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ライフスタイル最終更新日:2018.03.23 公開日:2018.03.23

【2018/3/13~6/17】 あのダ・ヴィンチも夢中になった人体の謎に迫る特別展「人体」

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頭頸部のワックスモデル 19世紀 日本歯科大学 医の博物館所蔵

 私たちを生かし、動かす人体の仕組みに迫る特別展「人体ー神秘への挑戦ー」が6月17日まで、東京の国立科学博物館にて開催されている。

自分を知る、それは人類の永遠のテーマ

 私たちは、日々どのように生き、動き、行動しているのか人体の構造を詳しくは知らない。人体を知るということは、どうしたら身体が上手く機能し、より良く生きることができるのかに繋がる。本展示では、ルネサンス期の解剖学から技術の発達とともに進化し続ける人体研究の歴史、過去から未来へと続く人類の神秘への挑戦の道が紹介されている。

ダ・ヴィンチも夢中になった解剖学

 ヨーロッパでは長い間、人体を解剖することはタブー視されていた。しかし、ルネサンス期(14~15世紀頃)に医学者らが人体解剖に踏み出したことで人体研究は革新的に進化を遂げた。会場には、ルネサンスの巨匠・レオナルド・ダ・ヴィンチの貴重な解剖図などが展示してある4つの「ダ・ヴィンチ室」が設置されている。彼は画家として人体を描くための基礎知識を求めたが、実際に死体を解剖するうちに、人体の構造を解明することにのめりこんだと言われる。

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レオナルド・ダ・ヴィンチ「解剖手稿」より頭部断面、脳と眼の結びつき部分 1490-92年頃 ウィンザー城王室コレクション所蔵 Royal Collection Trust/© Her Majesty Queen Elizabeth II 2018

 ダ・ヴィンチの解剖図「解剖手稿」は、正確な観察記録であるばかりでなく、彼自身が人体の構造と機能について解釈をめぐらせた様子が窺えるのが興味深い。様々な分野に業績を残した「万能人」と呼ばれるダ・ヴィンチは、芸術家の観点を超え、彼なりの方法で人間の本質に迫ろうとしたのである。

日本にたった4体!驚異の再現力たる人体模型「キンストレーキ」

 キンストレーキとは、オランダ語で「Kunst lijk」=「人工の死体」を意味する。17世紀末からヨーロッパではろう製の人体模型(ワックスモデル)が作られるようになった(冒頭の写真)。しかし、高価で繊細であるため実際に触ることができないなどの理由で、フランスの解剖学者オヅーが考案した紙粘土製の模型であるキンストレーキが教育用として一般的になっていった。

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「キンストレーキ」(男性)19世紀 金沢大学医学部記念館所蔵

 上の写真の男性のキンストレーキは、江戸時代に蘭学を学んだ医師たちがオランダ海軍の軍医から購入したとされる。国内に現存するキンストレーキはたったの4体といわれ、展示ではそのうちの貴重な2体(女性と男性)をケースごしに見ることができる。

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アインシュタインの脳が語るもの

人を人たらしめているもの「脳」

 動物の中で、人類を最も特徴づけているのは脳の構造と機能である。19世紀にイタリアのカミッロ・ゴルジは、脳の神経細胞は巨大な網を形成すると考えた。この考えを3次元的に示したのが、スイスの解剖学者エビーが作った以下の模型である。

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「脳の神経線維模型」 スイス、ブシ社製 1893-1910年 ブールハーフェ博物館所蔵。©Rijksmuseum Boerhaave, Leiden V25313

アインシュタインの脳切片が日本に?

 天才といわれる人の脳はどこが違っているのだろうか? これは誰もが心に思うことである。
 本展示ではあの天才物理学者アルバート・アインシュタインの脳切片も展示されている。アインシュタインの脳は死後、解剖されいくつかの部分に分けられ専門家にゆだねられたそうだ。展示品は国際的に知られる脳研究家である生田房弘教授のもとに寄贈されたもので、新潟大学脳研究所に保存されているものである。
 天才は大きな脳を持っていたと思いがちだが、論文によればアインシュタインの脳は大きさは普通のヒトの脳と違いはないが、音楽的な感覚に優れていたなど、部位によっては特異な部分もあったといわれる。

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アインシュタインの脳切片 1955年以降 新潟大学脳研究所所蔵 写真撮影:カールツァイスマイクロスコピー株式会社

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アインシュタインの脳切片 1955年以降 新潟大学脳研究所所蔵 写真撮影:カールツァイスマイクロスコピー株式会社

自分の体の中で臓器同士が対話している?

 脳は人体の機能を司る司令塔のようなイメージをもたれてきたが、最新の研究では各臓器どうしは脳を介さずメッセージをやり取りしていることが解明されている。「ネットワークシンフォニー」と呼ばれる展示空間では、臓器同士のやり取りを色や音で体感することができる。
 私たちの体内では、「疲れた、しんどい」「おしっこをしよう」「ごはんが来たぞ」そんな会話が臓器間で飛び交っているそうだ。そして、そのメッセージは、臓器や細胞からのメッセージを伝えるインスリンやオステオカルシンといった「メッセージ物質」なるものが仲介をしているという。
 例えば、身体が疲れを感じたときに、おしっこをしようと肝臓がメッセージを受け、水分を外に出すことで心臓の負担を少なくする。そんな作用が内蔵の間で行われているそうである。

美しくもあり、騒がしくもある人体の世界

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腎臓の糸球体 ©甲賀大輔・旭川医科大学/日立ハイテクノロジーズ/NHK ※画像はラットで撮影。白黒画像にイメージで色を付けています。

 他にも、最新の顕微鏡によるグラフィックアートのように美しい細管や球体の映像(写真上)や、ヒトの設計図である「ゲノム」の情報を読み取ることで復元された縄文人の顔相、カナダの脳神経外科医ペンフィールドのホムンクルスなど、最新技術によってビジュアル化した展示を通して人体研究の今が紹介されている。

 ペンフィールのホムンクルス(写真下)とは、人間の脳の表面に電気刺激を与えた際、どのような反応があるかを調べ、各部位がどこに反応するのかを明らかにした脳の地図「体部位再現図」で、脳表面に占める面積に応じて体のパーツの大きさを変形させたものである。

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感覚野のホムンクルス ペンフィールドの「体部位再現図」をもとに製作 2018年 国立科学博物館所蔵

 展示では、国立科学博物館ならでは醍醐味である臓器の標本も豊富に紹介されており、展示を見終わって外の光に触れたとき、人体を通って出てきたような感覚を受ける。最も身近でありながら人類史の発達に欠かすことができない壮大なテーマ、人体にさまざまな角度から視点を当て、知的好奇心を満たしてくれる展示である。

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招待券プレゼントのお知らせ

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特別展 人体ー神秘への挑戦ー

【会期】
2018年3月13日(火)~6月17日(日)
【開館時間】
9:00~17:00 ※入場は閉館時刻の30分前まで 金曜日、土曜日は20:00まで。4/29、4/30、5/3は20:00まで。5/1、5/2、5/6は18:00まで。
※開館時間や休館日などについては変更する可能性があります。
【休館日】
月曜日 ※ただし3/26、4/2、4/30、6/11は開館
【会場】
国立科学博物館(東京台東区上野公園7-20)
【入館料】
一般1,600円 他 ※詳細は展覧会公式サイトでご確認ください
【アクセス】
JR「上野」駅(公園口)から徒歩5分 他
【展覧会公式サイト】
http://jintai2018.jp/

「人体展」の招待券プレゼント応募は終了しました。
賞品は抽選の上、2018年4月9日に発送しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。

2018年3月23日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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