【静岡】2018/6/2~7/15 2つのコレクションから約250点が集結した、静岡市美術館だけの豪華な「ミュシャ展」
左:アルフォンス・ミュシャ ポスター《「スラヴ叙事詩」展》(部分) 1928年 チマルコレクション 右:アルフォンス・ミュシャ 写真《自画像(パリ)》(部分) 1898年 チマルコレクション
優美で幻想的な女性の絵で有名なチェコの画家アルフォンス・ミュシャ(1860~1939)。ミュシャと同郷の医師チマル博士の親子3代にわたる「チマル・コレクション」から約150点、さらに静岡市在住のミュシャ作品の世界的コレクター尾形寿行氏の「OGATAコレクション」から約100点。計250点もの作品が展示される豪華な内容の『ミュシャ展~運命の女たち~』が、静岡市美術館にて7月15日まで開催されている。
ミュシャ作品を彩った女性たち
「運命の女たち」という副題が示すとおり、展覧会では初恋の人に始まり、栄華を極めたパリ時代や祖国で過ごした晩年の作品に登場する女性など、ミュシャの作品を彩った女性たちに焦点が当てられている。
アルフォンス・ミュシャ 素描《少女と鳩》 1899年 チマルコレクション 作品はパリ時代に描かれたもので、本巡回が日本初公開。
異母兄と異母姉、2人の実妹という女性に囲まれた環境に育ったミュシャは、中学生の頃から聖歌隊に参加し芸術に親しんだ。その後19歳でウィーンに渡り、舞台装置の工房で働いたり、城の室内装飾の仕事に従事したりもした。
展示の章『1章:幼少期 芸術のはじまり』では、アール・ヌーヴォー期の作風を予感させる初恋の人のイニシャル文字のデッサン画、幼なじみの少女の素描などミュシャの貴重な初期の時代の作品が紹介されている。
19世紀末にヨーロッパで起こった芸術運動アール・ヌーヴォーの旗手といわれるミュシャが、どのようにあの繊細で装飾に彩られた独自の絵画表現にいたったかを垣間見るようで興味深い。
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一夜にして時代の寵児に
女優サラ・ベルナールとの運命の出会い
1887年にパリに出たミュシャの名を一夜にして有名たらしめたのは、大女優・サラ・ベルナールの劇場ポスターである。
1894年のクリスマス、印刷業者ルメルシエがサラ・ベルナールの主演する舞台「ジスモンダ」のポスター制作を、急遽ミュシャに依頼した。画家たちがクリスマス休暇で出払っており、ミュシャが抜擢されたという運命的なエピソードは伝説として語り継がれている。1895年1月1日ポスターがパリの路上に貼り出されるやいなや大評判になり、ミュシャは一夜にして時代の寵児となる。
2mを超える圧巻のポスター群
アルフォンス・ミュシャ ポスター《ジスモンダ》 1894年 チマルコレクション
《ジスモンダ》は当時”女神”ともいわれたサラ・ベルナールの女優としての絶対的権威を示すかのように崇高な様子で描かれている。調和が保たれた色調や細密な背景の装飾など、このポスターの”優雅さ”は、当時、パリの街頭ポスターに革新的スタイルをもたらした。ミュシャの非凡な創造性とセンスはサラ・ベルナールによって開花され、夜な夜なポスターが剥がされるほど人気を博したという。サラ・ベルナール自身もポスターに魅了され、ミュシャに舞台や衣装のデザインとポスター制作に関する6年契約を申し出た。
展覧会の『2章:パリ 人生の絶頂期』では、《ジスモンダ》をはじめ、《椿姫》、サラが男装している《ロレンザッチオ》、《サマリアの女》、《メディア》、同じくサラが男役ハムレットを演じた《悲劇の物語デンマーク王子ハムレット》など高さ約2m、ほぼ等身大のサラ・ベルナールの劇場用ポスターを堪能することができる。
ミュシャのパッケージデザインも展示
アルフォンス・ミュシャ ポスター《ジョブ》 1896年 チマルコレクション
ミュシャの作品の中で最も有名なパリ時代のポスターやパッケージデザインなど商業作品は、新しい価値を見出すことになった。その中のひとつに、JOB(ジョブ)社のタバコの巻き紙のポスターが挙げられる。象徴的な女性の優美な佇まいと独創的な模様の組み合わせは『ミュシャ様式』と称され、アール・ヌーヴォーの中で重要な位置を占めることとなる。
展示では、ポスターだけでなく静岡展だけの特別出展であるOGATAコレクションから、ミュシャが手がけたパッケージデザインの実物として、ホイットマン社のチョコレート缶容器(1900年)やランスの香水「ロド」(1897年)を目にすることができる。
故郷へ
アルフォンス・ミュシャ ポスター《モラヴィア教師合唱団》 1911年 チマルコレクション
展示は『3章:アメリカ 新たな道の発見』を経て、『4章:祖国への帰国と祖国に捧げた作品群』、ミュシャが後半生にスラヴ民族とその文化に身を捧げた作品世界へとビジターを導く。
約16年の歳月を費やして完成させた20点の絵画からなる連作《スラヴ叙事詩》展のポスターや《モラヴィア教師合唱団》など、彼の晩年の作品に描かれた女性は、アール・ヌーヴォー期を彷彿とさせながらも、より民族主義的な雰囲気をたたえている。その中に人は、50歳で帰国したミュシャの祖国への思いを感じとるかもしれない。
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招待券プレゼントのお知らせ
ミュシャ展~運命の女たち~
【会期】
2018年6月2日(土)~7月15日(日)
【開館時間】
10:00~19:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
【休館日】
毎週月曜日
【会場】
静岡市美術館(静岡市葵区紺屋町17-1葵タワー3F)
【入場料】
一般1000円 他 ※詳細は美術館HPにてご確認ください
【アクセス】
JR静岡駅北口より地下道を利用して徒歩3分 他
【展覧会公式HP】
http://www.shizubi.jp
「ミュシャ展」の招待券プレゼント応募は終了しました。
賞品は抽選の上、2018年6月14日に発送しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。