日産、中国での覇権を狙う
この記事をシェア
多くの報道陣を前に「セレナ e-POWER」の発売を発表した日産の専務執行役員星野朝子氏
日産は2月28日、神奈川県横浜市の本社で「セレナ e-POWER」を3月1日に発売すると発表した。日産にはすでにコンパクトハッチバックの「ノート e-POWER」があり、こちらは国内販売も好調だ。e-POWER人気の要因は、エンジンを発電専用にして、駆動はすべてモーターで行うシリーズハイブリッドにしたこと。EVと同じスムーズな走りを実現しながら、”充電不要”のため、EVに乗りたくても航続距離に不安のあるユーザーに受け入れられた。国内でのミニバン需要はまだまだ旺盛なので、e-POWERを組み合わせることで、国内販売をさらに牽引していく可能性が高い。その証拠に「セレナ e-POWER」にはすでに3600台のオーダーが入っているということだ。
もちろん日産には純粋な(エンジンを搭載しない)EV「リーフ」もあるので、市販車EVの技術と販売両面でのノウハウもある。同社ではこうした強みを、中国市場で活かしていく方針だ。
東風汽車有限公司には日産やインフィニティ、東風、ヴェヌーシアの4ブランドがある
思惑とマーケットが合致した
日産の中国での合弁会社「東風汽車有限公司」が同5日発表した新中期計画によると、2022年までに年間販売台数を100万台以上増の260万台とするとした。率にして70%以上を積み増す野心的な計画である。巨大なマーケットを有する中国には、世界中の自動車メーカーがいまだ熱視線を送っているが、今や国外マーケットで90%以上を売り上げる日産も例外ではない。
大気汚染が深刻な問題になっている中国では、北京や上海などの大都市を中心に、ガソリン車などの純エンジン車に対するナンバープレートの発給規制を行っている。EVはこの規制の対象外なので、日産はここにビジネスチャンスがあると踏んだわけだ。
若者向けブランドヴェヌーシアのSUV「T90」
東風汽車有限公司が合弁会社として設立された2003年以降、15年間で1500万台を市場に送り届けてきた実績もある。強みが遺憾なく発揮できる環境が整ったとして、先の野心的な計画の発表に繋がった。
東風汽車有限公司では2022年までに20以上のe-POWERを含む電動化モデル(18年、19年に6車種のEVを投入予定)を販売し、およそ5兆円の売り上げを達成していくと表明。そのための投資としてこの5年間で製造や研究開発、人材育成などに1兆円を投資していくとしている。
2018年3月2日(JAFメディアワークス IT Media部 伊東 真一)