【JNCAP2017】予防安全、年前期に2台を追加、11車種中の何位に?
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が毎年前期と後期の大きく2回に分けて発表している、「自動車アセスメントJNCAP」。2017(平成29)年前期として、「予防安全性能評価」(予防安全)。に関しては10月26日に8車種、そして10月末に追加で1車種の評価結果が発表されて全9車種のランキングをお届けした。そして、この2月に2車種の評価結果が追加発表されたので、今回は全11車種のランキングでお伝えする。
JNCAPは、ユーザーがクルマを購入する際、より安全な車種を選択しやすいように、そして自動車メーカーにはより安全なクルマの開発を促すために、安全性能の評価試験を実施して公開しているものだ。
評価試験は、大別して2種類ある。ひとつは、事故を未然に防ぐための技術を評価する予防安全。もうひとつは、実際に衝突してしまったときに乗員や衝突された歩行者の安全性を評価する「衝突安全性能評価」である。
今回紹介するのは予防安全で、被害軽減(自動)ブレーキの「対歩行者」(25点満点)と「対車両」(32点満点)、「後方視界情報」(6点満点)、17年度から行われるようになった「車線逸脱抑制」(16点満点)の試験結果だ。
車線逸脱抑制は、車線を逸脱しそうになるとそれをドライバーに伝えるだけでなく、ステアリング操作を支援して車線に踏みとどまれるか、逸脱してしまった場合は車線内に戻れるかなどをテストする。
今回、新しく追加された車種は「シビック」と「ステップワゴン」だ。
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ベスト3に変動が!? まずは上位3車種から
ベスト3に新車種登場!
順に1位から発表していく。まずは上位3車種だ。なお、予防安全は本来79点満点だが、感覚的にわかりやすいように100点満点に換算した得点も併記した。
79点満点中で12点を超えると「ASV+」、46点を超えると「ASV++」の評価を与えられる。ASVとは先進安全自動車を意味する「Advanced Safety Vehicle」の略称で、+が多いほどASVとして高い性能を有するのである。
1位:ノート(日産) 合計79.0点(100.0点)
ASV++
対歩行者:25.0 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に用いられたグレード:e-POWER X
シリーズ型ハイブリッド・パワートレインを搭載する日産「ノート e-POWER」。日産グローバル本社ギャラリーにて撮影。自動ブレーキ「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」のための画像認識には、単眼カメラを用いるモービルアイ社製のシステムを採用している。車線逸脱抑制システムは「インテリジェントLI」と呼ばれる。
2位:CX-5(マツダ) 合計76.6点(97.0点)
ASV++
対歩行者:22.6 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に用いられたグレード:XD PROACTIVE
マツダのクロスオーバーSUV「CX-5」。「オートカラーアウォード2017」にて撮影。マツダも画像認識システムとして、モービルアイ社製の単眼カメラ方式を採用している。⾞線逸脱抑制装置「レーンキープ・アシスト・システム」は、カーブも含めて⾞線の中央を維持するための「ライントレース」モードと、実際に逸脱しそうなときのための「逸脱回避支援」モードの2種類がある。
3位:シビック(ホンダ) 合計78.4点(99.2点)
ASV++
対歩行者:24.4 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に用いられたグレード:SEDAN
17年9月29日より発売を開始したホンダ「シビック」。今回追加発表された2車種の内の1車種で、3位にランクインした。同社のセンシング技術である「Honda SENSING」は、ミリ波レーダーと単眼カメラを併用する方式だ。車線逸脱に関しては、車線をはみ出さないよう支援する「路外逸脱抑制機能」と、車線内を走行できるようステアリング操作を支援する「車線維持支援システム」などを備える。
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4~6位の変動は!?
続いて4~6位!
4位:N-BOX(ホンダ) 合計76.6点(97.0点)
ASV++
対歩行者:22.6 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に用いられたグレード:G Honda SENSING
17年9月1日より発売を開始したホンダ「N-BOX」。この新型から、全グレードにホンダの予防安全技術である「Honda SENSING」が標準装備された。なお今回の全11車種によるランキングでは、軽自動車は2台。販売台数の多い軽自動車への予防安全技術の搭載は、交通事故の抑制につながることが期待され、各社で搭載が進んでいる。「オートカラーアウォード2017」にて撮影。
5位:レヴォーグ/WRX(スバル) 合計76.5点(96.8点)
ASV++
対歩行者:22.5 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に使用された車種・グレード:レヴォーグ 1.6 STI Sport EyeSight
スバルのスポーツワゴン「レヴォーグ」(上)と、スポーツセダン「WRX S4」(下)。「オートモビルカウンシル2017」のスバルブースにて撮影。予防安全性能が同等の兄弟車種であることから、JNCAPでは同一車種として扱われている。ステレオカメラ方式の画像認識システムの最新版で、より長距離運転を支援する機能も追加した「アイサイト・ツーリング・アシスト」をスバル車で初めて搭載した。
6位:C-HR(トヨタ) 合計74.4点(94.2点)
ASV++
対歩行者:20.4 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に使用されたグレード:G
16年12月に発売を開始した、トヨタが新開発したコンパクトSUV「C-HR」。現行「プリウス」に次いで、トヨタの「TNGA(Toyota New Global Architecture)」プラットフォームを採用した。デンソーが開発したトヨタの衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を搭載。同システムは、単眼カメラとミリ波レーダーを用いて、道路交通状況の検知をする。
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7~9位は変動あり!
