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最終更新日:2020.04.20 公開日:2020.04.20

自動車燃費ランキング2019:軽自動車編

国土交通省は、毎年燃費ランキングのベスト10を普通・小型車と軽自動車に分けて発表している。ここでは軽自動車編を、各車に搭載される燃費技術の解説とともにお届けする。

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2019年の燃費ランキング(軽自動車)の第2位~第9位の車種(並べ方は順不同)。

 国土交通省は毎年3月に、前年12月31日時点で発売されている車種を対象とした燃費性能値をランキングにして公表している。その目的は、メーカーには燃費性能の優れたクルマの開発を促すことがひとつ。それと同時に、ユーザーに省エネルギーへの関心を高めてもらい、燃費に優れた車種の購入を促すことだ。

 また”燃費性能の評価”とは、「自動車の燃費性能の評価及び公表に関する実施要領(平成16年度国土交通省告示第61号)」に基づく評価のことをいう。要は型式指定審査において取得する国土交通省審査値のことで、いわゆるカタログに記載されているJC08モード燃費値のことだ(単位は「km/L」)。燃費値は1Lの燃料で何km走行できるかを表し、この数値が大きければ大きいほど、低燃費=燃費性能に優れるクルマということになる。

軽自動車の燃費計測も2019年でJC08モードは終了

 2019年のトピックは、日本独自の試験方法として2011年から採用されてきたJC08モードの最終年であるということ。2020年からは、世界共通のWLTC(※1)モードに切り替わる。早い段階でWLTCモードの燃費値を発表している車種もあるが、この4月からは新たに計測が行われた車種も順次公表が行われている。

※1 WLTC:Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycleの略。「世界統一試験サイクル」のこと。

 試験方法を世界共通にする目的は、国土交通省によれば、クルマは国際的に流通する製品であることから、燃費に関する試験方法を国際的に統一することでメーカーも燃費技術の改善を進めやすくなり、その結果として大気環境の改善が期待されるというものだ。世界で統一できればメーカーも国や地域ごとに燃費試験を行わずに済むようになり、メーカーはそれだけ負担が減るのは間違いないだろう。その分、燃費改善に力を注いでもらいやすくなるはずだ。

 より詳しくいうと、WLTCモードとは、WLTP(※2)に含まれる試験サイクルのことをいう。WLTPは2014年3月に開催された、国連欧州経済委員会(UN-ECE)の第162回自動車基準調和世界フォーラム(WP29)にて採択され、日本では2020年から実施されることになった。

※2 WLTP:Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedureの略。「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法」のこと。

 WLTCモードがJC08モードと大きく異なるのは、市街地(低速)、郊外(中速)、高速道路(高速)の3種類の速度域で燃費を測定する点だ。そしてWLTCモード自体の燃費値は、市街地から高速道路までの値を平均的な使用時間配分で構成することで算出される。またそれぞれの値も公表されるので、ユーザーはWLTCモード自体の燃費値に加え、自分の使用環境に近い値も確認することが可能だ。また日本では実施されないが、オプションとして独アウトバーンのような超高速域を対象とした4種類目の速度条件も用意されており、国や地域によっては市街地・近郊・高速道路・超高速域の燃費値を測定した上で、WLTCモードを算出する場合もある。

2019年も軽自動車のランキングは半数がOEM車

 軽自動車の燃費ランキングでは、同率順位の車種が多い。最下位が複数になることも多く、2019年も第9位が3車種ある。順位が9位までなのにベスト11になっているのはそのためだ。

 その理由は、軽自動車の場合、他社から供給を受けたクルマを自社ブランドで販売するOEM(※3)が多いからだ。供給するのはスズキ、ダイハツなどで、OEM供給を受けているのがスバル、トヨタ、日産、マツダ、三菱などである(※4)。

※3 OEM:Original Equipment ManufacturingまたはOriginal Equipment Manufacturerの略。前者は「委託者(相手先)のメーカー名・ブランド名で製品を製造すること」で、後者は「委託者(相手先)のメーカー名・ブランド名で製品を製造するメーカー」といった意味。
※4 日産と三菱は、共同出資した(株)NMKVで軽自動車を開発し、両社のブランドで販売している。両社は、この方式をジョイントベンチャー方式と呼び、OEMとは一線を画している。また、軽商用車については、日産、三菱ともスズキからOEM供給を受けている。

