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最終更新日:2019.07.12 公開日:2019.07.12

2019年のお盆渋滞のピークはいつ? NEXCO東日本は渋滞予測をAIが判断

お盆の時期が迫ってくると、気になるのが高速道路の渋滞情報。高速道路各社は毎年どのようにして予測しているだろうか。昨年末、AI技術を取り入れたというNEXCO東日本に最新の渋滞予測について聞いた。

文・大谷達也

AIの導入で渋滞予測はどう変わる?

 連休などで必ずといっていいくらい起きる渋滞。皆さんも経験されたことがあるのではないでしょうか? 私もモータースポーツ・イベントの取材で出張に出かけたおりに長い渋滞の列に巻き込まれ、約束の時間に遅れそうになったりイライラしたことが何度もあります。

 そんなときに、各高速道路会社などが発表する渋滞予測を参考にします。渋滞予測はこれまで、渋滞予報士と呼ばれる専門職の方々が過去の渋滞データ、曜日の配列、近年の交通状況、近隣でのイベント開催などを参考に手作業で行ってきましたが、ここに大きな技術革新の波が訪れようとしています。これまで人手に頼ってきた作業の一部がAI(人工知能)に置き換えられようとしているのです。

 昨年末にNEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)は「AIを用いた交通混雑期等の渋滞予測技術の開発に成功した」と発表しました。

 同社によれば、2004年から2018年までに関越自動車で起きた渋滞データや各年カレンダーパターン(曜日配列および祝日配置など)をコンピューターに読み込ませ、新たに開発したシステムで2018年のゴールデンウィークとお盆の渋滞予測を行ったところ、見逃し率(事前に予測できなかった渋滞の発生率)と空振り率(発生を予測したのに発生しなかった渋滞の確率)は、いずれも渋滞予想士の弾き出した結果とほとんど同じで、システムの有用性が確認されたというのです。

<参考資料(提供:NEXCO東日本)>
AIを使用した渋滞予測の方法
 AIによる渋滞予測の開発は関越自動車道を対象としており、2004年から2018年までの約14年分の以下【1】~【2】の大量のデータを学習に使用した。学習に際しては、NEXCO東日本の渋滞予測のノウハウと、グリッドのモデルエンジニアリング技術を掛け合わせて教師データを作成している。
【1】トラフィックカウンターと呼ばれる交通量計測装置から得られる5分毎の速度、交通量データ
【2】各年のカレンダーパターン(曜日配列及び祝日配置等)

<参考資料(提供:NEXCO東日本)>
渋滞予報士による従来の渋滞予測の方法
 渋滞予報士が行う渋滞予測は、大きく分けると以下の【1】~【4】の作業に分類される。
【1】過去渋滞実績の重ね合わせ(3年分)
【2】過去渋滞実績の精査
【3】直近の交通動向の加味
【4】補正作業(近接する渋滞の結合、接続する路線への影響考慮)

AIの登場で渋滞予想士はいなくなる?

 実は、NEXCO中日本(中日本高速道路株式会社)も今年に入ってAIを活用した渋滞予測技術の開発に着手。今年のお盆の交通混雑期を利用してシステムの有用性を検証すると発表しています。

 AIを用いた渋滞予測技術の開発に取り組む両社は、システムの活用によって渋滞予報士(NEXCO中日本の場合は”高速道路ドライブアドバイザー”)の作業を軽減し、より効率的で高度な渋滞予測の実現に向けて努力すると語っています。つまり、当面の間、AIは人間の作業のお手伝いをするだけで、人間の仕事がAIにとって代わられるわけではなさそうです。

 現在、開発中のAI渋滞予測は、すでにご紹介したとおり、これまで人手で行っていた作業をAIに置き換えるのが中心で、これまでになかったロジックで渋滞を予測するわけではありません。”打率”が従来とほとんど変わらないのはおそらくこのためで、こうした傾向は今後もしばらく変わらないでしょう。