続いて7~9位!
7位:フィット(ホンダ) 合計65.5点(82.9点)
ASV++
対歩行者:11.5 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に使用されたグレード:HYBRID・S Honda SENSING
ホンダのコンパクトカー「フィット」。予防安全技術「Honda SENSING」の搭載グレードが用意されている。今回、ホンダ車は4車種あるが、得点差があることには複数の要因が関係している。まず、その車種の開発時期によって、搭載されているHonda SENSINGのバージョンが異なることが考えられる。さらに、その車種のブレーキ性能やセンサーの取り付け位置によるセンシング性能の差なども影響する。そのため、クルマ全体のトータルでの性能を見た場合、今回のホンダ車のように得点差が出てしまうケースもある。「オートカラーアウォード2017」にて撮影。
8位:ステップワゴン(ホンダ) 合計64.6点(81.8点)
ASV++
対歩行者:10.6 対車両:32.0 逸脱抑制:16.0 後方視界:6.0
試験に使用されたグレード:SPADA HYBRID G Honda SENSING
今回追加された2車種の内の1車種、ホンダの大型ミニバン「ステップ ワゴン」。全グレードがホンダの予防安全技術「Honda SENSING」を搭載する。「ステップワゴン スパーダ」は、装備が充実した高級グレード。ステアリング操作を支援する機能としては、路外逸脱抑制機能、車線維持支援システムに加え、歩行者との衝突回避を支援する「歩行者事故低減ステアリング」も搭載する。
9位:アウトランダー/同 PHEV(三菱) 合計63.2点(80.0点)
ASV++
対歩行者:17.2 対車両:32.0 逸脱抑制:8.0 後方視界:6.0
試験に使用されたグレード:G Navi Package
三菱のSUV「アウトランダー」と、プラグインハイブリッドSUV「アウトランダーPHEV」は同一車種として扱われている(三菱では、プラグインハイブリッドをPHEVと略している)。「アウトランダー」の乗車定員は7人で、「アウトランダーPHEV」は5人。三菱の予防安全システム「e-アシスト」は、単眼カメラとミリ波レーダー、超音波センサーで構成される。車線逸脱抑制機能は備えず、車線逸脱警報のみを搭載。「ジャパンEVラリー白馬2017」にて撮影した。
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10位・11位はどうなった?
最後は10・11位!
10位:ワゴンR/同スティングレー(スズキ) 合計58.9点(74.6点)
ASV++
対歩行者:12.9 対車両:32.0 逸脱抑制:8.0 後方視界:6.0
試験に使用された車種・グレード:ワゴンR HYBRID FX
スズキの軽自動車「ワゴンR」および「ワゴンRスティングレー」。単眼カメラと、レーダーの電波をレーザー(光)に置き換えた「LIDAR(ライダー)」を組み合わせたシステムを搭載している。車線逸脱抑制装置は搭載しておらず、車線逸脱警報のみ。「ワゴンR」と「ワゴンRスティングレー」は外見の違いと性能差があり、「ワゴンRスティングレー」の方が車両価格が高い。また「ワゴンR」のOEM車として、マツダ「フレア」がある。
11位:トール(ダイハツ) 合計30.6点(38.7点)
ASV+
対歩行者:- 対車両:18.6 逸脱抑制:6.0 後方視界:6.0
試験に使用された車種・グレード:ルーミー カスタムG(トヨタ)
ダイハツのコンパクトカー「トール」。同車のOEM車として、トヨタの「ルーミー」(トヨタ店・カローラ店)と「タンク」(トヨペット店・ネッツ店)、スバル「ジャスティ」の3車種がある。予防安全システムはダイハツが開発した「スマートアシストII」を採用しており、単眼カメラとLIDAR、超音波センサーを備える。衝突被害軽減ブレーキは対車両のみ。また車線逸脱抑制機能はなく、車線逸脱警報のみとなっている。
2018年3月9日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
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