【JNCAP2018】前期、予防安全・全10車種のランキングを公開
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が毎年発表している「自動車アセスメント(JNCAP)」。 2018(平成30)年の前期の評価結果が11月29日に発表された。 予防安全と衝突安全の2種類の評価試験のうち、ここでは予防安全の10車種全11グレードを、総合得点順にランキングにて紹介する。
JNCAP2019年度後期が2020年5月27日に発表されました。2019年度後期の予防安全性能評価についての記事はこちらからご覧ください。
国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が毎年発表している、「自動車アセスメント(JNCAP)」。2018(平成30)年の前期の評価結果が11月29日に発表された。
評価試験は大別して、「予防安全性能評価」(予防安全)と「衝突安全性能評価」(衝突安全)の2種類がある。予防安全は、被害軽減(自動)ブレーキのように、事故を未然に防ぐための技術の性能を評価するためのもの。一方の衝突安全は、実際に衝突事故が起きた際の、乗員や衝突された歩行者の安全性を評価するものだ(2018年前期の衝突安全については、別記事『全4車種で最も成績がよかったのはどれだ!? 実際にクラッシュさせる過酷な試験動画も必見!』に詳細)。ここでは、2018年度前期の予防安全の10車種全11グレードを、総合得点順にランキングにて紹介する。車種は、以下の通りだ。
【スズキ】
・ソリオ/ソリオ バンディット
※デリカD:2/デリカD:2 カスタム(三菱)も含む
・クロスビー
【スバル】
・フォレスター
【トヨタ】
・カローラ スポーツ
・カムリ
※アルティス(ダイハツ)を含む
【ホンダ】
・N-VAN +STYLE FUN Honda SENSING
・N-VAN L Honda SENSING
・オデッセイ
【マツダ】
・アテンザ
【三菱】
・ekスペース/ekスペースカスタム
※デイズ ルークス/デイズ ルークス ハイウェイスター(日産)を含む
・エクリプス クロス
2018年度からは評価項目として新たに3種類を追加
ランキングの掲載をする前に、2018年度の予防安全について説明する。今年度は、評価項目が新たに3種類が加わり、総合得点が2017年度の79点満点から126点満点になった。新評価項目は、「夜間における対歩行者の自動ブレーキ」、「高機能前照灯」、「踏み間違い加速抑制」である。
夜間における対歩行者の自動ブレーキは、従来の日中における対歩行者の自動ブレーキと併せて行われる。日中と同様に、速度を変えるなど条件を変えて何度も走行し、道路を横断する歩行者を模したダミーに衝突せずに停止できるかが確かめられる。夜間の条件は、今年度は”街灯がある”条件下で、明るさ15±2ルクスの環境で行われた(次年度以降、街灯なしのより暗い環境下でのテストも追加される計画)。対歩行者の被害軽減ブレーキの得点は、日中が25点満点、夜間が40点満点の合計65点満点だ。
高機能前照灯は、ヘッドランプの照射機能についての評価が行われる。前走車や対向車に合わせてハイビームの光量や照射方向などを自動的に調節して相手のドライバーがまぶしく感じなくて済む「自動防眩型」の場合、時速41km以上の全速度域で作動すれば5点満点。ハイ/ローの「自動切替型」の場合は、時速41km以上の全速度域で作動すれば最高1.4点となる。
踏み間違い加速抑制は、前方または後方に障害物がある状態で、その障害物の方向に誤って発進させようとしてしまった場合、障害物までの距離が1m以上ある時点で機能が作動して停車すれば最高1点ずつで合計2点満点。1mを切ってから作動して停車すると、0.9mからだと0.9点、0.8mからだと0.8点となる。障害物に当たってしまっても速度抑制があれば、1mからの作動で0.6点、0.9mからだと0.5点、0.8mからだと0.4点を獲得できる。
これら3項目を加えた全6項目7種類の評価試験が行われ、合計で126点満点。前年度から引き続きとなる3項目の点数は変わっていない。配点は以下の通り。
・対歩行者・自動ブレーキ:65点満点(日中25点満点、夜間40点満点)
・対車両・自動ブレーキ:32点満点
・車線逸脱抑制:16点満点
・後方視界情報:6点満点
・高機能前照灯:5点満点
・踏み間違い加速抑制:2点満点
予防安全性能評価試験の様子。
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予防安全ランキングを発表! まずはベスト5から
予防安全性能評価試験2018年前期ベスト5
それでは、1位から順に発表する。まずはベスト5からだ。126点満点を感覚的にわかりやすくするため、カッコ内に100点満点換算した得点も合わせて掲載した。
