグシップセダン「ES」の7代目。「Lexus Safety System +」の最新版を装備するが、衝突被害軽減ブレーキの対歩行者で昼間に0.8点の減点があり、満点にわずかに届かなかった。

 日中の方が視認性が高いとされるのが一般的だが、自動車メーカーのエンジニアに聞いたところ、画像認識にとっては日中は陽光が大きな外乱要素となるため、夜間よりも逆に難しいという。まず、時間帯や季節、雲の量で明るさが大きく変化するうえ、物体に陽光が当たる部分と陰となる部分のコントラストの差など、カメラのダイナミックレンジの性能などに課題が残るからだ。夜間、中でも街灯のある場合は対向車のヘッドライトはあるものの画像認識をしやすく、対歩行者の衝突被害軽減ブレーキ試験は昼間より夜間の方が減点が少ないという車種も少なくない。

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続いてランキング第6~10位

第6位:Cクラス(メルセデス・ベンツ)【後期】

合計:139.8点(99.1点)

ASV+++
●対歩行者:79.8点(昼間:24.8点)●踏み間違い抑制:1.0点

試験に用いられたグレード(車両型式):C 200 アバンギャルド(RBA-205042C)
センサー方式:ミリ波レーダー・ステレオカメラ・超音波
安全運転支援システム名:インテリジェントドライブ

 JNCAPでの試験対象車種は、基本的には販売台数の多い車種が選定されるため、国産車が多く、輸入車が少ない傾向にある。しかし2019年度の予防安全性能評価では、輸入車が4年ぶり、しかも一気に3車種も選定された。メルセデス・ベンツ「Cクラス」は、その中で最も高得点となった車種である。

 同車は、1982年に誕生した「190クラス」の系譜を受け継ぐ車種だ。現行車種はCクラスとしての4代目にあたり、2014年7月に7年ぶりのフルモデルチェンジを経て登場した。そして2018年7月にエクステリアの変更も伴うビッグ・マイナーチェンジが実施され、上位シリーズの「Sクラス」と同等の安全運転支援システム「インテリジェントドライブ」をユーザーが選択できるようになった。なお、「Cクラス」は車名ではなくシリーズ名であり、車名はC+3桁数字(+アルファベット、サブネーム)となる。試験を受けた車両は「C 200 アバンギャルド」だ(※2)。

 予防安全性能評価では、139.8点という、満点にわずか1.2点届かない高得点を獲得。これまでで最も満点に近い輸入車となった。減点1.2点の内訳は、昼間の対歩行者の衝突被害軽減ブレーキで0.2点、ペダル踏み間違いで1.0点だった。

※2 C 200 アバンギャルド:2020年5月末時点では販売が終了している。現在、Cクラスには「C 180」から「C 350 e アバンギャルド」まで6車種がラインナップされている。3桁数字が大きくなると排気量も増え、車両価格も高くなる。

第7位:RAV4(トヨタ)【後期】

合計:137.0点(97.2点)

ASV+++
●対歩行者:79.6点(夜間・街灯あり:39.6点)●高機能前照灯:1.4点

試験に用いられたグレード(車両型式):HYBRID G(6AA-AXAH54)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波
安全運転支援システム名:Toyota Safety Sense

 2019年4月に発売された、トヨタのクロスオーバーSUV「RAV4」(5代目)。4代目は国内では販売されなかったが、5代目から再び国内でも販売されるようになった。5代目の車名はそれまでとは意味が変更されており、開発コンセプトの「Robust Accurate Vehicle with 4 wheel drive(SUVらしい力強さと使用性へのきめ細かな配慮を兼ね備えた4WD)」の略となった。4代目までは「Recreational Active Vehicle 4 wheel drive」の略だった。

 同社の安全運転支援システムの2代目となる「Toyota Safety Sense」の最新版を搭載し、昼間の自転車にも対応。また、前後のトルク配分に加えて後輪トルクを左右独立して制御する全輪駆動システム「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を装備し、ドライバーの意図したラインでの安定した走行を実現するとしている。

第8位:デイズ/デイズ ハイウェイスター(日産)、eKワゴン/eKクロス(三菱)【後期】

合計:132.0点(93.6点)

ASV+++
●対歩行者:74.6点(夜間・街灯あり:35.2点/夜間・街灯なし:14.4点)●高機能前照灯:1.4点

軽自動車
試験に用いられた車種・グレード(車両型式):デイズ ハイウェイスターX(5AA-B44W)
センサー方式:単眼カメラ・超音波
安全運転支援システム名:-

