大阪南部に“新たな高速”構想! 富田林・河内長野を経由する「大阪南部高速道路」とは。国道170号の渋滞を回避する新ルート【いま気になる道路計画】
大阪府南部の富田林市や河内長野市周辺は「高速空白地帯」として、一般道の渋滞が慢性化している。それを解消するため構想されているのが、高規格道路「大阪南部高速道路」だ。そのルートや役割、実現に向けた動きを見ていこう。
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阪和道から「取り残された」大阪のベッドタウン
大阪府南部には「高速空白地帯」が広がっている
大阪府中南部の広域交通を担っている高速道路が「阪和自動車道」だ。同路線は、「近畿自動車道」として名神高速道路「吹田JCT」を起点に、大阪の山側郊外を通って南下し、松原市で「阪和道」に名称が変わる。その後は、堺市・岸和田市・貝塚市の内陸エリアを経由しながら、和歌山方面へつながる。東京における「外環道」のような役割を担う路線だ。
しかし、その阪和道から完全に取り残されたエリアがある。富田林市や河内長野市、さらに河南町や千早赤阪村などを含む南河内地域である。阪和道は堺市美原区付近から進路を南西へと変え、この地域を避けるような形で南下していく。
これは湾岸部と南河内エリアの中間を通ることで、両地域が阪和道の恩恵を受けられるようにする意図があったと考えられる。だが、湾岸部では阪神高速4号湾岸線が整備されたため、結果として南河内エリアだけが「高速空白地帯」となったまま現在に至っている。
「大阪南部高速道路」で「国道170号」の渋滞を解消?
大阪南部高速道路の概要
富田林市と河内長野市はいずれも大阪市内のベッドタウンとして発展してきた都市で、人口はともに約10万人を誇る。都心から約20km圏、さらに関西国際空港からも約30km圏に位置しており、地理的ポテンシャルは高い。
現在、このエリアの主要道路を担うのが「国道170号」だ。別名「大阪外環状線」と呼ばれ、高槻・寝屋川・東大阪方面から大阪府郊外をぐるりと結ぶ4車線となっている。
しかし、平面交差点が多く、信号待ちによる渋滞が慢性化しており、中長距離のネットワークとしては十分に機能しているとは言い難い。物流だけでなく、生活交通にも影響を及ぼしているのが現状だ。
そこで構想されているのが、国道170号のルートをベースに信号のない自動車専用道として整備し、全国高速ネットワークに組み込む高規格道路「大阪南部高速道路」である。
「大阪南部高速道路」のルートや構造は?
阪和道から遠く不便な富田林・河内長野周辺エリア
「大阪南部高速道路」のおおまかな構想ルートは、西名阪自動車道「藤井寺IC」東側付近から南へ分岐し、羽曳野市で南阪奈道路と接続。その後、太子町・河南町・富田林市・千早赤阪村・河内長野市・和泉市を経由して、最終的に「岸和田SA」手前で阪和道に合流するというものだ。
ルートは国道170号よりもさらに山側を通る新規ルートが想定されている。内陸部を広くカバーしながら都市部を避けることで、用地取得や建設をスムーズにする狙いがあるとみられる。
もっとも、これはあくまで現時点で示されている大まかな構想ルートにすぎない。実際のルートや整備の方向性は、具体化に向けた最初のプロセスである「計画段階評価」で検討・決定されることになる。
計画段階評価では、概略ルートや構造を3案程度に絞り込み、その中から最終案を決定する。その後、都市計画決定や環境アセスメントの手続きが完了すれば、事業化の段階へ進むことになる。
この概略ルート・構造案としては、例えば「山側に新たな別線を整備する案」「国道170号の上部に高架を設ける案」「国道170号を拡幅・改良する案」といった、複数の選択肢が比較される可能性がある。
こうした案は、地域アンケートの結果なども踏まえながら検討され、数年かけて最終案に絞り込まれていくのが一般的だ。
「大阪南部高速道路」の実現に向けた進捗
国の「新広域道路交通計画」に調査路線としてリストアップされた「大阪南部高速道路」
大阪南部高速道路の実現に向けて、動きが本格化したのは2015年だ。関係する15市町村が連携し、「大阪南部高速道路事業化促進協議会」を設立。以降、国に対して毎年、要望活動が続けられている。
協議会が広報などで掲げているキャッチフレーズが「大阪南部忘れんといてや」。府北部では、第二京阪道や新名神高速などで利便性が高まった一方、南部はいまだに高速道路の空白地帯が残っており、防災面でも課題を抱えていると訴えている。略称は「大南高」で、鎌倉時代末期に活躍した大阪の英雄・楠木正成の愛称「大楠公(だいなんこう)」に読みを掛けているという。
こうした動きのなか、本路線は、2021年に国が策定した「新広域道路交通計画」で調査路線としてリストアップされた。これにより、具体化に向けて検討を進めていく方針が示された形だ。なお、この計画では「利用者負担による有料道路事業」として整備することが前提とされている。
それから4年が経過したが、計画段階評価に向けた具体的な動きは、いまだ国からは見られない。近畿地方整備局の2025年度予算計画でも、「大阪南部・和歌山都市圏については、京奈和自動車道の延伸や関西国際空港とのアクセスも含め、大阪府および和歌山県と連携し、幹線道路ネットワークの検討を実施します」といった、漠然とした記述にとどまっている。
大阪府も2025年2月の議会で、「事業費が膨大であり、投資の規模や採算性の観点から、今後も十分な議論が必要と認識しております」と答弁しており、実現までの道のりはまだ長いとみられる。
というのも、現在の大阪では都心部で巨大プロジェクト「淀川左岸線」が鋭意整備中だからだ。阪神高速5号湾岸線から大阪梅田付近を東西に貫き、新御堂筋を経て、近畿道・第二京阪道の門真JCTへ直結。臨海部・神戸方面~大阪都心~北河内エリア・京都方面を短絡し、交通の流れを大きく変化させる“世紀の大動脈”として期待されている。
国や大阪府にとっても、次々と新たな大型プロジェクトへ予算を振り分けて、同時進行させる余裕はない。まずは「淀川左岸線」を着実に遅れなく完成させたい、という思惑があるとみられる。
「淀川左岸線」のひとつの節目となるのが、2032年度をめどとする「新御堂筋までの開通」だ。そのタイミングに合わせて「大阪南部高速道路」の具体化を滑り込ませることができるのか。地元としても、動き出せる「準備万端」の状態へ整えていけるのかどうかが問われている。今後の動向に引き続き注視していきたい。
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