「Anyca(エニカ)」に見るカーシェアリングの今
シェアリングの普及で一番大きな影響を受けるとも言われている自動車産業。その今後を見据えるべく登場したのがDeNAが立ち上げたカーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」。その利用状況から、シェアリングの可能性とクルマの未来についてレポートする。
シェアリングの普及で一番大きな影響を受けるとも言われている自動車産業。その今後を見据えるべく、2018年11月10日、日本自動車整備協同組合連合会(以下、日車協連)青年部全国大会茨城の会場にて、戦略構築サポートセミナーが開催された。その中から「DeNAが考えるカーライフの未来」をピックアップ。DeNAが立ち上げたカーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」の利用状況から、シェアリングの可能性とクルマの未来についてレポートする。
DeNAのシェアリング事業「Anyca(エニカ)」がどのように使われているのか、気になる現状をレポートする。
「所有」から「共有・利用」へ
トヨタが11月1日にBtoCのカーシェアリングサービスを開始すると発表するなど、自動車のトレンドが「所有」から「共有・利用」へとシフトする可能性が見えてきた。そんな中、DeNAが手掛けているオートモーティブ事業についてのセミナーが行われた。個人間カーシェアリングアプリ「Anyca(エニカ)」の事業責任者、馬場光氏が登壇。AIやテクノロジーにより変わりゆくモビリティ事業について、開発最前線の現状も交えつつ話を行った。
「Anyca(エニカ)」とは
今回のセミナーのメインテーマとなった「Anyca」は、DeNAのシェアリング事業。クルマを使わない間にシェアしたいオーナーと、必要な時に好みのクルマを使いたいドライバーをマッチングさせる新しいカーシェアサービスとして、2015年9月にサービスを開始。その後、3年で会員17万人、登録車数6000台(内2000台は東京都)を突破している。
カーシェアリングアプリ「Anyca(エニカ)」都道府県別登録車両台数 出典:DeNAプレスリリース(PR TIMES)
「Anyca」に登録されている車はさまざまだ。国内外の乗用車をはじめ、スポーツカーや旧車のほか、痛車と呼ばれる個性的なものまで多種多様。気分やシチュエーションに合わせたチョイスが可能となっている。また、最近では「Anyca」でのカーシェアを前提とした車種選びをするカーオーナーも出てくるなど、ユーザーの認知も徐々に広がってきているという。
料金はオーナーが自由に設定。「好きな車を手軽に乗れる」と利用者からも好評
「Anyca」はカーシェアの料金をオーナー自身で設定できるのも大きな特徴。主に設定されいてる価格は、休日24時間5000円~1万2000円が54%以上とかなりリーズナブル。BMWなどの車種が、24時間5000円程度から提供されていることなども人気の理由になっている。
利用者アンケートでは86.5%が「乗ってみたかった車種に乗れる」と回答。利用の多かった車種トップ3が「BMW 3シリーズ」「ポルシェ カイエン」「BMW Z4」という結果にも「あこがれの車に乗りたい」というユーザーの傾向が表れている。
2017年個人間カーシェア人気ランキングのベスト10がこちら。あこがれの車に人気が集まる傾向があるようだ。
出典:DeNAプレスリリース(PR TIMES)
「安心安全なカーシェア」普及のために
個人間カーシェアを普及させるにあたり「ユーザーの不安をなくし、安心安全なカーシェアという認知を獲得することが必要」との観点から「Anyca」では、サービス説明会やプロのカメラマンを招いた無償のクルマ撮影会を毎週開催。他にもユーザー交流イベントを毎月行うなど、さまざまな取り組みを継続的に行っている。
また、オーナーとユーザー間でトラブルが起きないように、支払いはクレジットのみ。免許証とクレジットカードの名義人確認などを利用時のルールとして設けている。事故に関しては「Anyca」がプラットフォームとなり、事故修理分配センターの役割を果たす。さらに、オーナーとユーザー間の物理的な鍵の受け渡しを省くためのスマートキー機能を用意。専用のハードウェアデバイスのサービスを開始するなど、利便性の向上が図られている。
将来的なビジョンは?
「Anyca」のベースとなるのは、車を持つオーナーと車に乗りたいユーザーとをマッチングするアプリ。インターネット環境の普及により生まれたサービスだ。近隣国のアジアを含め海外においては、世界的に活用されている自動車配車アプリ「UBER(ウーバー)」をはじめとするライドシェア事業が、すでに生活の足としてなくてはならないものとなっている地域もある。各国での現地視察においても「ライドシェアアプリを活用すれば、安くて、便利で、安心」との声も増えているとのこと。インターネット環境の活用を前提として成立しているモビリティサービスが、すでに一般化し始めているのだ。
「Anyca」は、そうしたライドシェア事業実現への第一歩。日本国内の個人間カーシェアに関しては、まだ都市部に利用者が集中しており、地方での運用には時間がかかるとの予想もある。そんな中、DeNAは将来的に公共交通機関や提携企業などと連携したBtoCビジネス施策まで視野に入れているという。