 日産のトールワゴンタイプの軽自動車「デイズ/デイズハイウェイスター」(2代目)と、三菱のトールワゴンタイプの軽自動車「eKワゴン/eKクロス」(4代目)は日産と三菱によって共同開発され、2019年3月から発売となった(※3)。今回予防安全性能評価を受けた軽自動車4車種の中では最上位であり、唯一となる130点台を獲得した。減点があったのは3項目。衝突被害軽減ブレーキの対歩行者の夜間・街灯ありで4.8点、同じく街灯なしで0.6点。高機能前照灯がハイ・ロー自動切替型のため、3.6点の減点となった。

※3 「デイズ/デイズ ハイウェイスター」および「eKワゴン/eKクロス」について:正確には、両社が出資したジョイントベンチャーのNMKVが開発。「デイズハイウェイスター」は「デイズ」のスポーティモデル。「eKクロス」は「eKワゴン」のクロスオーバーモデル。

 同じ夜間における歩行者の検知でも、メーカーごとのコンセプトの違いがあるため、人の目と同じように少しでも明るい方が認識精度の上がる場合もあれば、逆にヘッドライトのみの環境の方が上がる場合もある。「デイズ/デイズハイウェイスター」および「eKワゴン/eKクロス」の場合は、夜間の街灯ありとなしでどちらにも減点があるが、割合で比較してみると街灯なしの方が減点が少ない。夜間においては、光源がヘッドライトのみの方が歩行者の検知を得意としているようだ。

第8位:アコード(ホンダ)

合計:132.0点(93.6点)

ASV+++
●対歩行者:75.4点(昼間:24.6点/夜間・街灯なし:10.8点)●高機能前照灯:1.4点 ●踏み間違い:1.2点

試験に用いられたグレード(車両型式):EX(6AA-CV3)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ
安全運転支援システム名:Honda SENSING

 2020年2月21日に発売されたホンダ「アコード」(10代目)は、3月16日に2019年度の予防安全性能評価を受けたことが追加発表された。同社の安全運転支援システム「Honda SENSING」は基本機能として8種類を備えるが、「アコード」ではさらに2種類の機能を追加。その上で、Honda SENSINGを全車標準装備とした。追加された2種類とは、オートハイビーム(ハイ/ロー・自動切替型前照灯)と後方誤発進抑制機能(後方用ペダル踏み間違い時加速抑制)である。

 被害軽減ブレーキでは、日中に0.4点の失点があったほか、夜間・街灯なしで4.2点とやや大きな減点があった。ヘッドライトのみの状況だと、歩行者検知をやや苦手としているようだ。そして高機能前照灯に関しても減点があった。高機能前照灯を採用しているホンダ車は、すべてハイ/ロー自動切替型。そのため1.4点しか獲得ができなかった。さらに高機能前照灯と並んでホンダ車共通の課題といえるのが、ペダルの踏み間違い抑制の性能。「アコード」を含めて、2019年度の予防安全性能評価を受けた3車種はすべて0.8点の減点となっている。今後のJNCAPでより高い得点を目指すには、自動防眩型ヘッドランプの採用と、ペダル踏み間違い抑制の機能をより高性能化することがホンダ車に必要といえそうだ。

第10位:フォレスター(スバル)

合計:131.4点(93.2点)

ASV+++
●対歩行者:70.4点(昼間:23.5点/夜間・街灯あり:37.8点/夜間・街灯なし:9.1点)

試験に用いられた車種(車両型式):TouringおよびTouring(共に5BA-SK9)
センサー方式:ステレオカメラ・超音波
安全運転支援システム名:EyeSight

 2018年7月に発売となった、スバルの大型クロスオーバーSUVの「フォレスター」(5代目)。同年度の予防安全性能評価を受け、126点満点中の122.3点で第4位を獲得した。2年連続で2019年度の評価試験も受け、131.4点で第10位となった。安全運転支援システム「EyeSight」は、バージョン3の中でも最新版となる「EyeSight・ツーリングアシスト」を搭載している。同システムは、長距離運転での疲労を軽減することで事故を減らすという考えに基づき、運転支援機能が盛り込まれているのが特徴だ。

 ちなみに、現在のEyeSightのセンサーはステレオカメラのみが用いられているが、夜間の画像認識で苦戦しているという。特に、街灯なしの夜間を苦手としているようで、得点は9.1点。100点満点に換算すると、60.7点にとどまっている。この状況を改善するため、スバルでは新開発のステレオカメラに4つのレーダーを組み合わせた新世代のEyeSightを開発中だ。この新世代EyeSightは、2020年後半に発売予定のステーションワゴン「レヴォーグ」(2代目)に搭載される予定である。

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第11位~第16位を紹介

第11位:N-BOX/N-BOX カスタム(ホンダ)

合計:129.2点(91.6点)

ASV+++
●対歩行者:72.6点(昼間:22.6点/夜間・街灯あり:39.5点/夜間・街灯なし:10.5点)●高機能前照灯:1.4点 ●踏み間違い:1.2点

軽自動車
試験に用いられた車種(車両型式):G Honda SENSING(DBA-JF3)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波
安全運転支援システム名:Honda SENSING