 2019年のランキングでのオリジナル車とOEM車の関係は以下のようになっている。リストはオリジナル車⇒OEM車(OEM供給を受けるメーカー名)として並べた。またリストの下には、OEMの一例として、スズキの2代目「ハスラー」(オリジナル車:画像1)とマツダの2代目「フレア クロスオーバー」(OEM車:画像2)を掲載した。見比べてみると、外見上の違いはほぼエンブレムだけであることがわかるはずだ。

【スズキがOEM供給元の車種】
●アルト⇒キャロル(マツダ)
●ハスラー⇒フレア クロスオーバー(マツダ)
●ワゴンR⇒フレア(マツダ)

【ダイハツがOEM供給元の車種】
●ミラ イース⇒ピクシス エポック(トヨタ)、プレオ プラス(スバル)
●ムーヴ⇒ステラ(スバル)

画像1。スズキの2代目「ハスラー」。マツダにOEM供給している。

画像2。スズキからOEM供給を受けて、マツダが販売する2代目「フレア クロスオーバー」。カラーも一緒だと、まさにエンブレムが異なるのみ。

燃費ランキングにおけるハイブリッド車の定義

 2019年の軽自動車の燃費ランキングでは、11車種中の3車種がハイブリッド車だ。燃費ランキングにおけるハイブリッド車とは、モーターで駆動をアシストしていることが条件。そのため、減速時の回生発電でバッテリー等を充電し、その分、発電のためのガソリの消費量を抑えるスズキ「エネチャージ」や、ダイハツ「エコ発電制御」などは、広くはハイブリッド技術とも考えられるが、ここでは対象外となる。

 一方、同じスズキの技術でも、走行時のエンジンアシストや、発進時などのクリープ走行をモーターだけで行う「S-エネチャージ」(近年は単に「マイルドハイブリッド」と呼ばれている)は、ここでもハイブリッド車となる。2019年のランキングでは、スズキ「ワゴンR」、そのOEM車のマツダ「フレア」、マツダ「フレア クロスオーバー」(スズキ「ハスラー」のOEM車)の3車種が、S-エネチャージもしくはマイルドハイブリッド車である。

2019年のランキングは下位に変動あり

 そして以下がランキングだ。項目は、順位の後ろのカッコ内が前年順位で、続いてJC08モード燃費値、車種名(型式)、メーカー名の順だ。既述したハイブリッド車3車種に関しては、最後にHをつけてある。なお、ベスト10に入った車種の排気量はすべて658ccなので割愛した。各車の燃費性能並びに燃費に関する技術の解説は、次ページから掲載。

1位(1位):37.0km/L アルト(DBA-HA36S)スズキ
1位(1位):37.0km/L キャロル(DBA-HB36S)マツダ
3位(3位):35.6km/L アルト ラパンDBA-HE33S)スズキ
4位(4位):35.2km/L ミラ イース(DBA-LA350S)ダイハツ
4位(4位):35.2km/L ピクシス エポック(DBA-LA350A)トヨタ
4位(4位):35.2km/L プレオ プラス(DBA-LA300F)スバル

7位(7位):33.4km/L フレア(DAA-MJ55S)マツダ H
8位(9位):32.0km/L フレア クロスオーバー(DAA-MJ55S) マツダ H
9位(7位):31.0km/L ワゴンR(DAA-MH44S)スズキ H
9位(-):31.0km/L(DBA-LA150S) ムーヴ ダイハツ
9位(-):31.0km/L(DBA-LA150F) ステラ スバル

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第1位から同率第4位までを解説

1位:スズキ アルト(DBA-HA36S)37.0km/L

画像3。8代目「アルト」。7代目と合わせると、2011年から9年連続の1位。2019年の年間販売台数は、アルト ラパンも含めて7万2162台の第8位。

 スズキ「アルト」は初代が1979年に誕生し、現行の8代目(画像3)は2014年12月22日に発売された。長い歴史を有することを意識してか、全体的なデザインもクラシックな雰囲気を漂わせる。8代目は、後に「HEARTECT(ハーテクト)」と呼ばれる、スズキ車の大多数に採用されることになる新型プラットフォームを初採用。重量比でボディの約46%に高張力鋼板を使用したほか、エンジン、足回り、シートなども徹底的な軽量化が実施され、先代と比較して60kgの軽量化に成功。現行車種の中で最軽量の610~700kgを実現した。37.0km/Lの燃費を達成したのは、2WD+CVT(※5)の「X」、「S」、「L」の3グレードだ(これらの車重は650kg)。このほか、エネチャージなども燃費向上に大きく貢献している。

