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クルマ最終更新日:2017.11.28 公開日:2017.11.28

自動車安全運転シンポジウム2017「危険運転と脳の特徴の関係」と「高速道の行き先間違い発生要因」

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 11月13日に一橋大学一橋講堂で自動車安全運転センターの主催により開催された、「自動車安全運転シンポジウム2017 高齢運転者と共にある安全な交通社会」。

 高齢運転者の安全な運転を中心に、多彩な角度から切り込んだ特別講演、一般講演、そしてパネルディスカッションなどが行われた。プログラム内容は最終ページにまとめてある。

 今回は特別講演の2本、「危険運転をするドライバーの脳に特徴はあるのか」と「高速道路における行き先間違い発生要因の把握 -逆走対策のベース向上を目指して-」についてお届けする。

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危険運転者の脳には特徴があるのか?

危険運転をするドライバーの脳に特徴はあるのか

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特別講演の1本目を担当した、朴啓彰(ぱく・けちゃん)氏。

 「危険運転をするドライバーの脳に特徴はあるのか」というタイトルで、特別講演を行ったのが、高知工科大学 地域交通医学/社会脳研究室の客員教授で、医師でもある朴啓彰(ぱく・けちゃん)氏だ。

 もちろん脳は加齢でも衰えていくのだが、それ以外にも衰えを加速させる要因がいくつかある。そのひとつが、朴氏が重要視している大脳や小脳の深部で細胞間のすき間が発生する「白質病変」だ。糖尿病、高血圧、高脂血症、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病、そして喫煙の影響で発生し、重度になると認知機能の低下など、脳の高次機能が衰えていくという。

 白質病変は少数だが20代で生じる人もいて、軽~重度合わせて40代では約20%、50代で約40%となる。

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脳内の白質の位置(プレゼン画面左の画像)と、白質病変の様子(同右の画像)。白質病変は、生活習慣などによる個人差は大きいが、誰にでもいつかはある程度は生じる。白質病変が増えると、脳の高次機能が衰えていく。

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白質病変でどんな交通事故を起こしやすくなるのか?

白質病変が増えるとマルチタスク処理ができなくなる

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事故タイプを目的変数、性別/年齢/白質病変グレード/運転頻度を説明度数にした多変量ロジスティック解析結果。文字が潰れてしまって見にくいが、横長の赤枠が白質病変の数値で、縦長の赤枠が交差点事故の数値。その両枠が交差する薄い赤で塗りつぶしたところで、白質病変患者は交差点での交通事故を起こす確率が健常者の約3倍と出ている。

 白質病変が生じることで影響を最も受ける脳の高次機能は、マルチタスク処理。運転の場合は、交差点のように注意すべきポイントが複数にわたると見落とす箇所が出てきて事故を起こしやすくなる。白質病変患者が交差点で事故を起こす可能性は、健常者の約3倍の高さだとした。

 この白質病変は加齢で自然と発生してしまうものなので、できるだけ発生させないようにするためには、生活習慣病の予防に加えて、喫煙者はその習慣をやめることが非常に大切だという。中でも、喫煙と飲酒の組み合わせは非常によくないとしている。また、受動喫煙の影響があるため、喫煙者は家族のためにも喫煙をやめた方がいいとした。

 白質病変発生後の対策としては、運動や脳のトレーニングが効果的だ。スポーツは、認知力、予測力、判断力を鍛えることができ、高齢者でも体力的に比較的取り組みやすい卓球がいいそうだ。また、レースゲームもドライビングシミュレーターとして脳のトレーニングになるそうで、効果があるとしている。

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次は特別講演(2)高速道路での行き先間違いはなぜ発生する?

高速道路における行き先間違い発生要因の把握

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特別講演その2を担当したのは、大阪大学大学院・工学研究科准教授の飯田克弘氏。

 特別講演(2)は、大阪大学大学院・工学研究科准教授の飯田克弘氏による「高速道路における行き先間違い発生要因の把握 -逆走対策のベース向上を目指して-」だ。

 社会問題となっている高速道路の逆走だが、現状で取られている対策の考え方は、「逆走を開始していることを想定し、逆走に気づかせる」と「順行方向を強調し、逆走しないように意識づける」というもの。複数の対策が取られているのだが、「気づいた後の行動指示が重要だがハード的に難しい」ことと、「逆走を開始する前に手立てを講じる必要性がある」とされていて、逆走対策は改善の余地がまだまだある内容となっている。

 要は、逆走に気がつくと高速道路上で非常に危険なUターンを始めてしまう人が多く、逆走そのものを起こさせないようにする防止策が求められているのだ。なお、逆走していることに気がついたら、正しくは路肩に止めて、救援を要請する必要がある。

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高速道路の行き先間違いの原因は圧倒的に○○!