また、126点満点中で12点を超えると「ASV+」、46点を超えると「ASV++(ダブルプラス)」を、そして今年度からは86点を超えると「ASV+++(トリプルプラス)」の評価が与えられる。ASVとは「先進安全自動車」を意味する「Advanced Safety Vehicle」の略だ。+が多いほど、ASVとして高性能な証となる。
1位:カローラ スポーツ(トヨタ)
合計122.4点(97.14点) ASV+++
対歩行者:65.0点(日中25.0点/夜間40.0点) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:16.0点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:1.4点 踏み間違い加速抑制:2.0点
試験に用いられたグレード:HYBRID G “X”
2018年6月にモデルチェンジして、12代目の先陣を切って登場したトヨタのコンパクトハッチバック「カローラ スポーツ」。MEGA WEBにて撮影した。
同社の安全運転支援システム「Toyota Safety Sense(第2世代版)」を搭載。CMOSイメージセンサーのチューニングを行い、夜間にも対応した単眼カメラを搭載しており、夜間における対歩行者の自動ブレーキで40点満点を獲得した。高機能前照灯は、トヨタのハイ/ローの自動切替機能「オートマチックハイビーム」により1.4点を獲得。踏み間違い加速抑制は「パーキングサポートブレーキ(静止物)」により、前後共に1.0点ずつで2点満点となっている。
2位:フォレスター(スバル)
合計122.3点(97.06点) ASV+++
対歩行者:61.3点(日中23.5点/夜間37.8点) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:16.0点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:5.0点 踏み間違い加速抑制:2.0点
試験に用いられたグレード:Touring
2018年6月にモデルチェンジして5代目が登場したスバルのSUV「フォレスター」。オートモビルカウンシル2018のスバルブースにて撮影。
ステレオカメラを用いるスバルの安全運転支援システム「EyeSight」は初代の頃から夜間の歩行者に対応しており、現在の最新バージョンではより検知精度をアップさせている。高機能前照灯では、ハイ/ロー自動切替機能「LEDハイ&ロービームランプ」、ステレオカメラで対向車や前走車を認識すると照射範囲を調整する「アダプティブドライビングビーム」、ステアリング操作に連動してカーブの先を照射する「ステアリング連動ヘッドランプ」が評価されて5点満点。踏み間違い加速抑制は、前進の「AT誤発進抑制制御」および後進の「AT誤後進抑制制御」により2点満点となった。
3位:N-VAN +STYLE FUN Honda SENSING(ホンダ)/軽
合計120.6点(95.7点) ASV+++
対歩行者:64.0点(日中24.0点/夜間40.0点) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:16.0点
後方視界情報:6.0 高機能前照灯:1.4 踏み間違い加速抑制:1.2
試験に用いられたグレード:+STYLE FUN Honda SENSING
2018年7月に登場した初代「N-VAN +STYLE FUN Honda SENSING」。東京モーターフェス2018にて撮影。
ホンダのハイ/ローの自動切替型「オートハイビーム」機能を搭載するグレードと搭載しないグレードの2車種が個別に評価試験を受け、同機能を搭載する「+STYLE FUN Honda SENSING」が120.6点を獲得して3位となった。現時点で、ホンダの安全運転支援システム「Honda SENSING」の最新バージョンを搭載した唯一の車種で、自動ブレーキが夜間の歩行者にも対応している。単眼カメラからの映像をとらえるCMOSイメージセンサーのチューニングを行うと同時に、併用するミリ波レーダーの発信方式も工夫してレーダーを吸収しやすい人(衣服)からの反射波をとらえやすくし、両方の組み合わせで夜間の歩行者の検知精度を高めたという。
4位:N-VAN L Honda SENSING(ホンダ)/軽
合計119.2点(94.6点) ASV+++
対歩行者:64.0点(日中24.0点/夜間40.0点) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:16.0点
後方視界情報:6.0 高機能前照灯:- 踏み間違い加速抑制:1.2点
試験に使用されたグレード:L Honda SENSING