※5 CVT:Continuously Variable Transmission。直訳すると「連続可変トランスミッション」。ギアを使わない機構による無段変速トランスミッションのこと。

1位:マツダ キャロル(DBA-HB36S)37.0km/L

画像4。7代目「キャロル」。かつてマツダでは自社生産しており、初代「キャロル360」は人気を博した。

 1962年に誕生した初代「キャロル360」から、1995年誕生の3代目まではマツダが自社で生産していた「キャロル」。1998年の4代目からはスズキのOEM供給を受けるようになり、現行は2015年1月30日発売の7代目である(画像4)。本家アルトとの外見上の違いは、ボディカラーのバリエーションが1色少ないこと。アルトにある「ブルーイッシュブラックパール3」を「キャロル」では選べないのだ。なお37.0km/Lを達成したグレードは、2WD+CVTの「GX」、「GS」、「GL」。

 「キャロル」(アルト)はエンジンやCVTも大きく改良されたことで、優れた燃費を実現。直列3気筒「R06A型」エンジンは圧縮比の向上、「EGR(※6)システム」の採用に加え、吸排気系を新規に設計するという大幅な改良が施された。そして「副変速機構付きCVT」にも手が入れられ、車両の軽量化に合わせて変速比の最適化がなされた。なお副変速機構とは、変速比の幅を広げるためのシステムのことだ。

※6 EGR:Exhaust Gas Recirculationの略。排気再循環システムのこと。一度燃焼しているため酸素濃度が低い排気ガスを、再循環させて吸気に混ぜて再度エンジンに送り込むことで、燃焼温度を抑える仕組み。結果として、NOxの発生を抑制できるなどのメリットがある。

第3位:スズキ アルト ラパン(DBA-HE33S)35.6km/L

画像5。「アルト ラパン」。女性ユーザーを意識した作りが特徴で、外見も角の取れた柔らかい形状とパステルカラーとなっている。

 「アルト ラパン」の初代は2002年1月に誕生。現行の3代目(画像5)は2015年6月3日に発売開始となった。初代が若い女性の高評価を得て人気につながったことから、3代目は女性がクルマに求めるものについての徹底的な調査・分析が行われた。そして企画から開発、デザイン、機能・装備、アクセサリーの設定など、さまざまな部分に女性視点が盛り込まれて誕生。例えば、運転席のエアコンの吹き出し口は、髪や肌に優しいという弱酸性のイオン微粒子を吹き出すパナソニックの「ナノイー」を採用している。

 3代目の燃費値35.6km/Lを実現した最大のポイントは、先代と比較して120kgという大幅な軽量化を達成したこと。アルトと同一の新型プラットフォーム「HEARTECT」を採用し、エンジン、ボディ、足回りなどを徹底的に手が入れられた。その結果、2WD+CVTグレード同士で比較して、先代の800kgから680kgへと、約15%にも及ぶ軽量化に成功したのである。さらにエネチャージや「R06A型」エンジンなども、アルト同様に改良して高効率化を実現。それらにより、先代と比較して約37%の向上となる35.6km/Lを達成した。

第4位:ダイハツ ミラ イース(DBA-LA350S)35.2km/L

画像6。2代目「ミラ イース」。2019年の販売台数は、ミラ トコットも含めて8万5288台で第6位。

 「ミラ イース」は、1980年に誕生した伝統あるミラの名を継ぐ新世代の軽自動車だ。初代は、低燃費、低価格、省資源を掲げ、ハイブリッド車、EVに続く”第3のエコカー”(低燃費ガソリン車)として2011年9月に誕生。2017年5月9日に発売された現行の2代目(画像6)は、第3のエコカーというコンセプトをキープしつつ、ダイハツの新コンセプト「DNGA」(※7)を確立するための原点として、挑戦的な意味合いも含めた開発がなされたことが大きな特徴だ。燃費値35.2km/Lを達成したグレードは、2WDの「L」および「B」(全車CVT)。この2グレードの車重は、ミラの時代から長年覇を競い合っているアルトと同じ650kgだ。

