レシピ13:「から揚げチキンレース」の作り方
ド派手なミニカーありきで考えた世界観
使いたいな……とは思うものの、この「MINIATURE “CAR” LIFE」の世界観にマッチさせづらいミニカーがありました。アメリカ、ホットウィールの製品です。お国柄が出るのでしょうか、日本製のミニカーと異なり、ド派手なメタリックカラーだったり、ファイヤーパターンが入っていたりして、牧歌的な作品が多い僕の作品では、登場させにくかったのです。
でも今回は、念願(?)のホットウィール製ミニカーを出すことを前提にアイデアを絞りました。数ある同ブランドのミニカーの中でピンときたのが、オフロード車。日本ではまだ馴染みがありませんが、アメリカでは、岩を登ったり、ジャンプ台を飛び越えたりする4WD車のレースが人気。ド派手なミニカーも、こうしたレースの世界観に落とし込めば、不自然ではないと考えたのです。
カラフルな4WD車を操るドライバーたちが駆け抜けるのは、千切りキャベツの森の周囲に巡らされた白い皿のワインディング。
そこをクリアすると、ホッとする間もなく、眼前に立ちはだかるのが、から揚げの岩山だ。
躊躇したら負け。
気分アゲアゲでドライバーたちは「から揚げ1年分」の賞品を目指す。
僕も、ウチの子供もから揚げが好き。きっと読者の皆さんもそうでしょ?
よくテーブル上で繰り広げられる、家族間の「から揚げ争奪戦」をレースに見立てて表現しました。
→次ページ: 「から揚げチキンレース」を表現した材料
「から揚げチキンレース」を表現した材料
左の紫色のミニカーから
ホットウィール「カスタム フォード ブロンコ」
ホットウィール「’17フォード ラプター」
ホットウィール「ダッジ ラム 1500」
※全て市中在庫のみ。
奇抜なカラーリングだらけのホットウィールのミニカーの中から、派手でも自然に見える4WD車を3台セレクトしました。作品の中で紫色のモデルを先頭にしたのは、窓パーツが付いていないから。ドライバーに見立てたフィギュアを運転席に入れやすいのです。
プライザー社製のフィギュア
紫色のミニカーに入れたのが、このヘルメットを被ったプライザー社製のフィギュア(写真左)。それが運転席に座っているように見せたかったので、両脚部分を切断してミニカーの中に収まるようにしました(写真中)。それだけでもいいのですが、レースらしさを出そうと思い、ミニカーと同じ紫色のツナギに塗装しました。このちょっとしたひと手間が大事なんです(写真右)。
食品サンプルとナプキン
揚げたてのから揚げ、みずみずしい千切りキャベツ、料理のアクセントに欠かせない鮮やかな緑のパセリ……。実は、この全てが食品サンプルなのです。食べ物を粗末にしたくない、という意図もありますが、単純に長時間の撮影でも見た目が変化することがなく、僕の作品の撮影で便利なのです。写真奥のランチョンマットの効果は、次ページで紹介します。
→次ページ:「いよいよ制作!」
いよいよ制作!
(1)ウェザリングを施してオフロード車のリアリティをアップ
レース中のオフロード車なので、車体がピカピカなのはおかしいですよね。
そこでウェザリング(汚し塗装)ができる市販のパウダーで、車体の下部や角に泥をイメージした塗装を施しました。
これが塗装後のミニカー。立体的に見えませんか?
もちろん3台とも塗装しました。手は抜きません。
(2)ランチョンマットで皿と皿の間を埋める
デジカメのライブビュー機能を使って、構造を決め込むのは、いつもどおり。
今回、特に注意したのは、ミニカーが迫力あるように見せるのはもちろんですが、お皿とお皿の間にできる空間にも注意しました。お皿は丸いので、どうしても空間ができてしまいます。そこでランチョンマットを皿の下に敷き、空間を埋めました。柄は、緑色のギンガムチェック。今回、野菜で自然を表現したので、その世界観とマッチさせたのです。
ミニチュア写真家:田中達也(たなか たつや)
1981年、熊本県生まれ。広告関連のアートディレクションに携わりながらInstagramにアップしていたミニチュア作品が大人気に! 「ミニチュア写真家」へと転身する。2017年に話題を呼んだNHK連続テレビ小説『ひよっこ』のタイトルバックのミニチュアも手がけた。「MINIATURE LIFE展 田中達也 見立ての世界」が国内外各地で開催中。
写真集『MINIATURE LIFE』『MINIATURE LIFE2』(水曜社)を上梓。
彼の作品は、http://miniature-calendar.comをチェック!
企画構成・文/寺田剛治