高速道路の行き先間違いの約97%がIC誤流出関係

 そうした現状であることから、今回、行き先間違いが起点となって逆走が発生する可能性があるのか、どのような属性の運転者がどのように情報を取得した(しようとして)行き先を間違えているのか、18~80歳の1万人を対象にWebアンケートが実施された。

 結果、「目的ICを通過(27%)」+「JCTの分岐を間違えた(19%)」+「手前のICに降りた(8%)」の、行き先間違いが3441人で、53%となった。

 さらに行き先間違いをした後の行動として、(1)「本線で転回(逆走)(2.6%)」、(2)「料金所手前で転回(逆走)(3.1%)」、(3)「本線、料金所手前で停車後、料金所へ行った(6.1%)」、(4)「転回/停車せずに料金所へ行った(87.7%)」となっている。この内、IC誤流出に関係するのが(2)から(4)で、合計96.9%にも及ぶ。

 つまり、行き先間違いを防止することがIC誤流出を大きく抑制し、さらには逆走発生の防止につながることが判明したのである。

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アンケートを行った1万人の内、年に1回以上高速道路を利用する人が6455人、さらに行き先間違い経験をしたことがある人は3441人。そして、その内の約97%がIC誤流出を経験しており、ICの誤流出を防止できれば、それがさらに結果として逆走を抑えることにもなる。

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カーナビが有効活用されていない?

カーナビが普及しているのにIC誤流出が起きる仕組み

 また、現在はカーナビがとても普及しているにもかかわらず、なぜIC誤流出が多数起きるのかという点で、行き先間違い時のナビの利用状況も調査された。その結果、ナビの情報提供だけでは聞き取れなかったり見落としたり、勘違いなどがあるために限界があることが浮き彫りとなった。

 さらに、カーナビの案内のみを重視しており、案内標識や同乗者のアドバイスを参考にしない傾向がある人は、どのような状況下でも行き先間違いを起こしてしまう可能性があることも判明した。

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カーナビにのみ頼ってしまう人は、複数の状況下で行き先間違いを犯しやすいことが判明。

 ただし、その逆が問題となるケースがあることも確認されている。カーナビ、案内標識、同乗者のアドバイスなど多様な情報を参考にし、高速道路の運転頻度が高い傾向のドライバーは、都市高速のJCTでカーナビの案内を勘違いしてしまう可能性があることもわかったのである。

 これは、東京の首都高のように出入口と分岐と合流が複雑に入り組んでいると、カーナビの案内が頻発し、見落とし聞き落としが発生しやすいし、さらに案内標識や同乗者のアドバイスなど、情報が増えれば処理が追いつかなくなるということが関係している。

 行き先間違いを経験したことがあり、カーナビのみに頼るタイプだと自覚できるような方は、今後はカーナビのみではなく、案内標識で再確認するよう、2種類の情報源を組み合わせることがいいという。また、都市高速で誤流出した経験のある方は、収集する情報が過多になって混乱を招いていると予想される。得る情報を絞るクセを身につけてみるといいのではないだろうか。

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全プログラムの紹介

「自動車安全運転シンポジウム2017」概要

 「自動車安全運転シンポジウム2017 高齢運転者と共にある安全な交通社会」の全プログラムは以下の通りだ。

●特別講演(1) 危険運転をするドライバーの脳に特徴はあるのか
 高知工科大学 朴啓彰(ぱく・けちゃん)客員教授/医師
●特別講演(2) 高速道路における行き先間違い発生要因の把握
 -逆走対策のベース向上を目指して-
 大阪大学 飯田克弘(いいだ・かつひろ)准教授
●公募研究の報告 高齢ドライバーの認知力低下と運動能力の関係
 高齢者安全運転支援研究会 岩越和紀(いわこし・かずのり)理事長

●一般講演(1) 改正道路交通法における高齢運転者対策の進捗状況について
 警視庁運転免許課高齢運転者等支援室 岡本努(おかもと・つとむ)室長
●一般講演(2) 高齢者の健康起因事故について
 公益財団法人 交通事故総合分析センター 大嶋菜摘(おおしま・なつみ)氏
●一般講演(3) 地域と連携した障がい者の運転再開支援の取り組み
 本田技研工業株式会社安全運転普及本部 塚本末幸(つかもと・すえゆき)氏

●パネルディスカッション 高齢ドライバーに優しい運転環境を目指して
 コーディネーター:モータージャーナリスト 岩貞るみこ(いわさだ・るみこ)氏
 パネリスト:朴啓彰氏、飯田克弘氏、岩越和紀氏、岡本努氏、大嶋菜摘氏、塚本末幸氏

2017年11月28日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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