2020年08月19日 16:30 掲載
旧車
吉田 匠の
『スポーツ&クラシックカー研究所』
Vol.04
フェラーリを超えるスーパースポーツを目指した「ランボルギーニ」前編。
ランボルギーニがフェラーリに先駆けて1966年に世に送り出したミドエンジンスーパースポーツ、ミウラ。
ミウラ誕生の衝撃
さらに1966年になると、ランボルギーニは衝撃的なモデルを世に送り出す。それはスペインの猛牛の名を車名としたP400ミウラで、4リッターV12気筒エンジンを2座コクピットの直後に横置きした、ミドエンジンのスーパースポーツだった。当時フェラーリは、レースカーこそミドエンジンが主流だったが、公道を走るロードカーはすべてフロントエンジンだったから、この分野でもランボルギーニがフェラーリの一歩先を走ったのである。もちろん、350psとされたパワーも、280km/hとされた最高速も、当時のフェラーリを凌ぐものだった。ミウラはやがて、より高性能なミウラS、ミウラSVに発展していく。
しかもミウラは、スタイリングも魅力的だった。そのデザインは一般にベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニの作品とされているが、ベルトーネのチーフデザイナーがジウジアーロからガンディーニに代わった直後に発表されたクルマだったため、ジウジアーロが基本線を引いたものをベースにしてガンディーニが仕上げた、というのが時期的に考えて妥当なプロセスではないか、という推測も成り立つ。
古典的な味わいとスーパースポーツらしい獰猛さを併せ持つ、ミウラのプロフィール。
斜めリアビューも魅力的。
立体的な造形でデザインされたダッシュボード。
ミウラのボディは2座コクピット部分を中心に残して、前後のカウルがガバッと開く。
コクピットの直後に横置きされた4リッターV12 DOHCエンジン。
いずれにせよミウラが、非常に美しく魅力的なスタイリングのミドエンジンスポーツだったことに間違いはないが、同時にそれは走らせてもすこぶる刺激的なクルマだったのは、過去に複数回ドライビングした経験を持つ筆者が鮮烈に記憶している。背中のすぐ後ろでV12エンジンが官能的なサウンドを奏でながらパワーを絞り出して地面にへばりつくように低いボディを強力に加速させ、カーブでは路面を舐めるような感覚でコーナリングしていく。まさに男のためのスーパースポーツなのである。
次いで1968年、ランボルギーニは2つのニューモデルを発表する。400GTの後継車たる2+2座のイスレロと、そのシャシーをベースにしたまったく新しい4人乗りのGT、エスパーダである。400GTと同じくトゥーリングのスタイリングになるイスレロは、350/400GT系とは異なる60年代後半のクルマらしいやや角張ったデザインを採用していたが、ランボルギーニらしい個性には乏しかったといえるかもしれない。
400GTの後継モデルたるイスレロ。400GTよりぐっとシャープで直線的なデザインに変わった。
400GTをシャープにした印象の斜めリアビュー。カロッツェリア トゥーリングが関わった最後のランボルギーニになった。
イスレロのコクピット。変速機は当然3ペダルの5段MT。助手席側にはクーラーの吹き出し口が見える。
一方、ベルトーネにデザイン依頼されたエスパーダは、シャープなエッジと後端までほぼ水平のまま伸びるルーフラインなど、いかにも奇才ガンディーニらしい個性あふれるスタイリングを採用して登場した。エンジンは他と同じ4リッターV12で325㎰を発生、4人の大人を無理なくキャビンに収めて必要なら250km/hで走れるGTという、それまでになかったジャンルの高性能車を、ランボルギーニはまた生み出したのである。
奇才ガンディーニが手掛けた超個性的なエスパーダのスタイリング。シャープな面構成と、4人乗りのキャビンを得るためにリアまでほぼ水平に伸びるルーフラインが最大の特徴。
広いグラスエリアのもたらす明るい室内もこのデザインのポイントのひとつ。
二人の大人が快適に過ごすためにデザインされたリアシート空間。
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