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最終更新日:2017.05.30 公開日:2017.05.30

【人とくるまのテクノロジー展:その3】 高齢者ドライバーや介護など 社会的な問題をデザインに昇華した 布製ボディの電気自動車

 5月24日~26日開催の「自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展 2017 横浜」(パシフィコ横浜)。26回目となる今回は、過去最大規模の562社が出展。3日間で約9万人の来場者を記録し、自動車メーカーのブースは身動きできないほど人が溢れるなど、会場は活気に満ちていた。

 そんな、モーターショーとはまた一味違った自動車イベントから、メーカーやパーツサプライヤー、そのほかさまざまな自動車に関するテクノロジーをシリーズで紹介したい。今回は、超小型モビリティ「rimOnO」(リモノ)」である。

布製ボディの電気自動車

 ひときわ目を引くポップなデザインと意外性のあるボディ素材で、幅広い年代のビジターから注目されていたのが、布製ボディのEV「リモノ」のブースだ。

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リモノのプロトタイプ1。©WISE WISE (photo by Hayato Furusho)

 高齢者の運転による交通事故は、社会問題になっている。一方で地方に住む人にとって車は依然として大事な移動手段である。

 リモノは、(株)rimOnO(リモノ)が開発しているクルマで、①自動車の運転に不安を感じる高齢者、②家族が高齢者を病院に連れていく時など介添え人、③都会暮らしのスモールカーが好きな人、④運転に自信がない初心者ドライバーをターゲットにしているという。

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人にどれだけ近づけるか

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rimOnO 主要スペック

全長 2.2m
全幅 1.0m
全高 1.3m
車両重量 320kg(目標200kg)
最高速度 45km/h(検討中)
航続距離 50km(目標)
乗車定員 大人2名(または大人1名+子供2名)
価格 100万円(目標)
(リモノは開発段階のため、このスペックは開発目標値である。)

 前後に2人乗りするというアイデアやコンパクトなサイズもユニークだが、特筆すべきはボディの発泡ウレタンである。押すとへこむ、弾力性のある素材でできていて、その上にテント用の布が張ってある。
 「『人にどれだけ近づけるか』を追求するため、威圧感を持った鉄ではなく、ぬいぐるみのように柔らかい素材で覆うことによって、車と人との距離感を変えていけるんじゃないかという思いがありました」。
 リモノのデザイナーである根津孝太氏は述べている。

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 最高時速45kmも、「最高どこまで出せるか」でなく、「こういう乗り物に適した速度は時速何kmなんだろう?」と日常生活の実用性から設定するというように、発想が逆なのである。

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製品化への切実な声が

車のイメージを一新する対等な目線の発想

 リモノの「車=鉄の塊」という概念を軽々と飛び越え、事故のときに車に乗っている人だけを守るのではなく、歩行者のダメージを少なくしようという、歩行者と車が同等な視点で車作りに取り組んでいる点が、非常に斬新だ。

  (株)rimOnOのCEO伊藤慎介氏は、去年の発表以来、爆発的な反響があり、展示会では対応に追われ昼食を取る時間もないほどだと言う。
 「問い合わせが多かったのは70代男性と50~60代の女性です。70代の男性は『自分で運転したいけど家族が認めてくれない。しかし移動手段がないと生活が成り立たない』という人が多いです。50~60代の女性は、『親御さんの介護のために車が必要だけど、ペーパードライバーで不安。リモノならなんとか運転できるかも』。という切実な声をかなり沢山いただいています」。

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乗りやすい回転シート。アクセルとブレーキがない分、ドライバー席は広く感じる。

 ペーパードライバーや初心者ドライバーにとっては、自転車やバイクと同じバーハンドルで操作が簡単なことも魅力なのだろう。また、高齢者の運転事故の原因はアクセルとブレーキの踏み間違えがあげられるが、その対応としてアクセルとブレーキを分離しているのも興味深い。

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超小型モビリティの普及には

 ヨーロッパには「L6e」という超小型モビリティ制度がある。これは、重量350kg以下、最高速度45km以下、定員2名のマイクロEVの場合、14歳以上であれば原付免許で運転可能であるとの制度で、フランス、イタリア、スペインなどで導入されている。
 日本の国土交通省の超小型モビリティの認定制度では、各種条件を満たした上で、地方公共団体が指定した場所のみを走行することができる。免許は、リモノの場合、普通免許が必要だ。
 経済産業省に15年勤務し、次世代自動車バッテリーの研究開発などに携わったCEOの伊藤氏は、L6eのような可能性を日本でも提案していく考えであるという。日本で超小型モビリティが普及するかどうかは、こうした働きかけが大きい。

→ 次ページ:
社会問題をデザインに置き換えて

ルイ・ヴィトン・カー?

 高齢者の運転や介護といった社会的ニーズを、「カワイイ」デザインに昇華させたリモノは、「これだったら欲しい!」「使う人がワクワクする」日本製品を世界に発信したいという新しい世代のクリエーターたちの夢の結晶である。

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株式会社rimOnOのメンバー、CEO伊藤慎介氏(右)、CTO奥村康之氏(中央)、デザイナー根津孝太氏(左)。

 ボディの布は、着せ替えが可能なので、カバンを変える感覚でボディを変えるのも可能。将来的にはファッション・ブランドとのコラボも考えていて、例えば、ルイ・ヴィトンとコラボして、ヴィトン柄の車をオーダーというのも実現するかもしれない。

 現在プロトタイプ1の製作後、開発に必要な資金調達に苦戦しており、クラウドファンディングという資金調達システムを通して、賛同者からのサポートを募集中である(外部リンク参照)。

 クリアしなければならない課題は多そうだが、具体的なニーズの声もあるだけに、近い将来の製品化を応援したい車である。

2017年5月30日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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