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クルマ最終更新日:2017.04.27 公開日:2017.04.27

軽自動車用エンジンで時速420km超え ホンダ「S Dream Streamliner」

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全長と全幅の比率がクルマよりも列車に近いので、新型の新幹線の先頭車両といっても通じそうなホンダ「S Dream Streamliner」。新幹線N700系の先頭車両に採用されている「エアロ・ダブルウィング」形状を思わせる、空力を最重視したデザインとなっている。

 4月15日・16日に、お台場で開催されたイベント「モータースポーツジャパン2017」で、ひときわ異彩を放っていた1台が、ホンダのスペシャルマシン「S Dream Streamliner」。同車は、「Mike Cook’s Bonneville Shootout(マイク・クック・ボンネビル・シュートアウト)」の2016年大会で、FIA公認の世界記録を達成したマシンだ。

 同大会は、地上最速を目指す者たちの聖地「ボンネビル・スピードウェイ」で行われる。同スピードウェイは、米国ユタ州の北西部にある、海水よりも塩分濃度が濃いことで有名なグレートソルト湖の西にある。そこはかつて塩湖だったのだが今は干上がっており、その跡地の「ソルトフラッツ」と呼ばれる平原になっているのである。

 ボンネビル・シュートアウトは同スピードウェイで毎年9月に開催されており、2輪及び4輪の世界最高速を競うFIA公認のモータースポーツだ。2016年大会は現地時間で9月15~20日に開催された。

 そこに、日本からはホンダが参加。同社の子会社で研究部門の本田技術研究所 四輪R&Dセンターの若手有志で結成されたチームが出場したのである。

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大会にて撮影されたS Dream Streamlinerとチームメンバー。16人が並んでおり、スケール感が伝わってくる。

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ホンダチームはいったいどんなマシンで挑んだのか?

ジェットやロケットでマッハ超えに挑む者も

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コックピット周辺。フロントウィンドウというよりは、戦闘機などのキャノピーといった方がいい形状だ。ドライバー名に「MIYAGI」の名が見て取れるが、元ホンダ・ワークスライダーの宮城光氏がドライバーを担当した。

 同大会は、自動車、量産車、ジェットやロケットを推進力にしたクルマ、ドラッグレーサーの4カテゴリーがある。さらにその下に、エンジンの形式や排気量、過給の有無、さらにはEVなどの電池の形式、ソーラー発電機能などで分類され、13のクラスが用意されている。ジェットやロケットを搭載したマシンは、マッハを超えるような記録(およそ時速1300km)にも挑戦している。

 そうした中、ホンダチームは市販車はもちろん、F1などのモータースポーツ専用車両のいずれにも似ていない、空力を最重視して専用設計されたS Dream Streamlinerで参戦した。クラスは、カテゴリーA・グループ1・クラス4(自動車・レシプロ過給エンジン・排気量500~750cc)だ。

わずか660ccのエンジンで最高速勝負にチャレンジ!

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S Dream Streamlinerに搭載された、スペシャルエンジン。「S660」に搭載されている直列3気筒DOHCシングルターボエンジン「S07A」がベースとなっている。軽自動車用なので、とても時速420km超えを達成したエンジンには見えない小型軽量さがポイント。

 最高速というとパワーが重要なので、大排気量の大型エンジンで挑みそうなイメージだが、ホンダチームは真逆の軽自動車のエンジンで挑戦した。ベースとなったのは、ホンダ「S660」に搭載されている、直列3気筒DOHCシングルターボ658ccのエンジン「S07A」だ。おそらく、空力最重視のボディに収めるにはコンパクトなエンジンであることが必要であり、そのために選んだものと予想される。

 同エンジンはノーマルで最高出力47kW/6000rpm、最大トルク104N・m/2600rpmというスペックを持つ。最高速にはとにかくパワーが必要なので、最高出力を約4倍の186.8kW/7700rpmにまでまでアップ。最高速を狙うのにトルクはあまり関係ないのだが、こちらもまた大幅にアップしており、2倍以上の234.4N・m/7000rpmとなっている。

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F1をも遙かに凌駕する時速420km超え!

F1の最高速を遙かに凌ぐ時速420km超えを達成!

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走行時の様子。いくらフラットだとはいえ、舗装路面ではないことを考えれば、車高の低さは極限といえるほど。

 S Dream Streamlinerは最高速を目的とした空力最重視のスリムなデザインと、そこに収まるコンパクトさを持ちながら大幅に強化された軽自動車用エンジンというふたつの武器でもって記録に挑戦。FIA公認世界最高速記録となる1キロ測定区間の記録として時速421.595km(≒時速261.966マイル)を達成。同時に、1マイル(≒1.6km)測定区間の記録として、時速261.875マイル(≒時速421.446km)という記録も樹立した。

 もちろん、サーキットレイアウトによるところも大きいので一概に言えないが、現在のF1の最高速が時速370~380kmほどであることを考えると、数字だけの単純比較ならF1をも上回る記録である。

 なお、計測方法は1キロ測定区間の場合は、スタート地点から5.5マイル地点の前後500m(計1km)の計測区間を、1時間以内に往復した速度の平均値としている(1マイル測定区間の計測もほぼ同様)。

 ドライバーは元ホンダワークスライダーの宮城光氏が担当した。

 なお、S-Dream Streamlinerの全長、全幅、全高、ホイールベース、車重はすべて非公表。目測で全長は15m前後、全幅は1m前後、全高も1m前後(尾翼の上端までは1.5m前後)だった。

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後方から。走行を安定させるための垂直尾翼と水平尾翼も備えられており、もはや航空機である。前から見ると列車、後ろから見ると航空機という、クルマの常識を越えたデザインの1台だ。

 S Dream Streamlinerについて、ホンダの開発チームに質問してみたので、もっと秘密を知りたい人は、第2弾『【動画あり】軽のエンジンで時速420km達成! その秘密!?に迫ってみた!!』もぜひ読んでいただきたい。

2017年4月27日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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