一味違ったクルマ撮影テクニック
携帯電話にカメラ機能が搭載され、写真撮影がとても身近になった昨今。いろいろな場所へ出かけて、気軽にクルマの写真を撮る機会も多くなっているのでは? でも、自分が撮った写真を見てみると、いつもと変わり映えがしない。そんな経験は誰にでもあるはず。そこで今回は、ちょっとした工夫だけで、一味違ったクルマ写真が撮れるテクニックを紹介する。
よくあるクルマ写真
さて、テクニックの話をする前に、誰もがつい撮りがちなクルマ写真をお見せしよう。
ありふれた写真[その1]車体の斜め前方から、フロント、サイドを入れたクルマの写真。
この画角だと、車の特徴を表すフロント部分と、ボディラインを見せることができるサイドがまとめて収められる。そのため、ほとんどの人がまずは一枚、こういったアングルで撮るのではないだろうか。中古車のチラシなどでもよく目にするこの構図。「車の状態を見せる」という目的なら良いのだが、どうしてもワンパターンになってしまい、なんだか味気ない気もする。
ありふれた写真[その2]車体を真正面から撮影した写真。
これもよく撮りがちなアングル。正面からの写真は、フロント部分を強調したくて撮ることがほとんどだろう。まあ、よくありがちなアングルであると言える。でも、せっかく撮るなら、自分なりにバリエーションやアクセントを加えたいもの。そのためには、どのように撮ればよいのだろうか?
→ 次ページ:
これらの写真の印象がどう変わるのか?
構図を変えれば、こんなに変わる!
人の目というのは地面に水平に付いているので、水平のもの、また垂直なものに対して安心を感じるようにできている。そのため、私たちは無意識に写真を水平に撮ろうとする。傾いていたりすると、強い違和感と不安を感じるためだ。しかし、これが同じような写真ばかりになってしまう要因の一つだと考えられる。
では「一味違った写真を撮る」にはどうすればいいのか。ひとつの答えは「あえて傾けて撮る」だ。実際にどういう風に変わるのかを見てみよう。
地面からカメラを反時計回りに30度ほど傾けて撮影した写真
ジャーン! こちらの写真だが、1ページ目の「よくあるクルマ写真」から打って変わって、ダイナミックな迫力を感じないだろうか? 水平にクルマを撮るだけでは、単に止まっているクルマでしかない。だが「傾けて撮る」という、ほんの少しの工夫をするだけで、これだけ印象が変わってくる。あえて不安定な画角にしたことで、対角線となるいちばん長い幅に車の全長が目いっぱい表現され、のびのびとした迫力のある車の印象に仕上がった。クルマのイメージは、写真の雰囲気でここまで変わるのだ。
レンズ特性を活かす
さて、続いては、さきほどの「ありふれた写真」の2枚目を、もう少し工夫できないか。現在のスマートフォンのカメラに搭載されているレンズは、ほとんどが広角寄りのレンズとなっている(フルサイズ換算でおよそ24㎜~30㎜)。広角寄りのレンズとは、その名前の通り写る範囲が広いレンズ。広角寄りのレンズは幅広い構図が撮れるので便利だが、弱点は被写体が実像よりも歪んで写るという点だ。カメラから遠いものは小さく、カメラに近いものは大きく映るという特性が広角レンズにはある。先ほどの写真でも、その傾向は見られていたが、中途半端に鼻先が強調されたために、もったりとした印象になってしまっていた。
そこで、広角寄りのレンズを搭載した、スマートフォンの特性を逆手に取ったテクニックが「あえて歪ませて撮る」だ。実際にどういう写真が撮れるのかを見てみたい。下の写真は、普段の目線では感じることができない見え方となっているため、とても新鮮に映るのではないだろうか。
スマートフォンのカメラでギリギリまでアップにして撮影。設定等はデフォルトのまま。
人の目の補正能力はかなり高いため、ゆがんだ光景をそのまま感じることはまずない。つまり、この写真に反映されたゆがんだフォルムは、普段の目線では感じることができない見え方となっているのだ。それだけで、まるで迫ってくるようなインパクトを見る人に与えてくれる。
ちょっとの工夫だけでSNS映えも!
ここで紹介したテクニックは、機材や加工も一切加えることなく、普段の撮影にほんの少しだけ工夫を加えたものばかり。これらのテクニックを使ってSNSなどに投稿すれば、普通に撮影した写真よりずっと強いインパクトを残すことだろう。
今からでもすぐに実践できるテクニックとなっているので、今後の撮影の機会にぜひ活かしてみてほしい。
2018年6月26日(雨輝・山里 真元)