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ライフスタイル最終更新日:2017.11.01 公開日:2017.11.01

【2017/10/21~2018/1/28】 展覧会「北斎とジャポニスム」 西洋絵画の中にみる北斎という光

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 展覧会「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」が2017年10月21日~2018年1月28日、東京上野・国立西洋美術館にて開催中だ。

ジャポニスムの立役者、北斎を切り口にした世界初の企画展

 モネ、ドガ、セザンヌ、ゴーガンなど19世紀後半の西洋の芸術家は日本美術、特に北斎に刺激され”新しい芸術”を作り上げた。その”ジャポニスム”といわれる現象に影響を受けたとされる西洋芸術約220点と、彼らに影響を与えた浮世絵師・葛飾北斎の作品約110点を対比したのが本展覧会であり、世界初のジャポニスム展である。

 日本にいる私たちはジャポニスムについてあまり知る機会がなかった。
 こうして具体的に北斎と西洋画家の作品が会すると、いかに北斎が彼らに多大な影響を与えたのかが浮き彫りになり驚かされる。巨匠といわれる画家たちが、こぞって北斎を模倣し、習作や本物そっくりに描かれた絵もある。

ジャポニスムの背景

 ジャポニスムの画家たちは、なぜそれほどまで北斎に感銘を受けたのか?

 それは西洋美術の画家がそれまでのスタイルに限界を感じ、行き詰まっていたからである。彼らはキリスト教圏の西洋において、聖人の生涯を証することとそのために発展してきた遠近法をはじめとした美術の規範に閉塞感を感じていた。その壁を打ち壊すための北斎という武器を彼らは得た訳である。

 北斎の斬新な構図、画面を断ち切るように手前にそそり立つ木、人間の視覚的体験をもとした風景画、ダイナミックな海景画、同一の対象を繰り返し描いたシリーズ(連作)として展開させるアイデアなどは驚きをもって取り入れられた。北斎が描く江戸文化の自由さや庶民生活の喜びは、キリスト教文化の伝統や重厚さ、モラルから解放し、芸術を新しく再生するものとして彼らの目に映ったのである。

→ 次ページ:
ドガ、モネ、ゴッホに北斎が残したもの

北斎は欧米の画家にこんなにも影響を与えていた

①ドガには人の作る形の面白さ

 例えばドガは、人間の身体と、バレエダンサーや浴女など何かの作業に没頭していた人が一瞬見せる何気ない動作に興味を持っていた。そんなドガが、庶民の日常を生き生きと捉えた『北斎漫画』のあまたのスケッチ、市井の人々のくつろいだポーズや滑稽な姿に出会った衝撃と共感はどれほどだっただろうか。
 北斎とドガ、2人に共通するのは鋭い観察眼である。北斎が追求した人体の日常性や人の作る形の面白さにドガは触発され、ごく自然に振る舞う新しい裸婦像が生まれたという。

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②メアリー・カサットには人間をありのままの姿で描くこと

 北斎の「(醜い姿もふくめ)ありのままの姿を描く」写実法も、欧州の画家には衝撃的だった。
 それまでの絵画でのポートレートは行儀の良いポーズで描かれていたが、北斎の絵の中に出てくる行儀の悪いポーズを、メアリー・カサットは《青い肘掛け椅子に座る少女》に当てはめた。だらしなく足を開き下着まで見えている退屈した少女は、中世の画家のすましたポートレートを超えた生きた姿を現す。

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③モネには構図にあらわれたリズム感

 西洋の画家にとって風景を描くことは、自然の壮大さと豊かさを表現することであり、そのために伝統的な遠近法の説明的な空間描写に縛られていた。そういった手法とはまったく別のアプローチの北斎は、人間の視覚的体験をもとに表現する手法を用い、観るものの視覚を瞬時に捉えている。
 構図のリズム感が卓越しているクロード・モネの作品《陽を浴びるポプラ並木》の中の木々の垂直線がテンポよく並ぶ造形は、北斎の《冨嶽三十六景 東海道程ヶ谷》の松の並木に呼応している。

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④ゴッホにはモチーフ

 フィンセント・ファン・ゴッホの名作「ひまわり」を思い浮かべていただきたい。
 西洋では伝統的に、聖書やギリシャ神話を扱う歴史画が最高に据えられ、つづいて人物画、その下に風俗画や風景画、静物画が位置づけられた。逆に日本画では木々や花々が重要な画題をなし、そこに見られる自然に対する親しみは、西洋の人々の植物に対する見方にも影響を及ばさずにはいられなかったのである。

 展示を見ていると、北斎に影響された西洋の作品もまた様々であることに気づかされるだろう。模倣の段階のものもあれば、完全に咀嚼し自分のスタイルとして確立した名画の域に達しているものもある。

 北斎という異文化との出会いによって生み出された西洋美術の傑作を堪能しながら、西洋の芸術家の眼を通して、北斎の魅力と才能に改めて注目する展示である。

→ 次ページ:
招待券プレゼントのお知らせ

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展覧会「北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃」
【会期】
2017年10月21日(土)~2018年1月28日(日)
【開館時間】
9:30~17:30、金・土曜日9:30~20:00、(ただし11/18は17:30まで)
※入館は閉館の30分前まで
【休館日】
月曜日(ただし1/8は開館)、12/28~1/1、1/9
【会場】
国立西洋美術館(東京・上野公園)
【最寄り駅】
・JR上野駅
【公式サイト】
http://hokusai-japonisme.jp
【ツイッター公式アカウント】
@hoku_japonisme

※招待券プレゼント企画は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。賞品は11月13日(月)に発送いたしました。

JAF会員優待のご案内

展示「北斎とジャポニスム」の入場料がJAF会員優待にて割引となります。
詳しくはJAFご当地情報ページをご確認ください。

※ご注意
・会場チケット売場にて JAF PLUS 11月号(東京版)掲載のクーポン券提出が必要です。
・JAF会員証の提示では割引になりませんのでご注意ください。

2017年11月1日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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