 2017年9月に発売された軽自動車「N-BOX/N-BOX カスタム」(2代目 ※4)は、安全運転支援システム「Honda SENSING」の8種類の基本機能に、同社初となる後方誤発進抑制機能を加えた9種類を標準装備としている。これにより、2017年度の予防安全評価で79点満点中の76.6点を獲得し、20車種中の第5位となった。

※4 N-BOX カスタム:N-BOXの上級モデル

 2019年10月のマイナーチェンジでは、衝突被害軽減ブレーキとリアワイドカメラの性能向上が図られた。衝突被害軽減ブレーキは、夜間・街灯なしの状況での歩行者検知性能を高め、さらには目の前を横断する自転車に対応した。横断する自転車に対応したのは、ホンダ車の中で2車種目である。一方のリアワイドカメラは、画素数が従来の30万から100万へと増強し、視認性が大きく改善。そして2020年1月に2019年度の予防安全性能評価を受け、129.2点を獲得したことが追加発表された。

第12位:N-WGN/N-WGN カスタム(ホンダ)【後期】

合計:123.7点(87.7点)

ASV+++
●対歩行者:67.1点(昼間:24.1点/夜間・街灯あり:36.9点/夜間・街灯なし:6.1点)●高機能前照灯:1.4点 ●踏み間違い抑制:1.2点

軽自動車
試験に用いられたグレード(車両型式):L Honda SENSING(6BA-JH3)
センサー方式:ミリ波レーダー・単眼カメラ・超音波カメラ
安全運転支援システム名:Honda SENSING

 2019年8月9日に発売された、ホンダの軽自動車「N-WGN/N-WGN カスタム」(2代目 ※5)。2代目「N-BOX」のプラットフォームをベースにした軽自動車「N」シリーズの第3弾で、コンパクトなボンネットタイプとなっている。

※5 N-WGN カスタム:N-WGNの上級モデル。

 安全運転支援システム「Honda SENSING」の最新バージョンを標準装備し、8種類の基本機能に加え、後方誤発進抑制機能とハイ/ロー自動切替型前照灯も搭載した。また衝突被害軽減ブレーキは、軽自動車で初めて目の前を横断する自転車にも対応。さらに、夜間・街灯なしの歩行者検知も、従来のHonda SENSINGよりも性能向上が図られている。また同社の軽として、後方の障害物を検知して知らせる「パーキングセンサーシステム」を標準装備とした。

第13位:ポロ(フォルクスワーゲン)【後期】

合計:110.5点(78.4点)

ASV+++
●対歩行者:79.2点(昼間:20.6点/夜間・街灯あり:37.0点/夜間・街灯なし:14.3点)●車線逸脱:装備なし ●高機能前照灯:装備なし ●踏み間違い抑制:0.6点

試験に用いられたグレード(車両型式):TSI Comfotline(ABA-AWCHZ)
センサー方式:ミリ波レーダー・超音波
安全運転支援システム名:-

 2019年度の予防安全性能評価を受けた輸入車の1車種が、フォルクスワーゲン「ポロ」だ。同車は初代が1975年に誕生し、世界で累計1400万台以上が生産されている人気車種である。国内には3代目の時代に、1996年から本格的に輸入されるようになった。現行の6代目は、8年ぶりのフルモデルチェンジが実施されて2018年3月に登場。なお、2019年度の予防安全性能評価でASV+++を受けた車種は、「ポロ」までである。

 6代目「ポロ」は新型プラットフォームの「MQB」モジュールを採用。これにより、従来は上級モデルにのみ採用されていた安全運転支援システムの搭載が可能となった。ただし、車線逸脱抑制と高機能前照灯を装備していないために21点の減点で、合計110.5点にとどまっている。ちなみに、欧州自動車アセスメント・Euro NCAPでは、2017年に最高評価の5つ星を獲得した。

第14位:ロッキー(ダイハツ)

合計:73.6点(52.2点)

ASV++
●対車両:31.7点 ●対歩行者:12.9点(昼間:12.9点/夜間・街灯あり:装備なし/夜間・街灯なし:装備なし)

試験に用いられた車種(車両型式):G(5BA-A200S)
センサー方式:ステレオカメラ・超音波カメラ
安全運転支援システム名:スマートアシスト/スマートアシストプラス
同一性能のOEM供給車:トヨタ「ライズ」

 2019年11月発売のダイハツのコンパクトSUV「ロッキー」。その車名は、かつてのコンパクト・クロスカントリー4WD車と同じであり、22年ぶりの復活となった。ダイハツのクルマづくりの新コンセプト「DNGA」(※6)で開発された第2弾である。2019年度の予防安全性能評価を受けたことが、2020年2月に追加発表された。

