60年強の歴史!! 現行モデルまで15代を数えるトヨタ「クラウン」が集結【クラウンDAY at Motomachi】前編
トヨタのフラッグシップモデル「クラウン」。1955年1月7日に誕生し、以来15代にわたって国産高級車の代名詞的存在として、日本のモータリゼーションをけん引してきた。2月23日・24日に神奈川トヨタと横浜・元町ショッピングストリートのコラボレーションにより、「クラウンDAY at Motomachi」が開催され、数多くのモデルが集結。前編は1桁代の「クラウン」を紹介する。
今回集結した「クラウン」は初代、初代後期、2代目、3代目(ステーションワゴン)、6代目、8代目、13代目、14代目、14代目ベースのオープンカーの旧モデル9台と、神奈川トヨタ80周年記念オリジナル特別仕様車「Sports Style Limited」を含む現行15代目の6台を合計した15台。残念ながら15代のすべてが集結することは叶わなかったが、貴重な車種が横浜中華街に近い元町ショッピングストリートの歩行者天国に並んだ。前編では、初代、初代後期、2代目、3代目、6代目、8代目の1桁代の6台を紹介する。なお、間の4代目、5代目、7代目、そして3代目のセダンタイプに関しても、これまでに撮影した画像などを用いて簡易的に紹介した。
「トヨペット クラウン」は初代RS型から始まった!(1955年1月発売)
太平洋戦争の終結後、国内自動車メーカーの技術力は欧米諸国に大きく後れを取っていた。日産やいすゞ、日野などは、その欧米メーカーと提携して技術力を身につける道を選択。逆にトヨタは独自の技術開発にこだわった。そして1955年に初代RS型「トヨペット クラウン」が誕生。当時としては強力なエンジン、閉型断面を採用したねじれに強い高剛性シャシーなどを特徴としている。近代的なプレス工場においてボディの品質を確保しつつ大量生産されたことも注目すべき点だ。
初代RS型の目立つ特徴は、後部ドアを後ろ開きとし、観音開きとしたことがひとつ。後に”観音開きのクラウン”の愛称がつけられた。当時はカタログに最高速度も記載されており、時速100km。シートは前列後列共に3人掛けを採用していたことから、乗車定員は6名だった。
初代「トヨペット クラウン デラックス」の後期モデルRS21型(1958年10月発売)
初代RS型はその性能が評価され、ハイヤー・タクシー業界から営業車としての採用がもちかけられた。トヨタはそれを受けて1955年12月にRSD型「トヨペット クラウン デラックス」を発売する。そのタイミングで、従来のRS型は「トヨペット クラウン スタンダード」と名称を改められた。「クラウン」の生産台数は発売初年度こそ平均月産台数は229台で計画を下回ったが、翌1956年になると急増し、平均月産台数は771台となる。
RS型もRSD型も共に改良が続けられた。1956年10月にエンジンの出力が48馬力から55馬力に増強され、さらに1958年4月には58馬力までアップされた。1958年10月に、現在でいうビッグマイナーチェンジが行われ、RS型はRS20型に、RSD型はRS21型となった。画像はそのRS21型で、初代「トヨペット クラウン デラックス」の後期型と呼ばれている。
オートマ「トヨグライド」を搭載した2代目の6気筒モデルMS41型「トヨペット クラウン デラックス」(1965年11月発売)
「クラウン」は1962年10月にフルモデルチェンジを行い、2代目が登場。エクステリアの特徴は、米国発のデザインで、当時世界的な流行を見せていたボンネット/トランク面が直線的な”フラットデッキスタイル”が採用されたこと。同時に米国で流行していた4灯式ヘッドランプユニットも採り入れられた。これらにより、外見の近代化が一気に進んだのである。またフレームに関しても初代のラダー形から、より剛性の高いX形に変更された。2代目には初期のオートマであるノークラッチ・システムの「トヨグライド」がオプションで設定されており、同システムは1963年9月にはフル・オートマとなった。
当初は初代と同じ直列4気筒エンジンを搭載した「スタンダード」のRS40型、「デラックス」のRS41型、「カスタム」のRS46G型がラインナップされたが、1965年11月に新開発の6気筒SOHCエンジン「M型」の搭載モデルが追加された。上写真のMS41型はその6気筒エンジン搭載型の「デラックス」で群馬トヨタの所蔵。2016年に全国のトヨタのディーラーが参加して1~7代目までの「クラウン」をレストアした「クラウン ディスカバー スピリット プロジェクト」において再生された1台だ。ボディのカーナンバーやラリーカー風のドライバー名は、同プロジェクトの集大成として行われた、レストアされた各車が「クラウン」生誕の地であるトヨタ元町工場(愛知県豊田市)に全国から集結した「クラウン ジャパン フェスタ」に参加した際のもの。
