【2018/1/13~3/21】 王侯貴族に愛されたハンガリーの名窯 「ヘレンド」展は見逃せない
ハンガリーを代表する高級磁器・ヘレンドの優雅で華やかな作品約230点が一堂に集まった展覧会「ヘレンド展 ―皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯」が、3月21日までパナソニック汐留ミュージアムにて開催されている。
冒頭の写真:色絵金彩「皇帝」文コーヒーセット 1860年頃 ブダペスト国立工芸美術館蔵
ヴィクトリア女王が見初めた名器
ヘレンドとは、ハンガリーの首都・ブダペストから南西に約110キロを隔てた静かな村にある磁器製作所。1826年に創設され、ハプスブルク家の保護を受けて発展し、各国の王侯貴族に愛好されてきた。
ヘレンドの名が世に広まったのは1851年、ロンドンで行われた世界初の世界万国博覧会でのことだ。そこで、英国のヴィクトリア女王はヘレンドを見初めた。これをきっかけに中国風絵柄に蝶の舞うディナーセットはウィンザー城の食卓を飾ることになり、ヨーロッパ各地の王侯貴族の間でヘレンドが広まっていったのである。
この絵柄が現在「ヴィクトリア」と呼ばれる磁器である。英国王室とゆかりの深いこの食器は、ウィリアム皇太子とキャサリン妃のロイヤルウェディングでもへレンドから寄贈されたという。
色絵金彩「ヴィクトリア」文ティーセット 1850年頃 ヘレンド磁器美術館蔵
ヘレンドの礎を築いたモール・フィシェル
ヘレンドが脚光を浴びるようになったのには、ひとりの人物の存在が大きい。それがヘレンド190年余の歴史の中でも全盛期を形づくったといわれるモール・フィシェル(1799-1850)である。彼は1839年にヘレンドに資本参加すると、非凡な芸術的才能とビジネスセンスで、ヘレンドの名声の礎を築いた。
フィシェルは、ビジネス面では、貴族や裕福な市民が所有していた磁器セットの割れてしまった器の補充や、貴族の家に伝わる逸品の複製を担った。また、国際的な博覧会に積極的に参加し、優れた製品の数々を出品することでヘレンドをアピールすることに成功したのである。ヴィクトリア女王に見初められる前のヘレンドは、実はほとんど無名の磁器メーカーであったという。
色絵金彩花束文鳥飾り果物皿 1880年頃 ヘレンド磁器美術館蔵
芸術面においても、モール・フィシェルはヘレンドの技術を飛躍的に向上させた。フィシェルの時代、19世紀半ばのヨーロッパにおいては、中国の磁器は最高品質を意味し、透明感や薄い質感、軽やかな筆遣いの絵付けなど称賛の的だった。
コピーも独自の造形も自在に作る技術力
一方で日本の磁器も人気があり、ヘレンドは日本と中国の陶磁器を複製するなかで、多種多様な東洋のモチーフを装飾のバリエーションとして取得していった。 絵付けだけでなく、素地や陶壁の厚み、釉薬や顔料の多彩色合いなど、技術を学び取り、驚くことに忠実なコピーを作ることも、独自の造形を生み出すことも自在に行ったという。
色絵金彩「伊万里」様式人物飾り蓋容器 1860年頃 ブダペスト国立工芸美術館蔵
上の伊万里を真似た容器はヘレンドのものとは思えないほど、忠実に再現されている。
エリザベート皇妃が愛した食器は柿右衛門がベース
また下の柿右衛門磁器に特徴的なモチーフを取りれた「ゲデレー」は、ハンガリー人の憧れの的だったそうだ。このシリーズはオーストリア皇妃兼ハンガリー王妃エリザベートが愛したゲデレー宮殿用として彼女のために特別に作られたものである。
色絵金彩「ゲデレー」文ティーセット 1875年頃 ブダペスト国立工芸美術館蔵
展覧会では開窯初期の希少な逸品から、バロックやロココといった伝統的な様式を踏襲した名品に加え、中国や日本の陶磁器に学んだ東洋風の作品群、 そして現代の製品までおよそ150件、約230点が華やかに会した。
ヘレンド190年余の歴史と、優雅で多彩な高級磁器の魅力を堪能したい。
青地色絵ネオロココ様式人物図植木鉢 1890年代 ブダペスト国立工芸美術館蔵
- ヘレンド展 ―皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯
- 【会期】
- 2018年1月13日(土)~3月21日(水)
- 【開館時間】
- 10:00~18:00(ご入館は17:30まで)
- 【休館日】
- 水曜日(ただし3/21は開館)
- 【入場料】
- 一般1000円 他 ※詳細は公式HPにて
- 【会場】
- パナソニック汐留ミュージアム(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4階)
- 【アクセス】
- ・JR新橋駅「銀座口」より昭和通り方面へ徒歩約8分
- ・「汐留口」より地下歩道をシオサイト方面徒歩約8分 他
- 【公式HP】
- https://panasonic.co.jp/es/museum/
「ヘレンド展」」ご招待券プレゼント応募は終了しました。
賞品は抽選の上、2018年2月13日に発送しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。
2018年2月4日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)