 ちなみに「これまで渋滞予報士の誰もが思いつかなかった、AIが独自にはじき出した渋滞予測に関する特異事例はありますか?」とNEXCO東日本の担当者に質問したところ、「あくまで過去の実績を基にAIを活用しているので、特異なものは特にありません」という回答でした。

 今後は、気象情報や事故発生状況など、新たな学習データの可能性を検討し、更なる精度向上を目指ざしていくそうです。いずれにしても、さまざまな新技術が誕生してより精度の高い渋滞予測が実現され、少しでも渋滞が緩和されることが期待されます。

<参考資料(提供:NEXCO東日本)>
AIによる渋滞予測の精度

 2018年の関越自動車道における交通混雑期(GW、お盆)の、AIと渋滞予報士による渋滞予測を実績とを比較したところ、予測の空振り率※、見逃し率※ともに約2割程度となり、渋滞予報士による予測とほぼ同等の精度で予測できていることが確認された。見逃し率:「見逃し回数(渋滞は発生しないと予測したが、実際は発生した渋滞実績回数)」/「全体渋滞実績回数」
空振り率:「空振り回数(渋滞が発生すると予測したが、実際は発生しなかった渋滞予測回数)」/「全体渋滞予測回数」

 また、2018年の関越自動車道の年末年始の渋滞予測について、AIによる渋滞予測と渋滞予報士による渋滞予測とを比較したところ、約8割が同様の傾向の予測となった。

今年のお盆期間の渋滞はどうなる?

 7月10日、高速道路各社(NEXCO東日本/NEXCO中日本/NEXCO西日本/JB本四高速/(公財)日本道路交通情報センター)は、お盆期間(令和元年8月8日(木)~8月18日(日)の11日間)における高速道路での渋滞予測を発表しました。

 今年は、下り線では8月10日(土)・11日(日)に、上り線では14日(水)・15日(木)に渋滞が多発すると予測。渋滞を避けるため高速道路各社では、下り線は8月13日(水)・14日(火)、上り線は16日(金)・17日(土)の利用を検討するよう、呼びかけています。

 また10km以上の渋滞はお盆期間中、下り線で231回(前年比+7回)、上り線で289回(+15回)、上下線合計で520回(+22回)発生すると予測。下り線のピークは10日の44回、上り線は15日の36回となっています。

2019年のお盆の高速道路渋滞のピークは
下り 10日(土)
上り 15日(木)

 高速道路各社が発表した、30km以上の特に長い渋滞発生予測は下記表をご覧ください。

■高速道路各社発表の特に長い渋滞発生予測

会社区分 上下線 道路名 渋滞ピーク日時 ピーク時渋滞長 渋滞発生箇所
東日本 下り線 E17関越自動車道 8月11日(日) 08時頃 40km 東松山IC付近
上り線 E4東北自動車道 8月14日(水) 17時頃 45km 上河内SA付近
中日本 下り線 E20中央自動車道 8月10日(土) 05時頃 40km 相模湖IC付近
E1東名高速道路 8月10日(土) 06時頃 40km 秦野中井IC付近
上り線 E1東名高速道路 8月17日(土) 17時頃 35km 大和トンネル付近
西日本・本四 下り線 E3九州自動車道 8月10日(土) 10時頃 30km 筑紫野IC付近
上り線 E1名神高速道路 8月10日(土) 09時頃 40km 草津JCT付近

※道路交通状況は、事故や気象などの影響で渋滞が発生する場合があり、刻々と変化します。最新の道路交通情報および渋滞予測情報は、以下のサイトをご利用ください。
NEXCO東日本(https://www.driveplaza.com/)
NEXCO中日本(https://www.c-nexco.co.jp/)
NEXCO西日本(https://www.w-nexco.co.jp/)
JB本四高速(https://www.jb-honshi.co.jp/)
日本道路交通情報センター(http://www.jartic.or.jp/)

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