花を擬人化しインタビューすることでその生態に迫る異色の問答集「花暦」
瀬尾英男 著『花暦 INTERVIEW WITH PLANTS』B6判ハードカバー/120P/1,600円+税(京阪神エルマガジン社)
ウメ、サクラ、アジサイ、ヒマワリ‥‥日本でおなじみの花の驚くべき生態をユーモラスな問答形式で紹介した異色の問答集『花暦 INTERVIEW WITH PLANTS』。まったく新しいタイプの”花図鑑”と話題を集めた前作『ボタニカ問答帖』(2011年)の続編を、瀬尾英男氏が上梓した。
[ウメ]写真:斎藤圭吾
粧い(よそお)、貢がせ、毒を盛る‥‥驚くべき花の生態を粋な対話で
生きとし生けるものは、対話しながら共存していくのが習わしではないだろうか。動物はいわんや、草花を愛でて話をする人もいる。特に花のもつ独特の形や生態は、どことなく人を思わせるものがある。
―ちなみに、名はなぜクチナシと?
「実が熟しても、口を開けないので」
―あぁ、それで口無し、と。
「ええ。数ある説のひとつですけど。でもそんな故事から、碁盤の脚はあたしの実を模した形をしていましてよ」
―ん? それはどうして?
「外野の口出しはご無用、と」
―なるほど、隠喩か。ところで実が口無しなら、タネ蒔きはどうやって?
「いいところにお気づきに。あたし、実をあえて鳥に食べさせますの」
クチナシの実は多角の独特な形状で、中には粘り気のある果肉と多数の種子が詰まっている。この実が熟すと外被がやわらかくなり、鳥がくちばしでつついて中身を食べる。そして種子は鳥のフンとともに排出されて、方々に蒔かれるという寸法だ。
匂い立つ女[クチナシ]からの引用である。登場する植物は、遅刻する女[フクジュソウ]/飼いならす女[ツツジ]/吸い付く女[ノウゼンカズラ]/騙される男[キク]/見くだす女[カトレア]など24種。粧い、貢がせ、毒を盛り‥‥驚くべき花の生態が、悲喜こもごもの打ち明け話で綴られる。
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二十四節季の花ごよみ
人気雑誌『& Premium』で2年間連載した文章に、節気ごとのならわしや季語、時候の挨拶などをまとめた歳時記と、カメラマン斎藤圭吾による情感溢れる写真と絵画を合わせて構成された本書は、見た目も麗しいビジュアルブックに仕上がっている。
[アジサイ]の章の歳時記
『花暦』を読んで感じるのは、著者から生き物へ注がれる独特の視点と愛である。瀬尾氏とは10年ほど前に一緒に仕事をしたことがある。当時、記者はベルリンの部屋に「ほくろ」という名前の金魚を飼っていた。魚好きの氏はほくろを覗き込み、やさしい声で何度も何度も名前を呼び続けていた。それこそ自分を見て反応(対話)してくれるのを待つように。花暦もそのように節気を彩る24の花との対話によって生まれたに違いない。
[チューリップ]写真:斎藤圭吾
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プレゼントのお知らせ(※プレゼント応募は終了しました)
花暦 INTERVIEW WITH PLANTS
本稿で紹介した、瀬尾英男「花暦 INTERVIEW WITH PLANTS」を3名様に、抽選でプレゼントいたします。
今回は特別に、著者・瀬尾英男氏のサイン入りです!
※書籍「花暦 INTERVIEW WITH PLANTS」のプレゼント応募は終了しました。たくさんのご応募ありがとうございました。