※7 DNGA:Daihatsu New Global Architectureの略。ダイハツの新世代プラットフォームおよびクルマ作りのコンセプトのこと。DNGAプラットフォームは、足回りやエンジンなど、構成するすべての要素が同時に新規に開発された。

 2代目「ミラ イース」も、軽量化が低燃費実現の大きなポイントとなった。ボディに採用された骨格構造「Dモノコック」は、補強材の最適配置や小型化、部品同士の結合強化や一体化を図ることで、高強度・高剛性と同時に軽量化を実現。さらに、フロントフェンダーやバックドアなどに樹脂パーツを採用。その上、足回り部品の最適化も実施。「L」と「B」グレードにはさらなる軽量化のため、2017年5月時点での国内最軽量となる13インチのタイヤとスチール製ホイールを新開発した。さまざま工夫が施され、先代との比較で最大80kgの軽量化を達成し、35.2km/Lを実現したのである。

第4位:スバル プレオ プラス(DBA-LA350F)35.2km/L

画像7。スバルの2代目「プレオ プラス」。ダイハツの2代目ミラ イースのOEM車。

 スバル(当時は富士重工業)とダイハツの協力関係は、2007年2月26日まで遡る。スバルが、ダイハツのコンパクトカー「ブーン」のOEM供給を受け、4代目「ジャスティ」として販売したのが始まりだ。その後、2008年4月10日には、トヨタとダイハツと3社での開発・生産における新たな協力関係で合意。その協力関係のもと、スバルはリソースを主力車種に注力するために軽自動車の開発を終了し、ダイハツからOEM供給を受けることに。そのひとつが2代目「プレオ」である。

 1998年登場の初代「プレオ」はスバルの自社開発だったが、ダイハツから7代目ミラのOEM供給を受け、2代目「プレオ」は誕生。そしてミラの派生型としてミラ イースが2011年9月に誕生すると、スバルも翌2012年12月にOEM供給を受け、2代目「プレオ」の派生車種として初代「プレオ プラス」をラインナップ。これにより、ミラ イースはピクシス エポックも加えた3兄弟車となった。

 そして2代目「プレオ プラス」(画像7)は、本家ミラ イースと同日の2017年5月9日にデビューとなった。2代目「プレオ プラス」と2代目ミラ イースとでは、グレードの設定が異なる。ミラ イースでは燃費に最も優れるグレードはLとBの2種類があるが、プレオ プラスでは「F」の1種類のみ。ただしボディカラーに関しては、ミラ イースと同じ9種類が用意されている。

第4位:トヨタ ピクシス エポック(DBA-LA350A)35.2km/L

画像8。ミラ イースのOEM車である「ピクシス エポック」。2019年の販売台数は、「ピクシス」シリーズ合算で2万1821台と第14位。

 トヨタは、2000年代後半の頃から、軽自動車を望む声が大きくなってきたことを感じていた。そこでグループの経営資源を有効活用することを決断。2010年9月28日に、子会社のダイハツから軽自動車のOEM供給を受けることで合意した。

 その後、ダイハツからの軽自動車を「ピクシス」シリーズとして展開。シリーズ第3弾として2012年5月10日に登場したのが、初代ミラ イースをベースとした「ピクシス エポック」である。そしてミラ イースが2017年5月9日に2代目にフルモデルチェンジしたのに合わせ、「ピクシス エポック」もフルモデルチェンジを実施。同月12日に2代目「ピクシス エポック」(画像8)が誕生した。2代目の最も燃費に優れるグレードは「L」と「B」で、ミラ イースと同一。用意されているボディカラーも9色と同じで、大きな差異はないようだ。

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続いて7~9位の5車種

第7位:マツダ フレア(DAA-MJ55S)33.4km/L

画像9。2代目「フレア」。6代目ワゴンRのOEM車である。

 スズキから6代目ワゴンRのOEM供給を受け、2017年2月3日にフルモデルチェンジを実施したマツダの2代目「フレア」(画像9)。本来ならワゴンRと同じ順位のはずだが、ワゴンRの燃費値31.0km/Lに対し、「フレア」は33.4km/Lで単独の第7位となった。これは、マツダが独自に燃費面を改善したというわけではない。理由は、ワゴンRが2019年の年末に車両型式を変更するビッグマイナーチェンジを実施したことに端を発する。このビッグマイナーチェンジで、パワートレインを一新したことから燃費も改善するかに見えたが、前後の衝突被害軽減ブレーキなどの予防安全装備などが追加されたことで重量が増加し、逆に低下。31.0km/Lに下がってしまったのだ。

