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クルマ2017.05.29

国会に自転車で通う議員!? 自動車大国ドイツはエコロジー大国

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 フォルクスワーゲン、メルセデス・ベンツ、ポルシェ、アウディ、BMW・・・世界有数の自動車メーカーを有するドイツは間違いなく自動車大国である。
 一方、2022年末までの原子力発電所の全面廃止に代表されるように、ドイツは環境に対して意識の高い国でもある。

 ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関を動力源とする自動車が排出する二酸化炭素(CO2)等のガスは、地球温暖化の原因の1つとされている。自動車の生産台数が世界第4位(2016年統計)であると同時に、エコ大国といわれるドイツの社会について考察してみたい。

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電気自動車(EV)イベントでEVをアピールするメルケル首相。左は、メルセデス・ベンツ社長ディーター・ツェッチエ。©picture alliance / dpa

2020年までにEV100万台を

 ドイツでの報道によると、2008年ベルリンのEV(電気自動車)イベントでメルケル首相は、2020年までに国内でのEVの普及100万台を目指すという方針を発表したと伝えている。

 近年の石油価格の高騰と将来的な資源不足、電気代の方がガソリン代よりも安い点、軽量でエネルギー密度の高いリチウムイオン電池の開発、環境、経済など様々な観点からメルケル政権は、EVがドイツの自動車産業の未来であるとの算段で、その開発と普及を推し進めることにしたということだ。

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フォルクスワーゲン「ミラノ」のEVタクシーのチャージをデモンストレーションするメルケル首相。©picture alliance / dpa

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EV購入者に助成金が

新車EV購入1台につき4,000ユーロを援助

 メルケル首相は、各メーカーの発表会に積極的に出席し、企業側と協力してEVのPRに努めると同時に、2016年からEVの購入者に対して6億ユーロ規模の助成金制度を行った。これは、EVの新車購入者には4,000ユーロ(約50万円)、プラグインハイブリッド車の購入者には、2,000ユーロの割引が当てられるという制度で、EVの購入促進に拍車をかけたのだとドイツの新聞は伝えている。

 またこの制度の中から、充電ステーションにも3億ユーロ(約750億円)を支出するとし、政府はEVをさらに魅力的なものにするための処置を付け加えた。

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ベルリンに設置された充電ステーション。©picture alliance / dpa

 ドイツの雑誌Auto Bildによると、この制度の導入により今年4月までにはEVの新車購入は約18,000台と増加したが、2016年の時点で国内の普及台数は、まだ8万台にも届かないそうだ。メルケル首相は5月15日記者会見で、EV100万台を2020年までに普及させる目標について、達成できない見通しだと明らかにした。

 100万台達成は無理だとしても、ドイツのEV推進は、技術面、インフラ面、環境面とさまざまな分野、つまり経済技術省、運輸建設省、環境省、教育研究省が共同で乗り出したプロジェクトで、その根底には国民の環境保護への姿勢も少なからず影響を与えていると、ドイツの新聞は伝えている。主要自動車メーカーもEVのラインナップ強化を急いでおり、こちらはその背景にEUや中国、米カリフォルニア州等の規制対策というビジネスの側面もあるものの、一気にEVが拡大する可能性はある。

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個を重んじる多様性のある社会

自転車で国会に通う議員

 自動車大国でありながら環境意識も高いという、一見相反する価値観を、ドイツではどのように融合しているのだろうか。ここからは私見になるが、ドイツをはじめヨーロッパ社会の根底にあるのは、個人の権利を尊重し保障する個人主義である。ひとつの例だが、自動車大国でありながら、国会議事堂に自転車で通うシュトローベレ議員のように、「車は持たないし乗らない」主義の人もいる国なのだ。
 マイノリティ、マジョリティに関わらず、全ての人の意見や生き方を認め、受け入れようとする多様性のある社会がドイツの特徴であり、それが環境意識と自動車大国を両立させているように思える。

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自転車で登院する国会議員ハンス・クリスチャン・シュトローベレ。©picture alliance / dpa

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環境大臣のペーター・アルトマイヤーも電気自転車を愛用する。©picture alliance / dpa

2017年5月29日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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