ソフトバンク・SBドライブの自動運転バス「NAVYA ARMA」に試乗!【人とくるまのテクノロジー展2019】
近年、地方の人口流出による利用者の減少やドライバーの高齢化、人手不足などにより路線バスの維持が困難になってきている。そんな問題を解決する手段として期待が集まる「自動運転バス」の試乗会が人とくるまのテクノロジー展で開催された。
ソフトバンク株式会社の子会社であるSBドライブ株式会社は5月22日~24日の3日間、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2019 横浜」において自動運転EVバス「NAVYA ARMA(ナビヤ アルマ)」の試乗会を開催している。本記事では、NAVYA ARMAの試乗会の様子について紹介しよう。
NAVYA ARMAとは
「NAVYA ARMA」は、フランスの自動運転バスメーカー「Navya(ナビヤ)」が開発した自動運転専用の電気自動車。GPSなどで自車位置を認識し、搭載されたレーザーセンサー「LiDAR(ライダー)」で障害物を検知。SBドライブが開発した「Dispatcher(ディスパッチャー)」と呼ばれる遠隔管理システムにより、あらかじめ設定したルートを自律走行することができる。2016年からスイス・シオンの公共交通機関として導入されているほか、日本では東京電力・福島第一原子力発電所に3台導入されているという。
NAVYA ARMAに搭載されたLiDARは全部で8基。車両の上部には、対象物を立体的に認識する「3D LiDAR」を前後に1つずつ。車両の下部には、近くの対象物を平面で認識する「2D LiDAR」を前後2つずつ、側部左右1つずつ搭載している。これらで周囲の環境を検知し、障害物や歩行者などが近づいた場合は自動で停止するそうだ。
また、ルーフに搭載されたGPSアンテナで自車位置を認識。オドメーターとIMU(慣性計測装置)で速度を測定して制御する。
車両は、前後対称となったデザインで、前後どちらにも走行することが可能。しかし日本の公道を走るためには、現行法では前方を定める必要があるほか、車両にバックミラーやテールランプ、運転席を設置する必要がある。今回の試乗車にもバックミラーが設置されていた。また、試乗用とは別に展示されていた車両では、後方側のヘッドランプが隠され、テールランプなどが設置されていた。
タッチパネル操作で運転開始。乗り心地はスムーズ。
試乗会は、SBドライブの添乗員とともにNAVYA ARMAに乗車し、パシフィコ横浜の屋外敷地内のルートを往復340m走行するというもの。客席は前後4席ずつが向かい合うように設置され、スキー場のゴンドラのような雰囲気である。また乗降口の正面に折り畳みの補助席が3つ、吊り革が4本あり、15人の乗車が可能である。今回の試乗では、添乗員を合わせて9人が乗車した。
バスのドアはバス停に到達すると自動で開閉するが、ドア枠の開閉ボタンを使って操作することもできる。扉は大きく左右に開くので乗り降りしやすかった。
バスにはあらかじめ走行ルートが登録されていて、上写真のようにタッチパネルで操作する。添乗員がバス停を選ぶと「GO」と書かれたボタンが表示され、タップすると動き出した。動き出しはググっと揺れを感じたが、走行中はいたってスムーズ。停車する時もゆっくりと停まるので、危なさは感じなかった。
バス停やルートの設定は、車両に搭載されたコントローラーで人間が運転してあらかじめ走行した際の周囲の測定データとGPSのデータを使用して指定する。今回の試乗会では、ほぼ直線のルートを時速7~8キロで走行した。
運行情報は、別の場所で監視することが可能。車内天井に設置された360°カメラで車内の乗客が着席したか、転倒していないかという安全を確認することもできる。上写真中央に表示されている「ヒットレシオ」というのは、事前走行のデータと現在の走行データの合致度を表している。走行中に障害物などが現れ、この数値が30%以下になると停止するのだという。このような仕組みなので、原っぱのような何もない場所、ずっと同じような塀が続く場所などは、測定する対象物がないので計測できず走行が困難だそうだ。
GPSの電波が遮断されるトンネルや橋の下のような場所では、自車位置を認識できなくなるため、運行に支障をきたす場合もある。SBドライブは、GPSが遮断された際やシステム故障の対策を進め、将来的には添乗員なしの自動運転を目指すという。
もし添乗員なしの自動運転バスが路線バスとして運行されれば、ドライバー不足の解消、人件費削減によるコスト減、路線バスの運行本数の拡大はもとより、低料金化にもつながるだろう。今後の自動運転バスの発展に期待したい。