 OEM車の「フレア」においても、同じタイミングでマイナーチェンジが実施されていたら、「フレア」が単独で第7位ということはなかった。しかしワゴンRは2019年末時点でマイナーチェンジが実施されていたが、「フレア」が実施されたのは2020年1月23日のこと。つまり、年末時点ではマイナーチェンジ前だったので以前の燃費値の33.4km/Lのままだったというのが真相だ。こうして、オリジナル車よりもOEM車の燃費性能がいいという現象が起きたのである。2020年4月現在「フレア」には、2種類のグレード「HYBRID XG」と「HYBRID XS」が用意されており、どちらの2WDモデルとも31.0km/Lとなっている。「フレア」はS-エネチャージを搭載するハイブリッド車だ。

第8位:マツダ フレア クロスオーバー(DAA-MS41S)32.0km/L

画像10。初代「フレア クロスオーバー」。スズキの初代ハスラーのOEM車だ。

 マツダは、スズキからのOEM車のうちアルトがベースのキャロル以外は「フレア」シリーズとして展開しており、スズキのハスラーのOEM車には「フレア クロスオーバー」(画像10)の名が与えられている。初代「フレア クロスオーバー」は2013年12月26日に発表され、2014年1月31日から発売が始まった。「フレア クロスオーバー」はエネチャージを筆頭に、エコクール、アイドリングストップシステムなどを搭載。最も燃費に優れるグレードは、3種類あるうちのノンターボの「XG」と「XS」の2WDモデルだ。当初は29.2km/Lだったが、2015年5月13日のマイナーチェンジで、S-エネチャージを搭載して燃費が向上。両グレードの2WDモデルは32.0km/Lとなった。

 この「フレア クロスオーバー」も、第7位のフレアと同じ理由により、2019年のランキングでは本家のハスラーより順位が上だ。すなわち、まずスズキが2代目ハスラーを2019年12月24日に発表。一方、マツダが2代目「フレア クロスオーバー」を発表したのは2020年1月29日のこと。つまりランキング対象となる2019年末時点での販売車種は、スズキは2代目ハスラーで、マツダは初代「フレア クロスオーバー」のままだったのである。

 2代目ハスラーは、予防安全装備を搭載してクルマの安全性能は大きく向上しているが、燃費は1.6km/Lほど低下。結果、2019年のランキングで2代目ハスラーはベスト10圏外となり、初代「フレア クロスオーバー」が単独の第8位を獲得した。2020年4月現在、2代目「フレア クロスオーバー」には初代から継承した3種類のグレードが設定されており、30.4km/Lの燃費値をマークしているのは「HYBRID XG」と「HYBRID XS」の2WDモデルとなっている。

第9位:スズキ ワゴンR(5AA-MH95S)31.0km/L

画像11。現在のスズキの軽自動車を代表する人気車種の「ワゴンR」。2019年の販売台数は7万8582台で第7位。

 2017年2月1日に登場した、スズキの軽トールワゴンの6代目「ワゴンR」(画像11)。「ISG」(※8)の高出力化とリチウムイオンバッテリーを大容量化したマイルドハイブリッドシステムを搭載した。なお、6代目では、従来S-エネチャージと呼ばれていたこのシステムを、マイルドハイブリッドと呼ぶようになった。その性能は、発進から時速100kmまでの加速時にモーターがエンジンをアシストするというもの。また、発進時などのクリープ走行を10秒間だけモーターのみで行うことも可能だ。

※8 ISG:Integrated Starter Generatorの略。「モーター機能付き発電機」のこと。三菱電機が開発した、ハイブリッド車向けのスターターと発電機の機能を併せ持ったシステムである。

 副変速機構付きCVTのギア比は、加速性能と燃費性能を両立するよう最適化がなされた。さらに、軽量かつ高剛性を特徴とするスズキの新型プラットフォーム「HEARTECT」を採用し、ボディや足回りの軽量化も実施。先代との比較(2WD車同士)で約20kgの軽量化が達成された。「ワゴンR」には「HYBRID FZ」と「HYBRID FX」のふたつのグレードがあり、どちらの2WDモデルも31.0km/Lを計測している。

