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クルマ最終更新日:2017.05.20 公開日:2017.05.20

ペッパー君がドイツの老人ホームで、 認知症患者の介護サポートとして活躍

 世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」が、老人ホームで介護サポートとして導入され、ドイツのメディアで話題になっている。ペッパー君は、認知症患者と対話したり、歌のリクエストに応えたり、ダンスをしたりとすっかり人気もののようだ。

ペッパー君が認知症患者の介護サポーターに!

 日本では大きな問題となっている高齢者や認知症患者の介護の問題に、ドイツではどのように取り組んでいるのか紹介したい。

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©dpa

 ドイツ北部の都市キールにあるグループホームは、75~93歳の認知症患者12人が暮らす認知症高齢者専用の共同生活施設だ。南ドイツ新聞によると、この施設には、2週間ごとにペッパー君(ドイツでは「エマ」と呼ばれている)がやってくる。

老人ホームの住民がペッパー君とダンスをしたり歌を歌ったり!

 「何をしましょうか?」ペッパー君が施設の居住者エリカさんに話しかけると、エリカさんは「これ」と言ってペッパー君のタッチスクリーンを押した。60年代に大ヒットしたドイツ人歌手フレディ・クインの曲がエマから流れ出すと、87歳のエリカさんの目が輝き、曲と一緒にダンスを始めた。

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©dpa

 ペッパー君は認知症患者の介護サポーターとして、キール工科大学から派遣されてくる。最初は違和感を抱いていた施設の居住者も、4か月間一緒に過ごした今ではすっかり打ち解け、ペッパー君との交流を楽しみにしているという。

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看護師不足が問題に

 ドイツの研究機関は、ロボットが高齢者の日常を援助する研究を進めている。ペッパー君にプログラミングを施しているキール工科大学は、認知症患者に話しかけて対話のモチベーションを促したり、音楽を通して記憶を呼び起こしたり、一緒に体を動かすことは、認知症の進行を遅らせるのに効果的であると述べている。

 2014年の統計によると、ドイツ人の認知症患者は約160万人。毎年約300,000人もの認知症患者が増えており、2050年には300万人を越すと予想されている。またドイツには13,500件以上の老人ホームが存在するが、介護師や看護師不足が長年の問題となっている。

将来的に介護の分野でロボット導入か!?

 ドイツ人の男子には兵役義務が課せられているが、一方で、兵役を拒否するかわりに「代替義務」といって、社会福祉施設で兵役義務と同じ期間だけ社会貢献を行うという選択肢がある。代替義務を行う若者は、主に病院や老人ホームでの看護ヘルパーに従事することになるが、これは看護師不足を解消しようとする対策のひとつであるとも言われている。

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老人ホームで代替義務を行う若者。©dpa

 キールの施設でのペッパー君の導入は、ドイツでますます増加する認知症患者に、将来的にパーソナルロボットを投入できるのかを検討せざるをえない現状があるように思える。

ペッパー君の機能が認知症患者に役立っている

 実質的にロボットが介護ヘルパーとして用いられるには、更なる技術面で改良が必要であろうが、人の顔を認知し、主体的に人のところに歩み寄って話しかけるというペッパー君の感情認識にすぐれた機能(コミュニケーション能力)が、こういった施設で役に立っているように見受けられる。
 ちなみに、キール大学によるとペッパー君の値段は17,000ユーロ。日本円にすると約219万円と現段階ではかなり割高のお値段である。

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 キール工科大学は施設と協調して毎回新しい試みを行っており、次は居住者とペッパー君がメモリーゲームで遊ぶことを計画しているそうだ。

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©dpa

2017年5月19日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)

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