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クルマ最終更新日:2017.10.02 公開日:2017.10.02

【フランクフルトモーターショー2017】 世界最大級のモーターショーは、 EVとコネクトが全盛だった!Vol.3

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© IAA

 フランクフルトモーターショーでは、やはり地元ドイツの自動車メーカーが新作の発表に力を入れ、その動向が注目を浴びていた。BMWは「i」、メルセデス・ベンツは「EQ」、フォルクスワーゲン(VW)は「I.D.」と、各社がEVブランドのコンセプトを打ち出しており、戦略の上手さを感じさせる。

アウディは自動運転に特化

 アウディは、自動運転をメインに押し出した発表を行い、自動運転のレベル3を実現した新型「A8」、レベル4を搭載した「Elaine(エレーヌ)」、完全な自律運転レベル5を実現するコンセプトカー「Aicon(アイコン)」の3車種を紹介した。

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照明でブランドのロゴマークを表現したアウディのブース。© IAA

時間差で照明の色が変わるアウディの照明デザイン

 ちなみに、レベル3とは条件つきの自動運転が行えるレベルで、自動運転が行える条件下では、ドライバーは運転をクルマに任せて他のことができるが、クルマ側に運転に戻るように警告された場合は、すぐに戻らなくてはならない。レベル4は高度な自動運転のレベルで、高速道路等の条件はあっても、条件内であればドライバーは完全に運転操作をクルマに委ねることができる。レベル5は完全な自動運転のレベルで、条件なく、全ての運転操作をクルマが担い、どのような状況下でもドライバーの助けを必要としないレベルをいう。

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未来のビジョンを映す完全自動運転アイコン

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アウディ新型A8。© IAA

 世界初のレベル3に対応して開発されたA8は、ドイツの公道で渋滞時の自動運転や自動駐車システムなどを搭載している(一部の機能を次の動画で見ることができる)。

 SUVクーペのエレーヌは、アウディから2番目に発表された生産型EVだ。ドライバーと乗員は、ダッシュボード、センターコンソール、ドアトリムに設けられたタッチスクリーンにより情報の取得や操作をすることができる。

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Audi エレーヌ。© JAF MW

 昼夜を問わず最適な視認性を実現する照明、他のドライバーや通行人に自動運転モードでの走行を知らせる多彩な光の演出、搭乗者に挨拶のサインを送る照明テクノロジーを搭載。駆動システムは4輪駆動、0~100km/hの加速に要する時間は4.5秒、バッテリーのエネルギー容量は95kWh、航続距離は500kmでワイヤレスチャージにも対応している。

 エレーヌは、高速道路での自動運転機能、車線変更、クルマを追い越した後に元の車線に戻る操作も自動で行う。既定のエリア(ハンドオーバーゾーン)での自動駐車、洗車場、ドライブスルー、ガソリンスタンド、充電ステーションなどを見つけ自動的にサービスを受けることも可能である。
 また、ドライバーが手首につけたデバイスを通して、体温や心拍数といった情報を読み取りドライバーのストレス状態を察知すると、呼吸法、音楽、室内照明などでストレスを軽減するよう促すそうだ。

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完全自動運転のコンセプトカー・アイコン。© Audi

 完全自動運転レベル5を実現する未来を先取りするのがアイコンである。完成されたロボットタクシーも、いわば完全自動運転を前提にしているが、アイコンがロボットタクシーと違う点は、快適さ、デザイン性、ラグジュアリーさを移動手段の中に組み込んだプレステージカーであるということだ。

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独メルケル首相もアイコンのインテリアを体験。© Audi

 シングルフレームの両側にある照明は目のように見え、瞳を広げるようにしたり細めて怒ったように表情を作るなど、照明セグメントはエモーションとインフォメーションを表現する。
 車両にミニドローンを搭載しており、暗い道でユーザーがクルマを離れるとユーザーの足元を照らす機能もあるそうだ。ハンドル、ペダル、メーターなどはなく、フロントウインドウの下に大きなディスプレイが設置されている。
 人の気持ちを察する能力を備えたAI(人工知能)が搭載され、スマートフォンを通してドライバーや乗員が誰であるかを認識し、様々な機能をその人にあうように自動的にセッティングしてくれる。
 クルマへの指示は指を使った入力の他に、ボイスコントロールとアイトラッキングを通してでも可能である。人とクルマ、ネットを繋ぐコネクトの機能がエモーションの次元まで進化した乗り物であり、運転から解放されたユーザーがクルマの中で何を必要とするのか将来のモビリティへの夢が垣間見られる。

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ポルシェは・・・?

ポルシェは内燃エンジン車を発表

 一方ポルシェは9月12日、「カイエン・ターボ」の新型と、1973年モデルの911カレラRSのコンセプトを採用して現代版として進化させた「911 GT3ツーリングパッケージ」の2台を発表し、ドイツの大手メーカーとしては唯一EVへのアプローチは見られなかった。

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新型カイエン・ターボを発表するポルシェ社CEOのオリバー・ブルーメ。© picture alliance / SvenSimon

 これについて翌日の独ディ・ツァイト新聞は、「911は最も美しいネアンデルタール人」、つまり過去の遺産であるとの手厳しい記事を掲載。発表会の途中で帰るジャーナリストも多く、ドイツのメーカー内でも新車の発表会は温度差が感じられた。

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911 GT3ツーリングパッケージ。© picture alliance / CITYPRESS 24

 今年のフランクフルトモーターショーには、世界39か国から約1000の企業や団体が参加し、ワールドプレミアは約228回、ドイツ自動車工業会によると、これは今までで最高の数字であるという。
 会場には、「エレクトロ・モビリティのためのガイド」という各メーカーが発表するEVとPHVを網羅したパンフレットが置かれており、それによると約68の新車EVが発表されたことになる。

 EV化は、VWが改革を発表したように、130年間の自動車史でエンジンの開発を中心に発展してきた自動車産業のパラダイムシフトを意味する。フランクフルトモーターショーで発表された技術や方針がどのように実現されていくのか、また10月25日に開催される東京モーターショーで、日本の自動車メーカーはEV化や今回のモーターショーで多くのメーカーが取り入れていたコネクトの流れにどう対応していくのか注目される。

2017年10月2日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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