※6 DNGA:Daihatsu New Global Architectureの略。

 「ロッキー」に搭載されたダイハツの安全運転支援システム「スマートアシスト」(予防安全系)および「スマートアシストプラス」(運転支援系)は、メーカーオプションを含めると17種類もの機能を有する。センサーはステレオカメラを採用するが、夜間には対応していないため、衝突被害軽減ブレーキの対歩行者の夜間で55点という大きな減点となった。車線逸脱、高機能前照灯、ペダル踏み間違いなどはそれぞれフルで得点しているが、55点の減点は大きく、評価はASV++止まりだった。

第15位:タント/タント カスタム(ダイハツ)

合計:72.0点(51.1点)

ASV++
●車両:31.6点 ●対歩行者:11.4点(昼間:11.4点/夜間・街灯あり:装備なし/夜間・街灯なし:装備なし)

試験に用いられた車種(車両型式):タント カスタム X(6BA-LA650S)
センサー方式:ステレオカメラ・超音波
安全運転支援システム名:スマートアシスト/スマートアシストプラス
同一性能のOEM供給車:スバル「シフォン/シフォンカスタム」

 ダイハツの新たなクルマづくりコンセプトのDNGA第1弾として、2019年7月に発表されたトールワゴンタイプの軽自動車「タント」(4代目)。「タント/タント カスタム」(※7)はセンサーとして、「ロッキー」と同じくステレオカメラを採用。そして同様に夜間に対応していないため、「タント/タント カスタム」も衝突被害軽減ブレーキの対歩行者の夜間で55点という大きな減点があり、ASVの評価も「++」にとどまった。

※7 タント カスタム:タントの上級モデル。

 「タント/タント カスタム」の「スマートアシスト」および「スマートアシストプラス」は、「ロッキー」と比較すると機能が2種類少なく、メーカーオプションも含めて合計15種類。 その中には、軽自動車初となる機能が2種類ある。スマートアシストに含まれる自動防眩型前照灯「ADB」(※8)と、スマートアシストプラスに含まれる駐車支援システム「スマートパノラマパーキングアシスト」だ。ADBとは対向車を検知すると、相手のドライバーがまぶしくないよう配光範囲を自動的に調節する。スマートパノラマパーキングアシストは、縦列駐車などのスペースの狭い駐車場に止める際に、ステアリング操作をアシストする駐車支援システムだ。

※8 ADB:Adaptive Driving Beamの略。

第16位:ミニ 3ドア/5ドア(ミニ)【後期】

合計:28.8点(20.4点)

ASV+
●対車両:17.9点 ●対歩行者:4.9点(昼間:4.9点/夜間・街灯あり:装備なし/夜間・街灯なし:装備なし)●車線逸脱:装備なし ●高機能前照灯:装備なし ●踏み間違い抑制:装備なし

試験に用いられたグレード(車両型式):3DOOR COOPER S(DBA-XM20)
センサー方式:単眼カメラ
安全運転支援システム名:-

 1958年に、英BMC社(※9)の天才エンジニアとして知られたアレック・イシゴニスの手によって生み出された「ミニ」。世界的に高い人気を、60年以上にわたって維持し続けているコンパクトカーだ。現在はBMW傘下のミニ・ブランドから発売されており、現行車は傘下となってからの3代目となる。3代目は2014年3月、7モデルあるうちのフラッグシップである3ドア(ハッチバック)が先陣を切って発売。その後、同年10月に5ドアもフルモデルチェンジが実施された。さらに両モデルとも、2018年5月にはビッグ・マイナーチェンジが行われ、現在に至っている。

※9 BMC:British Motor Corporationの略。倒産により現在は存在しない。

 予防安全性能評価の得点は28.8点だった。衝突被害軽減ブレーキの対車両が17.9点で、昼間の対歩行者は4.9点。対歩行者の夜間には対応していない。そのほか、車線逸脱、高機能前照灯、踏み間違い抑制も機能を備えていないために減点が大きく、ASVとしての評価は「+」止まりである。ただしEuro NCAPではデビューイヤーの2014年に試験を受け、5つ星のうちの4つ星評価を得ている。


 年度を追うごとに予防安全性能評価は試験項目が増え、難易度が増しているはずだが、2019年度は4車種が満点を獲得したほか、100点満点換算で90点台は7車種(そのうち2車種が99点台)を獲得。ASV+++の評価を受けた車種も、16車中の13車種となった。

 JNCAPは、2020年度の試験から予防と衝突の両安全性能評価を統合する計画だ。すべての車種が予防と衝突の両安全性能評価の試験を受け、合算した得点となる。また予防安全系の試験項目としては、2021年度に衝突被害軽減ブレーキの対自転車が、2023年度に交差点が導入される計画だ。

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