2種類のグレードで評価試験を受けた「N-VAN」。JNCAP2018前期発表会のデモンストレーション会場にて撮影。
ハイ/ローの自動切替型「オートハイビーム」を搭載していないグレードの「L Honda SENSING」。その分点数が低くなり、119.2点で4位となった。そのほかの点数は「+STYLE FUN Honda SENSING」と同じだ。「N-VAN」の踏み間違い加速抑制は、前後共に速度抑制はしたが停車できなかったことから、0.6点ずつの計1.2点となった。
5位:アテンザ(マツダ)
合計113.3点(89.9点)ASV+++
対歩行者52.7点:(日中24.4点/夜間28.3点) 対車両:32.0 車線逸脱抑制:16.0点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:5.0点 踏み間違い加速抑制:2.0
試験に使用されたグレード:セダン XD-L Package
マツダのフラッグシップセダン「アテンザ」。JNCAP2018前期発表会のデモンストレーション会場にて撮影。
現行の3代目は、2018年6月にビッグマイナーチェンジが実施され、夜間の歩行者の検知精度を高めた自動ブレーキ「アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート 夜間歩行者検知機能付」が搭載された。また、車速に合わせた3パターンのハイビーム配光制御などを行う「アダプティブ・LED・ヘッドライト」も新たに装備。ハイ/ローの自動切替機能「ハイ・ビーム・コントロールシステム」と合わせ、高機能前照灯で5点満点を獲得した。踏み間違い加速抑制「AT誤発進抑制制御」は前後共に機能して2点満点を獲得。
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続いて6~11位!
6位:ソリオ/ソリオ バンディット(スズキ)
合計111.1点(88.2点) ASV+++
対歩行者:62.1点(日中22.5点/夜間39.6点) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:8.0点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:1.4点 踏み間違い加速抑制:1.6点
試験に使用されたグレード:HYBRID MX
スズキのコンパクトトールワゴン「ソリオ」。「ソリオ バンディット」は上級モデル。同社はOEM車として三菱に供給されており、「デリカD:2」および上級モデル「デリカD:2 カスタム」も同じ性能を有する。東京モーターフェス2018にて撮影。
「ソリオ」と「ソリオ バンディット」は、2018年7月に予防安全技術「スズキ セーフティ サポート」を充実させるマイナーチェンジが行われた。そのアップデートのひとつが、夜間の歩行者検知が可能な「デュアルカメラブレーキサポート」を装備したことで、現時点でスズキ車の中で唯一の搭載車となっている。車線逸脱抑制は警報のみでステアリングアシスト機能がないために8.0点。高機能前照灯はハイ/ローの自動切替型「ハイビームアシスト」を搭載して1.4点。踏み間違い加速抑制は、前方が抑制したが衝突して0.6点で、後方は停止して1.0点の合計1.6点だ。ちなみに後方のセンサーには超音波が用いられている。
7位:ekスペース/ekスペースカスタム(三菱)/軽※
合計93.2点(74.0点) ASV+++
対歩行者:44.2点(日中24.9点/夜間19.3点) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:8.0点
後方視界情報:6.0 高機能前照灯:1.4 踏み間違い加速抑制:1.6
試験に使用された車種・グレード:ekスペースカスタム G Safety Package
※日産「デイズ ルークス」および「デイズ ルークス ハイウェイスター」も含む
「ekスペースカスタム」。JNCAP2018前期発表会のデモンストレーション会場にて撮影。
「ekスペース」とその上級モデル「ekスペースカスタム」は日産と三菱が共同開発した軽自動車で、日産では「デイズ ルークス」およびその上級モデルの「デイズ ルークス ハイウェイスター」として販売されている。今回評価試験を受けたのは「ekスペースカスタム」だ。2018年5月のマイナーチェンジで、予防安全機能(日産は「インテリジェント エマージェンシーブレーキ」、三菱は「e-Assist(イーアシスト)」という名称)の性能向上が図られ、レーザーレーダー方式から単眼カメラ方式に変更。夜間の歩行者検知機能も備えた。ハイ/ローの自動切替機能「オートマチックハイビーム」により高機能前照灯で1.4点。「踏み間違い衝突防止アシスト」は前方が停車して1点、後方は加速を抑制したが衝突したので0.6点の合計で、踏み間違い加速抑制は1.6点を獲得した。