第9位:ダイハツ ムーヴ(DBA-LA150S)31.0km/L

画像12。ダイハツの6代目「ムーブ」。2019年の新車販売台数は12万2835台で、年間ランキングは第5位だった。

 「ムーヴ」は1995年に初代が誕生し、現行の6代目(画像12)は2014年12月12日に発売された。「ムーヴ」の燃費性能の向上も軽量化がポイントだ。ミラ イースと同じ軽量高剛性ボディ骨格構造「Dモノコック」を採用したほか、フロントフェンダー、バックドア、ルーフスポイラーなどの樹脂化も実施。それらにより、従来と同等の衝突安全性能を確保しながら、ボディで20kgの軽量化を実現した。

 そしてエンジン回りでは、イオン電流で燃焼状態を把握することで再循環させる排気ガスを最大化すると同時に、その排気ガスを水冷式クーラーで冷却することでノッキングを抑制する「i-EGRシステム」で燃費を向上。さらに、エンジン冷却水とCVTフルードを相互に熱交換して温度を最適化させ、エンジンの燃焼効率とCVTの変速効率を向上させる機構も搭載した。そのほか、気筒別燃焼制御、低粘度CVTフルード、温度条件に応じた最適統合制御、吸気温度の低減といった技術が投入されている。

 また6代目は、デザイン段階から空力を考慮して設計されたことも特徴的といえるだろう。空気抵抗の大きいトールワゴンではあるが、フロントアンダースポイラーやスポイラー一体型バックドア、ドアミラー、ルーフアンテナなど、複数の空力改善パーツを装備し、空気抵抗係数(Cd値)を従来比で約10%低減した。これらに加え、減速時の運動エネルギーでバッテリーに充電する「エコ発電制御」などにより、「X」と「L」グレードの2WDモデルが31.0km/Lの燃費値をマークした。

第9位:スバル ステラ(DBA-LA150F)31.0km/L

画像13。スバルの3代目「ステラ」。ダイハツの6代目「ムーヴ」のOEM車。

 2006年6月14日に発売されたスバル(当時は富士重工業)の初代「ステラ」は、同社が自社生産した最後の軽乗用車だ。その後、スバルは軽自動車の開発を終了し、ダイハツからのOEM供給を受ける道を選択。5代目ムーヴのOEM供給を受け、2011年5月24日に2代目「ステラ」は登場した。そしてムーヴが2014年12月12日に6代目にフルモデルチェンジしたのを受け、スバルも同日に「ステラ」を3代目(画像13)にフルモデルチェンジ。31.0km/Lの燃費値を記録したのは、グレード「L」、「L スマートアシスト」、「G スマートアシスト」の3種類。上級モデル「ステラ カスタム」の「R スマートアシスト」も31.0km/Lだ。

 本家ムーヴとの外見上の大きな違いは、「ステラ」はボディカラーのホワイトが選べないところ。画像13は一見するとホワイトだが、「パール・ホワイトIII」という異なるカラーだ。一方、上級グレードの「ステラ カスタム」は、本家の上級グレード「ムーヴ カスタム」とボディカラーの差異はなく、モノトーンで全6色、ツートーンで5パターンが用意されている。


 軽自動車の燃費改善は、ここのところ足踏み状況が続いている。2019年のベスト10の平均燃費値は34.0km/Lだが、実は2015年時点で34.1km/Lを達成している。この5年間は、34.0~34.6km/Lの間を行き来している状態だ。これは、近年の軽自動車は、衝突安全性能の強化や、予防安全装備などの搭載で車重が増加傾向にあり、フレームやボディの軽量化、パワートレインの高効率化などを実施しても追いつかないことが理由のように思われる。

 では、普通・小型車のように本格的なハイブリッドシステムの搭載が有効かというと、これまた難しい。現在の軽自動車は予防安全装備などの搭載で車両価格が上がっており、そこに本格的なハイブリッドシステムを搭載すると、さらに車両価格の引き上げにつながってしまう可能性が高いからだ。その結果、軽自動車の魅力のひとつである低価格が失われかねない。自動車メーカーとしても悩ましいところだろう。

 今しばらくは、フレームやボディの超高張力鋼板や樹脂の使用比率を増やして軽量化したり、パワートレインをさらに高効率化したりすることで、燃費性能をわずかずつでも向上させていくしかないようだ。

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