3代目からは、今回唯一のステーションワゴンタイプMS56V型「クラウン バン カスタム」(1967年9月発売)
現代ではセダンのイメージしかない「クラウン」だが、かつてはバンタイプ(初代~9代目)、2ドアハードトップ(3代目~6代目)さらにはピックアップトラックタイプ(初代~3代目)も存在した。バンタイプの初代と2代目は「トヨペット マスターライン クラウン バン」という車名だったが、3代目は”マスターライン(※1)”に加え、マスコットネームの”トヨペット”が外され、「クラウン バン」の車名で発売された(※2)。
商用車である「クラウン バン」を乗用車としたのがステーションワゴンタイプで、2代目で初めて設定された。車名はバンタイプの系列であることを表す「クラウン バン カスタム」と表記する場合もあれば、逆に乗用車であることをアピールするためにバンを外して、「クラウン カスタム」とする場合もあった。「クラウン バン」からの変更点は、バックドアを横開きにしたことと、折りたたみ式サードシートを追加して8名乗車とした点だ。
【3代目セダン】
【4代目】
【5代目】
80年代以降の「クラウン」のデザインの礎となった6代目からはE-MS110型「スーパーサルーン」 (1979年9月発売)
続いては、少し先に進んで1979年9月から発売された6代目。その上から2番目の上位グレードである「スーパーサルーン」が展示された。エクステリアデザインは、今回は出展されなかった5代目を踏襲しており、直線的にまとめられている。ドアガラスを閉めた状態でセンターピラーが隠れて見えるボディスタイルの”4ドアピラードハードトップ”が6代目で好評を博したことから、1980年代以降の「クラウン」の標準スタイルとして踏襲されることになる(※3)。
6代目のエンジンは、5代目の上位グレードに搭載された排気量2563ccの直列6気筒SOHCエンジン「4M」の排気量を2759ccにアップした「5M-EU」。また6代目のエンジンに関連するトピックとしては、1980年10月にはトヨタ車初となるターボ車「2000ターボ」が追加設定されたことも挙げられる。
【7代目】
電子化が進み出した8代目からは、上位グレードE-GS130型「スーパー サルーン エクストラ」(1987年9月発売)
前編最後は、1987年9月に登場した8代目。上写真は、その上位グレードであるE-GS130型「スーパー サルーン エクストラ」だ。8代目の特徴は電子化が進み、トラクションコントロールが搭載されたほか、最上位グレード「ロイヤルサルーン」および「ロイヤルサルーンG」には電子制御エアサスペンションも装備された。また、インターフェース系でも電子化が進められた。スピードメーターとタコメーターのフル表示とスピード表示のみを切り替えられる「デュアルビジョンメーター」や、インパネ中央部に設置されたフルカラーCRTディスプレイを活用した各種情報のマルチ表示を行える「エレクトロマルチビジョン」などが、上位グレードに世界で初めて標準もしくはオプション設定されたのである。
1989年8月には、V型8気筒エンジン「1UZ-FE」(DOHC・排気量3968cc)を搭載した最上位グレードが追加設定された。同エンジンは、当時は欧州メーカーの独壇場だった高級ブランドマーケットへの参入を目的としてトヨタが設立したレクサスブランドの最上位モデル「LS400」の日本仕様「セルシオ」(国内では同年10月発売)に搭載されたエンジンでもあった。「クラウン」の名を冠した車両で8気筒エンジンを搭載するのは、2代目をベースに大型化した法人・ハイヤー向け車両「クラウン エイト」以来だった。
初代の誕生は和暦で見ると昭和30年で、8代目は平成3年。前編は”ほぼ昭和”といっていい「クラウン」たちを見ていただいたことになる。初代は少々異なるが、2代目以降は直線的なデザインを採用しており、フロント部分のイメージも踏襲されていることがわかっていただけたのではないだろうか(4代目もフロントのイメージなどが少々実験的なデザイン)。
後編では大きく時代を飛んで、平成20(2008)年登場の13代目からスタートし、平成24(2012)年登場の14代目とそのオープンカー、そして平成30年(2018)年に登場した現行15代目とその神奈川トヨタ80周年記念オリジナル特別仕様車「スポーツ スタイル リミテッド」を紹介する。昭和の「クラウン」たちと比較すると、平成最後の10年に登場した3代はより曲面を多用したデザインであることが特徴だ。そうした外見の違いも比較してみてほしい(後編はこちら)。