8位:カムリ(トヨタ)
合計75.6点(60.0点) ASV++
対歩行者:18.2点(日中18.2点/夜間-) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:16点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:1.4点 踏み間違い加速抑制:2.0点
試験に使用されたグレード:G
トヨタのミドルセダン「カムリ」。ダイハツにOEM供給されており、「アルティス」も同性能を有する。MEGA WEBにて撮影。
2017年7月にモデルチェンジし、10代目が登場したトヨタ「カムリ」。安全運転支援システムとして第1世代の「Toyota Safety Sense P」を搭載するため、夜間の歩行者検知機能を有していない。高機能前照灯は「オートマチックハイビーム」を搭載しており1.4点。2018年8月のマイナーチェンジで「インテリジェントクリアランスソナー」を搭載し、踏み間違い加速抑制は2点満点を獲得した。
9位:クロスビー(スズキ)
合計63.9点(50.7点) ASV++
対歩行者14.9点:(日中14.9点/夜間-) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:8.0点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:1.4点 踏み間違い加速抑制:1.6点
試験に使用されたグレード:HYBRID MX
ワゴンとSUVを融合させた小型クロスオーバーワゴンとして、2017年12月に発売されたスズキの初代「クロスビー」。モータースポーツジャパン2018にて撮影
予防安全システム「スズキ セーフティ サポート」を搭載する。単眼カメラとレーザーレーダーの併用方式による自動ブレーキ「デュアルセンサーブレーキサポート」は、夜間の歩行者には対応していない。また車線逸脱抑制は警報のみで8.0点。高機能前照灯は、ハイ/ロー自動切替型「ハイビームアシスト」搭載で1.4点。踏み間違い加速抑制は、前方が加速は抑制したが停車できずに0.6点、超音波センサーを備える後方は停車して1.0点の合計1.6点となっている。
10位:エクリプス クロス(三菱)
合計63.5点(50.4点) ASV++
対歩行者14.9点:(日中14.9点/夜間-) 対車両:32.0点 車線逸脱抑制:8.0点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:1.4点 踏み間違い加速抑制:1.2点
試験に使用されたグレード:G
小型クーペSUV「エクリプス クロス」は、2018年3月にデビューした三菱の最新モデル。モータースポーツジャパン2018にて撮影。
「エクリプス クロス」は三菱の安全運転支援システム「e-Assist」を搭載しており、センサーはレーザーレーダー、単眼カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサーなどで構成される。夜間の歩行者には対応はしていない。車線逸脱抑制は警報のみの「車線逸脱警報システム」で8.0点。ハイ/ロー自動切替型「オートマチックハイビーム」を搭載し、高機能前照灯は1.4点。踏み間違い加速抑制は前後共に加速を抑制したが停車できず、0.6点ずつの合計1.2点。
11位:オデッセイ(ホンダ)
合計62.7点(49.8点) ASV++
対歩行者8.5点:(日中8.5点/夜間-) 対車両:31.6点 車線逸脱抑制:16.0点
後方視界情報:6.0点 高機能前照灯:- 踏み間違い加速抑制:0.6点
試験に使用されたグレード:HYBRID ABSOLUTE・Honda SENSING EXパッケージ
5代目となる現行のホンダのミニバン「オデッセイ」は、2013年10月に登場した。ホンダウェルカムプラザ青山前にて撮影。
「オデッセイ」は2015年1月のマイナーチェンジで同社の安全運転支援システム「Honda SENSING」が一部グレードに装備され、2016年2月に全グレード装備となった。その後、2017年11月にもマイナーチェンジが行われたが、「Honda SENSING」のバージョンは「N-VAN」と比べて1~2世代前のものと推測され、夜間の歩行者には対応していない。高機能前照灯も装備しておらず、踏み間違い加速抑制は前方のみを装備。加速抑制を行ったので0.6点だ。
衝突安全4車種については、別記事『全4車種で最も成績がよかったのはどれだ!? 実際にクラッシュさせる過酷な試験動画も必見!』をご覧いただきたい。
2018年12月4日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)